白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2008/07/02(水)   CATEGORY: 未分類
学士会館でチベットを話す
 水曜日は某大学院でお話をする。地下鉄の某駅におりたつと、サミットの警備か、改札やらホームやらに警察官がいっぱい。善良な小市民である自分はにこやかにその前を通り過ぎる。

 会場についてからは、ここ数年の自分の研究テーマである、チベット、モンゴル、満洲の王権と仏教の歴史についてお話する。

 先生方にはおおむね好評であった。しかし、聴衆の中にいた中国籍の留学生(僧侶)の方から、たどたどしい日本語で何か抗議されているような感じの質問を受けた。その時は彼が何を言いたいのかよく分からなかったのだが、そのあといろいろ考えて、どうも彼は「中国は多民族国家なのだから、満洲人が中国を征服した、とか、モンゴル人が中国を征服した」とかいう表現がおかしい、とおっしゃっていたような気がする。

 そりゃ、今はチベットもモンゴルも満洲も「国内」かもしれないが、元朝や清朝は歴史的に言えば、前者はチンギス・ハンの孫でモンゴルからやってきた政権だし、満洲王朝も外からやってきて、万里の長城を突破して中国を征服したのだから、この時代まで国内問題だから「征服」いうないうのは、あまりにも客観的かつ歴史的な思考がなさすぎ。

 例によってものすごく不快な気持ちになったので(小人物!)、次のお仕事場、学士会館につくと、初対面の主催者の方一人をつかまえて、コーヒーのみながら、グチグチ愚痴る(スイマセン)。

 ぐちっているうちに、だんだん再起動してくる。

 歴史を研究する上でやってはいけないことの最たることは現在の認識が予断となって過去の歴史的事実を現在に都合のいいように解釈することである。

 私はチベットやモンゴルの歴史書や満洲語の史料に則って、「当時の人はこう考えていた」という歴史像を呈示しているのであり、それに対して、もし何か言いたいことがあるのなら、どうぞ、私と同じだけチベット語やモンゴル語や満洲の歴史を読んで、その上で根拠をあげて、反論しろ、といいたい。
 
 「過去がこうだった」という際に、今の人がどう反応するのかなんていちいち考えながら話していたら、それはすでに研究者の思考ではなく、政治家のそれである。現代人の反応なんかいちいち気にしてられっかい、べらぼーめー。

研究者としてのスジを通すのみっ。

 我ながらここ二ヶ月で、ずいぶんタフになったもんだよ(タフというより鉄面皮になったという気もするが)。

 学士会館のイベント(アジア・パシフィック・フォーラム)については、わたしはどんな内容の会かよくわからなかったが、主催者の方から、「一般の方から募った作文の選考をしてください」と頼まれて参加することとなった。しかし、そもそも私は他人様の書いたものを選ぶなんて大それたことをしたこともないし、したくもない。みなさんそれぞれの思いがあって送ってくるものに、甲乙つけるなんてできない。

 しかし、何かを選ばなきゃならなくなっため、仕方なく断腸の思いで、形式・長さ・バランス(男女・硬軟)にのっとって、文章を選ばせていただいた。

 今日こられなかった方の供養に(笑)、そのうちのお一人、Fさんの文章を転載させていただきます。何か最後の一行でざっくり心を捕まれましたです。

 「チベット」は数ヶ月前まで、知らない国でした。
中国だとも思ってなかったし、国なんだとも・・思ってなかったような、
曖昧でぼんやりとした、自分に関係の無い“どこか遠く”。

今でも、遠い。

行ったことも無ければ、その地の人と会ったことも話したことも無い。
完全に他人。

3月に知った「チベット」で起きた“何か”。

人が死んだ。
沢山の人が。

インターネットの、PCの画面の向こうに広がる“知らなかったこと”達。

拷問を受けた人の、亡くなられていった人の、悲鳴。

きっと世界中にまだ存在する、権力に踏みにじられる人たち。
その人たちの中で、「チベット」というものに、
わたしのなかで、何かしなきゃ、って思いが溢れた。
なぜかは、知らない。
でも何かしたくなったんだ。

