白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2008/03/30(日)   CATEGORY: 未分類
生徒とテーマに恵まれて
卒業式の後日談だけど、ゼミのTちゃんからあとでメールがきて、

やっと肝臓の調子が落ち着いたので改めて。
二年間本当にお世話になりました。ありがとう。
色紙にも書いたけど、I先生から学んだことは「寛容」の精神です。
ウチのゼミ生をみてください。ホント先生かダライ・ラマ並の赦しの心を持ってないとやってけませんよ。
それがみんなにも伝わってるんじゃないかな。
一人ひとり価値観もキャラも全然違うけど、みんな不思議とストレスなく楽しめたんですよ。(少なくとも俺は。好きなことしかやってこなかったんで。)
でも逆に先生にストレスを与えてしまってごめんなさい。
・・・・
でもこのゼミに入って、I先生の話を聞けて、救われました。大学に来てよかったと心から思えました。
人生最後のモラトリアム期間に得たいと思っていたことの大半を先生とゼミのおかげで得ることができたから。
本当にありがとうございました。

ちなみに添付画像は男どもで先生に渡そうと予約しておいた花束です。(卒業式の日に渡した花束は女の子たちが用意してくれたものです。)
当日ばたばたしてて、先生も帰ってしまったんで渡せなくてすみませんでした。
今は俺ん家の花瓶で華やかに堂々と、、、

枯れかけてます


と、殊勝なメールがきた。ちなみに、タイトルは「まじめでいいですか」
私は感涙にむせぶべきか、笑うべきかしばらく考えた。で結局分からなかった。・・・。
で、昨日、一年間続けていた東急カルチャーの授業が終わった。そしてまた、花束を戴いた。嬉しい!!

 しかし、ゼミにしろカルチャーにしろどう考えても私は何もした覚えがないのである。あえて言えば生徒に恵まれただけのような気がする。何かを私の周りで得たと感じている人は、その人自身にそうなる能力があったからだと思う。

 たとえばゼミはAジくんがいてTくんがいて、ケーコちゃんがいて、S木がいて、一人一人がつくる前向きなムードが全体を動かしていたのだし、カルチャーも担当の方から「回数をかさねるごとに、参加者がへる講座も多いのに、この講座の学生さんはみな熱心ですごいです」とほめていただくような、いい空間がであったため、わたしも気持ちよくお話することができたである。

 だからむしろ、ゼミでもカルチャーでも感謝しなければならないのは私の方なのだろう。

 あともし何かあるとするならば、やはりリアル進行中の歴史を学んだりとか、仏教など扱っていたテーマ自体が面白かった、ということもあるかもしれない。

 カルチャーでは14世紀に書かれたチベット仏教の修行カリキュラム『ラムリム』(修道階梯)を読んでいた。チベットの仏教の世界布教の道を開く契機となった、歴史的名著である。

 この本は仏教とまったく縁もゆかりもないただの人が、仏教と出会い、それがどういう意味を持つのかを説明されるところから始まる。そして、自分の苦しみはすべて外からではなく、内側にある煩悩であることに気づかされ、最初は自分の幸せのために信仰していたものが、他者を思う気持ちを持つように促されていき、最後はゆるぎない炎のように明るい安定した心を手に入れ、その集中力のもとにものごとの真相を観察し、“存在するもの”の現れ(所知障)とそれを実体視する意識(煩悩障)を断じて、智慧を完成させる。

 はじめはわたしたちの日常レベルの“ああそうだね”みたいな段階から、順を追って高い境地に説明が進んでいくので、そのグレードアップしていく内容に徐々に気分も盛り上がっていって、読んでいて楽しいのである。最終章は仏の覚りの境地を様々な角度から論じていてちょっと難しいが、そこに至るまでは結構誰にでも分かる言葉で、仏教の基本的な教えが簡単なものから、順に身に付くようになっている。

 実によくできたカリキュラムである。このカリキュラムとゲルク派の僧院組織があって始めて、チベット仏教の世界化が始まったのだ。ゲルク派はチベット中に布教使をおくりこみ、果ては、モンゴル人、満洲人、中国人へとチベット仏教の教えを広め、行く先々で人々にこの『ラムリム』の教えを説いて入信させた。
 
