白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2009/04/05(日)   CATEGORY: 未分類
統治権確立50年
 1959年の3月28日、ダライ・ラマ14世の亡命をうけて、中国はチベット政府を解体し、中国に名実ともに併合した。

 この中国政府の決定は実は1951年に中国がチベットに締結を強要した十七条協約に約束してあった「ダライ・ラマ、パンチェン・ラマの地位の保全」「チベット人の望まない改革は行わない」、などの項目を自ら破る、思い切りなワルな決定であった。

 それから50年たった今年、中国は自分で制定した十七条協約を破って、ダライ・ラマ政権を解体したこの日を、突然「農奴解放記念日」に制定するといいだした。そいでもって、北京ではこの五十年チベットがどんなに発展したか、みたいな展覧会を同時開催して、国内の宣伝につとめている。

 そういえば今年日本の国立博物館でも「チベット展」をやるとのことだが、まさか、この農奴解放50周年を記念しての展覧会じゃないよね。

 まさか特定の国のプロパガンダに日本の国立博物館が使われるなんてことはないでしょうねえ。もしそんなことがあるなら、自分KYだから相当の批評をさせていただきます。

 自分歴史学者なので政治が歴史を利用するようなことは本当に心底やってほしくありません。博物館に勤めていようが、大学に勤めていようが、研究者は「真実」に仕える職業。真実にもとるような展示だけは避けてもらいたいものです。ていうか、ダライ・ラマをはずしてチベット展を構成するのはかなりつまらないものになると思いますが(笑)。

 で、くだんの三月二十八日を日本の各新聞社がどう伝えているかを比較してみた。

各紙の見出しはこんなカンジ、

(朝日)チベット「解放」中国が祝賀大会 統治権宣言50年
(読売)チベット「農奴解放」記念日、ダライ・ラマとの対決を強調
(毎日)チベット:動乱鎮圧50年で中国側が祝賀会--ラサ
(産経)“面従腹背”強めるチベット 大量宣伝と治安部隊で押さえ込み

で、内容は中国政府の言い分をまず、伝え、そのあとチベット人の言葉とか、亡命政府の声明とかを短く対比させて、全体としては「中国政府がチベット占領を正当化するためにムリをしてます」みたいな印象の記事にしたてている。

 2000年初頭にカルマパが亡命した時もずいぶんチベットに対する理解は深まったが、この一年のチベット報道の変化はあの時以上だ。その代価がチベット人の流した血だと思うと一概に喜ぶわけにもいかないが。

 カルマパの時に自分のところに取材にきた某紙の記者が、私が「チベットの情報を知りたかったら、これこれのサイトに新しい情報あがってますよ」といったら、

 「自分、中国語はできるんですが、英語はできないんです」と言われて絶句したっけ。英語は中学からやってるはずだろうが!!!

 四月三日に大学の教員のあつまるパーティがあったため、その場で、ジャーナリズム論を研究していらっしゃる先生のところにスタスタよっていって、


私が「チベット報道、この一年でずいぶんチベットよりに内容が変わったと思いませんか?」

と聞くと

その先生「ああ、変わったよね」

私「大晦日に朝日が社説でチベット問題を〔前に比べれば〕チベットよりの立場で解決するように提言してくれた時は、目頭押さえちゃいましたよ。だって、あの新聞ダライ・ラマのノーベル平和賞受賞にケチつけた新聞ですよ。この変化の裏に何があったか分かったら教えてくれませんか」といったら

その先生「ああ、面白いから調べてみるよ」とのこと。期待してます(ここで書けるかどうかわかんないけど)。

 そして、気になっていることも質問してみた。1959年の3月28日におきたことを、各紙どう表現しているかをみてみると、朝日、毎日、産経ともに「中国がチベットに統治権を確立して50年」という表現を用いている。

 読売だけはこの日を「統治権確立」の言葉を使わずに、新華社電をひいて『「農奴を解放した」と主張し』と、カッコにくくることによって「その内容を別に認めているわけじゃないよ」というニュアンスをだしている。

 朝日新聞のデータベースを検索してみたところ、チベットに関連して「統治権の確立」などという言葉を使ったのはこれが初めてなので、この表現は今年にはいってから現れたように見える。そこで、そのジャーナリズム研究の先生に

私「統治権確立、という新しい表現を大手三紙が揃って使うのは、談合でもしていないと不自然(ちなみに、BBCなどの欧米の報道は農奴解放記念日を『』つきで批判的に直訳している)。三者はこの日をどう表現するか話し合っているのか」と伺ってみると、この件については知らないけど、朝日と毎日は大きな問題については話し合いの場があるらしく、最近では、読売と朝日も話し合いをもっているそう(じゃあ各紙横並びか 笑 せめていい並び方してね 笑)。

 ちなみに、「農奴解放記念日」も終わったこととて、中国は四月五日くらいから、随時観光客の受け入れを始めるとのこと。いつまでも外国人を入境禁止にしていたら、外貨がおちませんものね。でも、きっとまた何かあったらすぐに入れなくなるんだろうな。

