白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2008/03/15(土)   CATEGORY: 未分類
チベット争乱「統合される側」の悲鳴
ラサのチョカン(釈迦堂)で再びチベット人の血が流れた。

 チョカンはラサの中心部にあり、7世紀にチベットにはじめて仏教を導入したソンツェンガムポ王とそのネパールからきた妃がたてた寺であり、ラサの街はこの釈迦堂を中心に発展し、この寺をめぐる三つの巡礼路が古ラサでもっとも人通りの多い道であった。

 つまり、釈迦堂は文字通りラサの心臓のような寺である。

 今回中国とチベットがぶつかったのはこの釈迦堂前の広場と真ん中の巡礼路(パルコル)である。
 そして、三月十日はチベット蜂起記念日。そろそろ来るかな~と思っていたら、やっぱりきた。
 1959年3月10日、ダライラマ14世は中国軍軍営から招待を受けていた。チベット人の間には、このままダライラマは北京につれていかれて、チベットからいなくなってしまうのではないかという不安がひろがった。

 たしかに、ダライラマはチベット人にとってチベットの仏教と政治の最高権威者。チベットのナショナリズムの結節点になるため、中国政府にとっては彼をラサにおいておくより、北京において"チベット民族"の代表者にしておいた方が安心できるであろう。

 1959年3月10日、チベットの民衆は、ダライラマの滞在するノルブリンカ離宮の周りを人垣をつくって取り囲み、中国軍営からくる迎えの車をシャットアウトした。それから数日後、ダライラマ14世は人垣にまぎれてひそかにこの離宮からぬけだし、インドに亡命したのである。

 この三月十日はチベット人がダライラマを守るために自発的に蜂起した日として記憶され、インドの亡命社会ではチベット蜂起記念日(Tibetan Uprising Day)として、祝日となっている。要はチベット暦のお正月から三月十日前後にかけては、チベット人と中国人が一番、一触即発になる時期なのだ。

 1989年、前パンチェンラマがなくなった後の三月にも、僧侶のデモがあり、多くの僧が銃殺されている。

 ダライラマ猊下はチベット人が傷つくことを何よりも悲しまれるため、北京オリンピックが近づくここ一年はチベット人の自重を訴えていた。もしチベットで何かあった場合、メンツを何よりも大事にする中国政府が、チベットの僧俗の民になにするかは火を見るよりも明らかだからだ。

 しかし今回再び流血の惨事が起きてしまった。

 チベット人は仏教徒なので、とらわれた思考こそが苦しみのはじまり、という非常にソフィスティケートされた思考を有しているため、争いを好まない。

 青蔵鉄道が開通して、たくさんの観光客と漢人ビジネスマンがチベットにおしよせてこようが、
 北京オリンピックのマスコットにチベットカモシカがはいってようが、
 北京オリンピックの聖火ランナーがわざわざチョモランマの頂をめぐって北京に向かおうが、
 中国当局がダライラマ猊下を犯罪者よばわりしようが(あ、これは六十年前からか)、
 自重してきたのである。

 それなのに中国は丸腰のデモに発砲するのである。
 非暴力というのは、対抗する相手が恥を知るまともな人間の場合は、効力を発揮するが、相手が恥知らずだと、その抵抗運動は停滞する。

 ガンディー対大英帝国の場合、大英帝国は一応恥を知っていたので、裸足のガンディーは大英帝国を追い払うことに成功した。しかし、ミャンマーの軍事政権は? 中国政府は? 聞く耳をもたない方々なので、国際社会に訴えるしかないわけで。
 
 ガンディーは「塩の行進」をイギリスのジャーナリストに撮影させて、世界に伝えた。しかし、現在の中国やミャンマーでは、ネットに至るまで厳しい報道規制がしかれて、ジャーナリストはみな検閲を受けている。1989年の時にも、一人のイギリス人ジャーナリストが隠し持っていたビデオでやっと世界にその実態が知れたのである。

 その影像は、釈迦堂の二階テラスを歩く僧侶を、中国人がねらい打ちしているものであった。世界はその影像をみて中国政府に自覚を促すため、その年のノーベル平和賞はダライラマ猊下に決定したのである(同年、天安門事件もあったしね)。

 今回のデモとそれに対する弾圧は1989年以来のもの。
 先進国各位は今回もそれなりの見識を示してほしい。

 中国はこのオリンピックを通じてとにかく民族統合をアピールしようとしている。圧倒的多数をしめる漢族にとってそれは予定調和の事実なのだろう。しかし、その漢族に文化も歴史ものみこまれていく「統合される側」の悲鳴は聞こえてこないだろうか。

*追記 チベットとか、チベット問題の来歴については『チベットを知るための50章』(本の紹介はココクリック)を読んでね! 長田幸康さんの一連の著作もグッドよ!