 それは現在にまで続いており、ダライラマ猊下が講演の中で触れられているテーマの多くは、このツォンカパの『ラムリム』やシャーンティデーヴァの『覚りへの道』に依拠しているものである。

 そのような書物をテクストに選んでいるから面白い、というのもあるかもしれない。
本文中にある無数の経典の引用とか、インド哲学のカテゴリーに絡めて行う煩雑な議論などをとっぱらって現代人にも読みやすくしたら、とてもいい仏教の入門書になることだろう。とにかく『ラムリム』は面白い。

 一方、ゼミでよく力説したテーマは、チベット問題であった。

 チベットをめぐる様々な事件や歴史が新聞やマスコミでどのように報道されてきたかをみていくだけでも、現代のいろいろな問題が見えてくる。

 今回の事件で政治的な側面ばかりが注目されているチベットだが、問題の本質は、社会主義政権が、チベット仏教を国是とするチベット人の文化をまったく理解せず、軽んじ、弾圧してきた歴史がある。

 日本国内においてチベット問題を論じている人々は、大半が中国政治を語っているひとたちで、チベット語を読めもしないし、その文化を理解していもいない人々である。某中国政治学の先生などは「チベット文化が圧殺されているということはとりあえず措いておいて」などと、チベット人が望んでいる一番大事なことを「措いておいて」と表現する(これには心底ゾッとした)。
 

 人というものは、意識する、しないに関わらず、自分の思考の枠を他者に投影して現実を見誤るものである。中国の歴史学者や政治学者は、いまある民族の統合に資するような研究を行うことが求められる。で、そのような研究を数多く見聞きし、そのような人々と接する国外の研究者も、知らず知らずのうちに、そのような枠内でものごとを思考し、同じような視点でものを語るようになってくる。

 戦争中は国粋史観がはやり、戦後はマルクス史観がはやりという具合に、かくも節操のないはやりすたりがあることが示すように、対象を客観的に研究すべき学問は、じつはちっとも客観的でないのが実情だ。

 ゼミ生に卒論を書かせる時によく力説することは、歴史的事実をイデオロギーに即して「どう解釈するか」ではなく、歴史的事実自体が語るものに耳を傾け、「事実どうあったのか」、ということにできる限り肉迫せよということである(ようは御用学者やコメンテーターのようになってはだめよ、ということ)。

 ある歴史的事件に際して、複数の当事者がいる場合には当然両方の側からものごとを検証するべきであり、自分が理解できる側、声が大きい側、研究者が多い側など、何等かの偏った根拠に基づいて結論をだすべきではない。そのような学問のイロハを学生に覚えてもらうのに、チベット問題は話題豊富でじつに興味深いテーマであった。

 と、いうわけでテーマにめぐまれ、生徒さんの品質の高さにめぐまれ、楽しい年度だった。

 来学期入ってくる新しいゼミ生が、先輩たちみたいに反応のいい子たちだといいな。  
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COMMENT

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● ありがとうございました
プー猫 | URL | 2008/03/31(月) 10:26 [EDIT]
東急カルチャーを受講させて頂いた者です。
本当に楽しい・有意義な時間を与えて頂きました。
心よりお礼申し上げます。 ありがとうございました。
最後にキチンとお礼をつたえられなかったので、この場をお借りいたしました。