遠くの他人。
この人たちが、笑って暮らす日々を夢に見る。

自分の国で、自分の家で、大切な家族と、温かいご飯を食べる。
友達とけんかする。親に反抗する。
遊ぶ。笑う。泣く。怒る。

今 わたしが持っているこの、当たり前の日々を、
あなたたちに過ごしてほしいんだ。

信じている人を信じていると言える。
大切な人の為に祈る。
歌う、踊る。
そんな毎日を。

ちっぽけな私が出来ることは 何かあなたたちの力になるだろうか?
わからないけど 祈ります。

声をあげよう、声も出せないあなたたちの代わりに。

フリーチベット。
“フリー”の意味は独立でも自治でもどっちだっていいよ。

ただあなたに幸せになってほしい。
笑っていてほしいんだ。

どうか生きてください。
あなたが笑える日はきっと来る。

どうか生きて。
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COMMENT

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● いつも読ませて頂いています。
ペマ | URL | 2008/07/03(木) 23:37 [EDIT]
歴史の認識に関しては、本当に仰られている通りだと思っています。日本の過去の歴史においても、政治家的思考で喜んでいる人が多いので、悲しくなってきます。
掲載されているFさんの文章、ぐっと来てしまいました。声をあげる事すら出来ない人も居るんだと、改めて、強く認識しました。
何が出来るか分らないけれど、私には私にしか出来ない事があるはずだと思って、少しずつですが、チベットへの支援を続けてきました。これからも私に出来る事をやっていこうと思います。ありがとうございます。

マーハー | URL | 2008/07/04(金) 07:21 [EDIT]
>フリーチベット。
>“フリー”の意味は独立でも自治でもどっちだっていいよ。

>ただあなたに幸せになってほしい。
>笑っていてほしいんだ。

国を得ることより大事なこと、そう感じました。
● 愛の対義語は無関心
モモ@大東 | URL | 2008/07/04(金) 20:40 [EDIT]
やはりチベットンの情勢が正確に伝わってくれないと、
TV配信の独壇場になってしまう。
無関心はチベットを迫害される歳になってしまう。
とにかく正確な知識を得るため、先生の本読みます。
● 中国情報局ニュースより拝借
カルマ | URL | 2008/07/05(土) 08:44 [EDIT]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0704&f=politics_0704_001.shtml

でも、中国の報道は、・・・・・・。
無論、亡命政府も犯人と名指しされた団体も、そんな事実はありませんが。
あいかわらず、 チベット亡命政府=テロリスト
の、構図は、変わらない。

なんか、サミットに中国の国家元首が来るようですが、・・・・・・。
何かしらの、前進はあるのだろうか?
期待半分、でも、現実は、口約束だけか、テロリストに生き残る道はないと、つっぱねられるか。
不安満載です。

(所で、名古屋で大地震の噂流す、占い知って誰だろう。
 隣町の瀬戸市に住んでいるから、嫌だなぁ。)

fukumoto | URL | 2008/07/05(土) 14:12 [EDIT]
教育実習で中学地理で中国の人口を扱いまして、
”チベット仏教を信仰している民族”として
チベット族・モンゴル族があげられていたので
元朝や清朝の話をつたないながらも絡めてみましたが、
チベット問題にも触れましたが、
それもいいけど、「1人っ子政策」をよりほりさげて
やってほしいと言われました。
生徒はニュースみてないし、
テストにもあまり出ないし的なところで興味がないでしょぅと。

ニュースでみたから問題と認識する、興味をもつとか、
テストのために勉強するとか、
そうゆう順番の考え方が現実だとは実習にきて思います。
でも果たしてこれが正しい教育の在り方なのか
わからなくなってとてももやもやしました。

でも元朝も清朝も日本の歴史に関する部分で既習事項だったし
近代で革命や人権についてもやったあとだったので
ちょうどよいと思ったのですがー。
● はじめまして、こんにちは
マツ | URL | 2008/07/05(土) 16:48 [EDIT]
いつも読ませて頂いております。
チベットの事はいつも気になっています。
ただ、そうしてチベット問題関連のサイト等を巡っておりますと、中国人の方々が「ダライ・ラマの誕生日に人の皮を送った」とか「過酷な奴隷制だったのを中国は救ったのだ」とか主張されているのを見ました。
今までの日本語のWEBサイトでは見られなかった記述です。共産党の嘘では…とも思ったのですが、胸にもやもやが残ります。
チベットの方々が迫害されているというのは疑ってません。日本人はこれを意識すべきだと思っています。
ただ、喉の奥にささった魚の骨みたいに気になります。これは真実なのでしょうか。

