白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2009/01/14(水)   CATEGORY: 未分類
最後のダライラマ
同じ学部の先生なのだが、学科が違うので一度もお話したことのない先生から、突然「Iさん、ダライラマの研究されているんですよね」と言われた。

私「専門でやってるのは、ポタラ宮たてた頃の17世紀のライラマ五世とかですが、今のダライラマも若干・・・うにゃうにゃ(そういえば今のダライラマ法王ってダライラマ五世と理論上は同一人物なんだから、て説明面倒だな)」

その先生「アメリカの友達がダライラマにはまっていて、ボクにこの本読めって送ってきたんですよ。それでちょっと読んでみたら、ダライラマは科学とかにも通暁してるんですね。すごいですね」とおっしゃるので

 私「そうなんですよ。もともとチベット仏教は論理的な教えだから、理系に通じる所があって、ダライラマ猊下も幼い頃から理系の学問に興味をもって、亡命後はお医者様とか生化学者とかのお友達を世界中につくって、対談集とかも山ほどだしてますよ。一般論としてダライラマの本で一番読みやすいのは、やっぱ『ダライラマの幸福論』かな~。」と気がつくと洗脳モード。職業病かっ(笑)。

 そいで、そのすぐあと、会議でたまたま横に座った先生(これまた学科が違うので今まで個人的な会話はしたことがない)が、私が清朝とチベット仏教みたいな本をもってたら、「先生の○×にのった文章読みましたよ。清朝の皇帝はタライラマに跪いていたんですよね。今の中国はけしからんですね」と話しかけてきた。

 ダライラマ猊下最近すごくメジャー。

 もし私が「胡×涛の中国」とか「東アジア共同体」とかの旗振り役の研究していたなら、もし「金融危機を中国の内需で乗り越えろ」みたいな経済学者だったら、学内でまったく分野の異なる先生が話しかけてくることなんてことは〔たぶん〕ないだろう(笑)。つくづく清い学縁をいただいたものと思う。

 予断を排してダライラマの発言をおっていけば、誰でもこれほどの人格者はいないことに気づく。

 今でもダライラマを「人民を搾取した封建領主」とか、「国家分裂主義者」とか、「偽善者」とか言う人が限定的にいるけど、偽善者ってーのは、本質黒いのに白くみせている人であり、そういう人って発言に一貫性がないものだけど、人民解放軍にチベット人ばりばり殺されていた60年代から今にいたるまでずーつっと「中国人を恨んではいけない」と言っている人を偽善者呼ばわりするのは、よく知らないんだろうなとしか言いようがない。

 封建領主云々というプロパガンダについても、まったく不当な評価。亡命後、ダライラマがまずやったことはチベット文化の保存と難民社会の民主化であった。ダライラマ法王は昔から「チベット人が望まなくなったならダライラマ制度はその時点で終わる」とおっしゃっていて、基本民主的なのである。つまり、ダライラマがダライラマを続けているのは、「チベット人が望むから」なのである。

 去年の暮れ、中国支配下のチベット人に「自治か独立かどの路線で中国と話し合うか」という質問で統計とってみたら「ダライラマ法王のおっしゃる通りに」が一番多かった。そいで、難民社会の代表者を集めて行った代表者会議でも「ダライラマ法王のご判断を」というオチで終わっていた。

 で、その議事録がダライラマ法王日本代表部事務所から『チベット・希望の鏡』という表題で出されたので見ると(そのドラフトはこちら)、会議の最後に採択された合意のトップに「ダライラマ法王に関するもの」というものがあり、要約すると

「ダライラマ法王こそチベットの神も人も認めるチベットの最高指導者である。だから、法王様「引退する」などということは、ゆめ言わないでください。歴代ダライラマが「チベット人を救おう」と政治と宗教の重責をにないつつ転生を繰り返されてきた、その御意志を決して捨てないでください。」

 て、お願いというか、ほとんど要請してました(笑)。
 すごい公文書。
 
 でも、尊敬できる人格者がいて、その判断に従えるって、ある意味幸せな事だとおもう。今の時代、心の底から尊敬できて、「この人の言うことなら安心して聞ける」なんて存在は、親でも教師でも、政治家でも宗教家でもなかなかいないから。