また、先生の今回のチベット問題に対しての共同通信への記事も感動しました。
これで多くの人が正しい認識を持ってくれる事を期待します。

どうぞ、またお時間がありましたら私達一般人向けの受講の機会を作ってくださいませ。
それまでは、ブログやホームページでイシハマ節を楽しませていただきます。


最後に      FREE TIBET !!!
● ありがとうございます
イシハマ | URL | 2008/03/31(月) 18:50 [EDIT]
こちらこそ、真剣におつきあいいただき、ありがとうこざいました。
それが、まあいろいろあって配信が止まっているようです(笑)。
このぶろぐよりははるかにおとなしくかいたのですが。面白いですね。
● 歴史的事実自体が語るもの
めりーはは | URL | 2008/03/31(月) 20:23 [EDIT]
真実は一つだが正義は一つとは限らない。
今日のブログを読んでこのセリフを思い出しました。
出典は仮面ライダー龍騎ですが。
● 本当にありがとうございました
たか | URL | 2008/03/31(月) 23:12 [EDIT]
私も東急カルチャーを1年間受講させていただきました。
以前からチベット仏教を学びたいと思いながらも、そのままズルズルときてしまいましたが、丁度昨年の今頃、先生が講座をお持ちになるとわかり、「まだ間に合いますか?」と東急に駆け込んだのを思い出します。

近年、自分の専門分野に対し、「もっとシンプルでよいのではないか?」と考えていましたので、先生のお話(含イシハマ節)をうかがえて、本当によかったです。すごく楽しかったですし、すごくスッキリしました(仕事で相当活かされています)。

そのうちまた講座を開いていただきたく、よろしくお願いいたします。
同じ敷地内でお仕事させていただいておりますので、機会がありましたら、授業にもぐりたいと思います。
本当にありがとうございました。
● ラサで
| URL | 2008/04/01(火) 11:41 [EDIT]
ラサでAジ君と会いました。
こういう先生に恵まれて彼は幸せですね。
● ありがとうございました
れいか | URL | 2008/04/03(木) 05:33 [EDIT]
同じくカルチャーを受講させていただいておりました。本当に楽しい1年間でした。できることならタイムマシンに乗って、もう一度全部聞きなおしたい!!(熱望!) それくらい毎回楽しみでしたし、沢山教えていただきました。ああ・・ほんとに、もう一度全部聞きたい!(TT)

今この時代に仏教に接する機会を得て、先生の講座に参加できたことに心から感謝しています。本当にどうもありがとうございました。
みなさんおっしゃっていますように、また受講できる機会がありますようにと願っております。

共同通信の記事、同じく感動いたしました。

● はじめまして!
インディーズローリー | URL | 2008/04/03(木) 18:10 [EDIT]
はじめまして!先生
私は無学ですが中国ってスゴイ悪根性してるな・・と
そして日本はスゴイ弱こんじょうしてるな・・と

せめて自分たちだけでも情報操作に惑わされない
真の情報を見つめ考えていこうと思います。
● ありがとうございました
lunta | URL | 2008/04/05(土) 11:23 [EDIT]
東急カルチャーで一年間、楽しい時間をありがとうございました。
イシハマ先生の講義を一度も欠席せずに聞くことができたのには我ながらびっくりしました。やっぱり「これをちゃんと聞け」というご縁だったのね、なんて納得したりして。
もちろんお話が毎回とてもおもしろかったのがその第一の理由であったことは間違いありません。先生のように仏教を楽しく、わかりやすく説明してくださる方がもっとたくさんいたら仏教の将来も明るいと思うのですが。
次回、再開なさる時はぜひもっと過激に、よろしくお願いいたします。

イシハマ | URL | 2008/04/06(日) 00:19 [EDIT]
>めりーはは様
 たしかに、事実は一つでも、正義は複数。正義は勝つ、という一般論は美しいけど、実際、実際に正義を口にしている人をみるとうさんくさい。

>たか様
 大変なお仕事をされていて本当に頭が下がります。いろいろタイヘンかと思いますが、ご夫婦ともども悩める人々を少しでも楽にしてください。

>空さん
 いや、Aジくんがいてくれたおかげでゼミがまとまったのです。私の方こそ感謝してます。

>れいかさん
 共同通信の記事、なんとか配信にこぎつけたようです。記者の方の努力に感謝!

>インディーズローリーさま
 確かに弱根性ですが、国内ですら統治能力を疑われている我が国の首相に、あのトテツモナクとんでも国家と張り合え!といってもまあ、無理な相談なような。

>luntaさん
休みなしに聴講して下さったとは、説者冥利につきます。ありがとうございました。

| URL | 2008/04/09(水) 20:34 [EDIT]
明日からよろしくお願いします。


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