ゆず | URL | 2008/07/05(土) 19:30 [EDIT]
開会式に行かないと言っていたフランスのサルコジ大統領が一転出席するというニュースを見ました。ブッシュさんや福田さんも開会式に出席するのは確実です。それだけ、経済や貿易の面で中国に依存してるので、仕方なしって言えばそうかも知れませんが、せめて中国に対して非難声明ぐらいは堂々と出せないのでしょうか。洞爺湖サミットではチベット物語も主要議題にしてほしいです。

しらゆき | URL | 2008/07/05(土) 23:29 [EDIT]
>ペマさん
この文章、何かぐっときますよねー。

>マーハーさん
自分ではなくほかの人の幸せをその人の立場にたってのぞむ気持ちというのは、何にせよ純粋でいいですよね。

>モモさん
最近みなが身の回りのことにしか興味を持たなくなった結果、海外事情を伝えるジャーナリストたちの生活が苦しいとのことです。

>カルマさん
対話は、残念ながら、また今回も実りはなかったようです。

>fukumotoさん
問題があり、それを正しく認識する、が一番あるべき姿だと思いますが、実際は何かないと興味をもたないというのが、人間のどうしようもないところ。チベットの方がよく、渡したちは平和的に抗議を行ってきたが、それは世界に無視されてきた、世間は過激な民族運動ばかりしか報道しない、それはおかしいとおっしゃっているのが身にしみますです。

>マツさん
客観的な立場にある人がその事件がおきた時からできるだけ時間的空間的に近い時に記録したものがそういっているのならそれはあったことですし、そうでなければ、あったかなかったかは確定できないというしかなでしょう。疑問が生じたなら、まずそのような記述の根拠を求めることだと思います。それからいうまでもないことですが、「帝国主義(笑)からの解放」が、現在のチベット人に対する処遇を正当化するものでないことは明白ですよね。封建主義云々については、西洋においても日本においても近代以前は今から考えると人権を侵害するようないろいろな刑罰や風習があったわけで、それをもってして、徳川時代や西洋中世を暗黒時代というのは現代人からの発想にすぎません。

>ゆずさん
政治には多くは期待できませんし、かりに先進各国がすべて開会式を欠席してもかの国が変わるとも思えないので、みな、その上での判断を迫られているのだと思います。いやはや困った話です。

● >マツさん
 グランドシニア | URL | 2008/07/06(日) 09:47 [EDIT]
 こういうことは、人に意見を聞くのではなく、自分の目で見て、自分の頭で考えなければ、結局はいろいろな人の意見の間で右往左往してしまいます。
 中国の当局が情報統制をしている、つまり真実ではなく、自分たちの支配に都合のいいような主張を流すことは、中国よりの報道が多い朝日新聞でさえ、普通に読んでいれば、最近は随分目につくようになりました。なりふり構わない中国政府の情報操作は、対外的なことよりも、国内の人民を黙らせるために行われています。なぜならば、そういう政府の見解と、外国人記者の報道とがどれほど齟齬しているかについて、もはや中国は隠蔽工作をしないからです。
 一方、ダライラマの本を一冊でも読んでみて下さい。彼がどういう人か、肌で感じるでしょう。『幸福論』という本はお薦めです。
 たとえば、昔風の古い木造の家に老夫婦が住んでいたとします。隣の人が突然、あんたの土地はそのままにしていると勿体ない、老後も心配だろうと言って、勝手に家を壊してマンションを建て、そこの一室にその老夫婦を住まわせたとします。隣の人は、周囲の人たちに、自分はこの老夫婦のためを考えてして上げた、と宣伝したとします。果たしてその老夫婦は最新のマンションと管理費収入があるので幸せと言えるでしょうか。
● ありがとうございます
マツ | URL | 2008/07/07(月) 00:21 [EDIT]
先生、グランドシニアさん、レスありがとうございます。
そうですね、まずソースを見つけてみます。
政府発のソースしかなかったらもう今度から鼻で笑っておくことにします。
目から鱗でした、確かにそれは暗黒時代とはいえません(笑)!
両方の記事を読むべきだと思って、色々見たつもりだったんですが、逆に偏ってて洗脳されかかってたんでしょうか。あぶない。

それにそのようなコメントに出くわした時、自分では反論できないのに不満があったのだと思います。チベットに関する知識が浅いから…。
いろいろ読んでみようと思います。ありがとうございました。

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