 共産党のおかげで二十一世紀になってもチベットは"秘境"(笑)です。
 
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COMMENT

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カルマ・フォーチュン(♪♪) | URL | 2009/04/06(月) 09:01 [EDIT]
チベットに限らず、中国国内の取材の許可が、全く下りなくなったからではないでしょうか。
中日新聞伝いに聞いた話だと、四川省の地震災害被災地の取材を申し込んだとき、
とにかく、何処に取材に行くにも、いちいち、ガイドと称した私服警官が同行していて、あそこもダメ、ココもダメで、取材にならず、
挙句、日暮れ近くなると、近くの空港へ送り届けると、出てけといわんばかりの態度をとられたとも、お聞きしました。
これでは、中国政府よりの報道も、さすがになくなると思う。

ゆず | URL | 2009/04/06(月) 11:55 [EDIT]
私がいつも思うのは、中国が主張する農奴っていうのはそもそもヨーロッパの概念ではないでしょうか。確かに、中国が占領する前のチベットは、決して豊かでは無かったと思います。身分制度もあり封建的な社会だったと思います。しかし、だからといってチベットを占領する理由にはならないはず。そういえば、サルコジが1日の金融サミットの時に胡錦涛と会談し、今度は一転「台湾とチベットは中国の領土の一部」と認めたそうです。いつから、台湾とチベットが中国の領土になったのでしょうか。

mimaco | URL | 2009/04/06(月) 12:59 [EDIT]
『農奴解放記念日』関連の報道を見ていて目に余るひどい書き方はされていないなと思っていたのですが、言われてみれば確かに"談合"の存在を感じさせる言葉使いですね。そうか、裏ではそんな話し合いがあるのか~とちょっと納得。
私がうん十年前に通っていた高校は当時の受験一辺倒教育から外れていたため、教師たちに「テレビが言っていた、新聞が書いていた、を唯一の真実だと思うな」「色々のものを見て比較しなさい」という人が多かった。そのおかげで今や疑り深ーくものを見る癖がついたつもりでしたが、まだまだ甘い!ですね。
4月に入ったら予想通りに外国人の入境禁止が解けて、何だかな~と思います。そんなに喧伝したい『農奴解放記念日』ならば、正々堂々と外国人を入れてみたらいかがですか?(絶対ムリでしょうけど)。
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2009/04/07(火) 18:39 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

manuel | URL | 2009/04/07(火) 23:28 [EDIT]
中国政府はチベットを「解放した」「チベット人の生活水準を上げた」と散々言います。
解放したと言うものの農奴制などあったのでしょうか?百歩譲ってあったとしてもチベット人はまったく「解放」されていません。
生活水準は上がりました。確かに。ですがチベット人の心の拠り所である信仰や伝統文化という犠牲と引換えに…

「解放」「文明化」という謳い文句は中国に始まったわけでなく今まで植民地政策やった多くの国が言ってるわけですから世界の目から見りゃあまりにも説得力がなくあきれるだけです。鵜呑みにするはずありません。まったく哀れなものです。そういうことを自覚しないから世界中から白い目で見られ始めているのに…

PENBA YAKDU | URL | 2009/04/09(木) 00:57 [EDIT]
4月11日(土)から九州国立博物館で開催される「聖地チベット-ポタラ宮と天空の至宝」展の主催者のひとつに「中国チベット文化保護発展協会」なるものがあります。農奴解放を「大きな貢献」とコメントした団体。
日本側の主催者も慎重に無頓着を装っているかのようです。
展示に関する「チベット略年表」は1735年乾隆帝即位で終わっています。

ですから先生に講演依頼がないのは自明の理だったんです。

しらゆき | URL | 2009/04/09(木) 10:44 [EDIT]
>カルマさん
そうですね、報道に携わる人にとって「報道の自由がない」くらい腹の立つことはないですから、直接体験に基づいて、中国政府に対する評価ができるようになるんですね。

>ゆずさん
「農奴」については私も同感。サルコジの対応については「アブナイ人はそうでない人を理解することも合わすこともできないから、とりあえずアブナイ人の価値観にあわせてコントロールしよう」てなところだと思いますが、結局アブナイ人のペースにのせられてしまうだけと思われ。

>minacoさん
高校の先生たちはいい教育されてますねー。根拠のない猜疑心はよくないけど、根拠にもとづいて批判的にものごとを分析することはいいことです。


>モモさん
恒久平和はみなの願い。問題はそういうものに価値をみいださないアブナイ人・国をどうするか。

>manuelさん
思い切り白い眼でみてやってください。このムチャクチャナ言い訳はじつは中国半世紀前からやってました。最近やっと広く知られるようになったんですよ(よよよ)。

>Penbaさん
私の専門はじつは、17世紀以後のダライ・ラマ政権と中国王朝の関係史。なので、展覧会のコンセプトの第三章あたりが思い切りど真ん中ですのよ。ほほほ。

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