チベット支援のNPOを運営しているうらるんたさんのページでは現在進行中のナマナマシい状況がわかります(→ここクリック)。

[ TB*0 | CO*13 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する
● チベット情勢
lunta | URL | 2008/03/15(土) 12:22 [EDIT]
事後承諾になってしまいましたが、先生のこちらの記事、自分の記事にリンクさせていただきました。ご了承いただけますでしょうか。

チベット人に多くの被害者が出ないことを祈るばかりです。
● もちろんOKです
イシハマ | URL | 2008/03/15(土) 13:08 [EDIT]
清朝の乾隆帝をみならって、チベット仏教を振興するならまだしも、僧院が制圧され、僧侶が拘束されている、とは、1959年以後の中国がチベットにやっていることは、とにかく歴史上類をみないひどさ。
● 中国のエゴ
モモ@大東 | URL | 2008/03/15(土) 13:11 [EDIT]
年々ひどくなる傾向にあるように思います。
きっと一人一人の中国人にはいい人もいるんでしょうけど、
共和国として固まりになると、エゴの固まりになる。
チベットをそっとしておいてほしい。心からそう願います。
● 中国からは……
Hiromi | URL | 2008/03/15(土) 14:13 [EDIT]
はじめまして。チベット仏教についてのわかりやすいネット資源として、いつも拝見させていただいております。

他のチベット系のブログやmixiのチベットコミュはまだ見られるのですが、中国にいるせいか、うらるんたさんの記事が、ブログごと遮断されていてみることができません。

ラサにいる知り合いとも連絡が取れなくなりました。
とにかく、私たちにできることは、知るだけだと思うので、掲示板に書き込めたり、ブログなどの手段を持っている人は、日本のメディアが報道しないこの現在進行形の事実を、ひとりの人間として書き記していって欲しいと思います。
● 暴動
David | URL | 2008/03/15(土) 16:24 [EDIT]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000035-mai-cn

死者は80人以上。
中国は、情報を隠蔽している。

チベットは中国ではないのに、
武力で鎮圧するのはおかしい。

歴史的に、チベットは中国の一部ではない。

暴力で押さえるのが、中国流なのかな。

とにかく、情報開示、そして、チベットの独立を。

貴重な資料が失われることが、
多くの損失をもたらす。

チベットにしかない、貴重な文化遺産を、
わけのわからない連中が、破壊しないうちに。
● なんのための国際社会か
非鉄血宰相 | URL | 2008/03/15(土) 17:22 [EDIT]
あまりにも我々が無力なのが慙愧に絶えません。腹をすえて、今こそあらゆる手段の禁を解くべきですね。北京五輪不参加はもちろん、全文化学術交流の停止、草の根チャイナフリー運動(中国産のものは使わない 食べない)、中国進出製造業企業企業糾弾、親中派議員へのデモ、東シナ海への艦隊派遣、米軍出動要請。
● 尊敬もなく、慈悲もなく
mukke | URL | 2008/03/15(土) 19:24 [EDIT]
昔の中国にはチベット文化に対する敬意があった訳ですよね? それに比べ今は……社会主義で無理矢理統一を保ってるからなんでしょうかね?

とにかく、痛ましいです。一刻も早く、彼らがこの軛から脱する事を願ってやみません。

イシハマ | URL | 2008/03/16(日) 09:16 [EDIT]
>一人一人はいい人
そうですね、中国人とひとくくりにすると見えなくなりますね。中国政府の方針ですね、問題なのは。

>HIromiさん
中国ではNHKやCNNの放送を普段は見られるそうですが、チベットに関するニュースになると、放送が「消えた」そうです。それで、当局がとった暴動影像だけを流し、情報操作。

>Davidさん
おっしゃる通り、死者は公表されている人数よりは多いでしょうね。拘束された人たちの状況も気になります。

>東シナ海への艦隊派遣、米軍出動要請。
最後はギャグだよね。

>mukkeさん
なにしろチベットには人口がないので、非暴力運動が効果的にできない。中国自体が自滅モードに入る時を待つのが一番いいと思います。
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2008/03/16(日) 21:07 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

原田義昭 | URL | 2008/03/17(月) 11:07 [EDIT]
「チベット情勢を憂う」をアップ致しました。ご一読賜れば幸いに存じます。

イシハマ | URL | 2008/03/17(月) 19:42 [EDIT]
>Mさん
情報ありがとうございました。ああいうお仕事は平和産業だから、体は無事でも、お仕事はこれからタイヘンになるでしょうね。

>原田先生
ぶろぐ拝見させていただきました。「チベット問題を考える議員連盟」も、連盟のトップをつとめる牧野聖修先生が小泉旋風で落選されて以後、なかなか活動がふるわないようですね。リンカーンが奴隷を解放しようとした時、地主たちは「理想ばかりいっていたら食べてゆけん」といったそうですが、もし先進国がチベット問題をみてみぬふりをするのなら、あの時の地主と同じことをやるのだと、せめて自覚をしてもらいたいなと思います。
● チベットの国旗
もよよ | URL | 2008/03/18(火) 07:49 [EDIT]
http://www006.upp.so-net.ne.jp/yfukuda/Tibet/Tibetanfrag.html
↑ここで紹介されているチベットの国旗ですが、黄色い枠がありませんが、黄色い枠の部分も国旗に含まれるのではないですか?

http://www.tibethouse.jp/about/national_flag.html
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2689349
● 仰せの通りで
イシハマ | URL | 2008/03/18(火) 12:46 [EDIT]
ずいぶん昔にアップしたものなので、どこで画像をとったのかも忘れてます。すぐに新しい写真をといきたいところなのですが、パソコンが壊れて、ホームページソフトが死んだので、ちょってお待ちを

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © 白雪姫と七人の小坊主達. all rights reserved. ページの先頭へ