 法王も十五の年から全チベット人にすがりつかれて、二十四才以後は難民の生活まで支えなければいけなくなって、本当にもう端から見て痛々しいんだけど、それを普通に笑ってこなしてこられたすごい方。それに気づいた瞬間にみなダライラマのファンとなる。

 気がつけばファンは世界中にいたりして、そのグローバルさがまた、千本の手と千の眼をもち人々を幸せに導く観音様を思い起こさせ、人々の信仰を強くしていく。

 国を失ったこのヒサンな状況で、ダライラマの高潔さが世界の人々の支援をひきつけて難民社会の暮らしを何とか支えているという今の状態で、チベット人がダライラマを必要としなくなる、なんてあり得ないのである。

 彼を最後のダライラマにしたい人は、すべてのチベット人を幸せにしてあげることです。そしたら、ダライラマ法王は「虫でも橋でも人の役に立つものに生まれ変わりますよ」とおっしゃっておられます。
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COMMENT

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ゆず | URL | 2009/01/14(水) 19:43 [EDIT]
チベットは、遊牧民が多く耕作面積も少なく、中国が言っているような農奴制はほとんど無かったと聞いた事があります。あったとしても、それがチベットを占領する正当な理由にならないはず。そもそも、中国も清代以前は封建制でした。ヨーロッパでも日本でもどの社会でも同じです。チベットの人々の大多数が、ダライ・ラマ制を望んでいるというのは安心しました。心配なのは、今のダライ・ラマが死去して、次の転生者を見つけても、パンチェン・ラマみたいに中国に妨害され、軟禁されたりしないか。ダライ・ラマが2人林立するような状態にならなければいいのですが...。

PENBA YAKDU | URL | 2009/01/15(木) 00:55 [EDIT]
>もともとチベット仏教は論理的な教えだから、理系に通じる所があって、

私が驚いたのは無常を表現した「刹那滅(せつなめつ)」という思想。あらゆる事物は一瞬の存在で、同類のものが連続して生じて滅している。
これって微分の考え方で、相対性理論を彷彿させます。物理学者がチベット仏教やればノーベル物理学賞と平和賞双受賞できる日もあるかもしれません?

出典は『ダライラマの仏教入門』だったと思います。たぶん。

lunta | URL | 2009/01/16(金) 00:27 [EDIT]
「尊敬できる人格者がいて、その判断に従えるって、ある意味幸せな事」まったく同感です。ダライ・ラマのお立場って見方によっては独裁者と言えなくもないでしょうが、民主主義の盟主(笑)アメリカが選ぶのがブッシュだったり、某国の首相、太郎ちゃんなんかを見ると、優れた独裁者の方がずっといいんじゃないか、と思います。
ところでダライ・ラマの次の転生者について、上の方が書いていらっしゃるようなことを心配して14世はもう転生しないとおっしゃった、と聞いたことがあるのですがガセですか。

ドミノ | URL | 2009/01/16(金) 01:57 [EDIT]
書き込み失礼します。いつもこっそり当ブログを拝見しチベット
文化の奥深さを味わわせていただいております。私もダライラマ
法王の発言・行動に触れるうちに、すっかりファンになってしまい
ました。本当に思いやりと知性とユーモアを兼ね備えた素晴ら
しい方ですよね。
ただ、特別総会の議事録については「法王もご高齢なんだし、
リーダー的ポジションの引き継ぎとかしとかなくて良いの?」と
考えてしまいます。完全にサラリーマンの発想ですね。

>金融危機を中国の内需で乗り越えろ!
この辺りの文章、とっても面白いです。世界がもっとチベット的
になったら過剰投資とかなくなって金融危機も起きないと思う
んですけどねー。

では、これからもブログ楽しみにしております。

カルマ♪♪ | URL | 2009/01/16(金) 08:55 [EDIT]
チベット人にとって、ギャワ・リンポチェさまは、最も尊敬する人。
世界中の偉い人が、もっとも尊敬する尊い人ですと、胸をはれるおうさまです。
こくみんから、王様を取り上げて、えばっているのは、漢族だけ。
解放記念がどうのこうのといわれても、国民の暮らしはよくならなず、それどころか、民族弾圧が続けば、これじゃぁ、地元の人は、だれも、
「中国政府のお陰で幸せです。」
とは、答えない。

彼が、将来、生まれ変わる時が来た時、それでも、チベット国民は、彼の転生を希望するだろう。
人として、そして、チベット民族の同胞から、転生者が生まれてくることを、ねがうだろう。(多分)
● TBSのブータン特集でダライ・ラマ14世猊下のお写真が映りました。
Hiromi | URL | 2009/01/17(土) 00:02 [EDIT]
先日、TVのブータン特集で、ブータンの若い国王陛下の演説と国民との関係をテレビで見て、おもわず感動して泣きました。そして、ブータンの個人のお宅の紹介で、壁に飾られたブータンの高僧や歴代の国王陛下の写真とともに、ダライ・ラマ14世猊下のお写真が、わずかだけテロップ付きでテレビに映りました。この番組の冒頭では、「チベット仏教を国教とする唯一の国」と紹介されていました。

日本へは春節帰国での滞在で、また中国に戻らねばなりませんが、つかの間の自由が身にしみます。もっと重い苦痛に耐えている人々が、自由に考え行動できる日が来ますように。

シラユキ | URL | 2009/01/18(日) 19:03 [EDIT]
>ゆずさん
大丈夫。ダライラマが二人でたって、中国が擁立する方は歴史が淘汰しますから。

>Penba Yakduさん
えええ、私が翻訳した本ですが、覚えてません(笑)。亡命直後、猊下はすぐれた密教行者を科学的に調べるプロジェクトに協力していらして、トゥンモ(へそのところで発熱するヨーガ)を実修しているヨーガ行者が寒中ホカホカしているのを記録させたりしていました。


>luntaさん
ダライラマのお話しは、ユーモアとレトリックとマジとがまじあってるので、その真意はとても測りがたいのですが、絶対ゆるがないのは「人を救うためにもっとも効率のいい姿に生まれ変わる」という決意なので、まったく「チベット人が制度としてのダライラマを否定するのなら、生まれ変わらない」という文脈で語ったのではないでしょうか。

>ドミノさん
組織運営を考えた場合、ご心配はもっともと思います。まあでも、難民社会がまとまっていれば「もしも」の時もなんとかなりますので、とにかく何であれ決議がでて、一つにまとまったのはいいことだと思います。借金して家や車をかわせるような経済、わたしもどうかと思います。

>カルマさん
そうですよねー、中国政府「農奴を解放してやった」てさんざん恩着せますけど、チベット文化を根こそぎ破壊しておいて、感謝されると思ってるんでしょうかねー。

>Hiromiさん
その国民が幸せと思えるのであれば、どんな政治形態でもいいですよね。ダライラマがおつしゃるように、「国民が望まなくなったら」やめればいいだけの話です。ブータンもだんだん俗化が進んでいるようですが、伝統的なものを大切にしながらゆっくりかわっていっているようなので、好ましいことです。

一アジア主義者 | URL | 2009/01/19(月) 08:15 [EDIT]
史料をちゃんと見ているわけでは無いのですが、中国の「農奴制」という主張で疑問なのは、そもそも旧チベットの体制が、チベット全土を国民国家として「中央集権」できてたと思えない点です。

広いチベットの九割を「農奴」にするような強制規範を、一体どうやって持てたのかな?って。

それにチベットの人って肉が好きですよね。あの高地で作れる穀物だけで生きていけると思えませんから、草食動物から、野菜で摂るべき栄養も取ってたんだろうなって。猊下も「インドには新鮮な野菜がある。」と仰られていた記憶があります。

中国の主張は、ラサ決起と同時期に行われていた「大躍進政策」で、中国全土で2000万人餓死させた失敗を、チベットでもやった事を隠すため、言ってるとしか思えません・・・

カルマ♪♪ | URL | 2009/01/19(月) 11:59 [EDIT]
lunta さん
残念ながら、ガセではなく、ギャワ・リンポチェさまご本人が、そうおっしゃってました。
しかも、ダライ・ラマを必要としない政治を、模索すべきだとも、おっしゃっておられました。

ネチュンは何も言わないけど、15世は、5人現われて、亡命政府、中国政府ひっくるめて、もめた挙句、わずか、4・5歳で逮捕されるでしょう。
(だから、止めようと、げい下は言いたかったのかもしれない。)

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