白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2009/09/24(木)   CATEGORY: 未分類
知識人たちのチベット
 この連休、上野でフリー・チベットチラシを配ってくださった方、ありがとうございました。チラシを受け取ってくださった方の中から、一人でもチベットについて知って下さる方がでてくれば、それだけチベット文化が存続する可能性が高まります。

 六十年前国際社会の「無関心」がチベットを滅ぼしたが、今度は「知ること」によってチベットは救われる。

 インド独立の父ガンディーですら、若い頃はロンドンでイギリス人になろうとしていたが、ロンドンでインド文化への高い評価をしって、自国文化の素晴らしさにめざめて、後半生はルンギー一丁である。

 中国がチベットで行っている同化政策はたしかにヤバイが、先進各国の知識人がチベット文化の価値を鼓吹しつづけることで、道義的に勝利し続けることで、いつかは必ず結果はでる。この利他の文化を失うことは、人類にとってすごいマイナスになるので、人類への貢献ともなる。

 というわけで、今、出版社にはいった某卒業生のたのみで「西洋人はいかにチベットと出会い、チベットがいかに西洋に舞い降りたのか」みたいな本を書いている。そのため隠者状態で一日のうち接する人は鳥と猫だけ(人じゃないだろ!)。

 そろそろ覚りが開けそうです。

 でいろいろ調べていて気がついたのだけど、西洋社会でチベット仏教を理解し、支持しているのは、もっとも知的な層。精神的に貧困な人にはチベットとかダライ・ラマとかは向いていない。

 それはチベット仏教が高度に知的でかつ倫理的な体系であるため、倫理的なものに興味のない人、ある枠組みの中でしかものが考えられない硬直化した人にはそもそも理解できないから。

 若き日ダライ・ラマは西洋の文化、とくに科学に強い興味を示し、仏教思想が長い伝統の中で得てきた意識や存在に関する哲学が、物理学や生化学、心理学などの説明とどこまでかみ合うのか、また、どこまで検証できるのかについて知りたがった。

 キリスト教は聖書の文言を科学はむろんのこと他のジャンルの思想と比較・検討することに消極的であったことを考えると、ダライ・ラマの柔軟性は際だっている。そして、ダライ・ラマはそれからも多くの著名な科学者たちと対話していく中で、多くの点について科学と仏教思想が矛盾しないことを見いだし、さらに、宇宙や世界の形などについて仏典と科学が矛盾する点については、あっさりと仏典の記述を捨て、科学的な世界観を受け入れた。

 ダライ・ラマのこの柔軟な知性と合理性は、チベット仏教がもともとあらゆる角度から徹底的に議論をつくして思想を形成する伝統からでてきている。仏教では、意識や存在のあり方を観察する場合も、あらゆる点で矛盾の生じないような論理的な論証が要請される。つまり、科学者も仏教者も実在に対するアプローチ法はほとんど変わらないのだ。

 ダライ・ラマはさらに、ビジネスマン、エコノミスト、俳優、アーティスト、王族、など様々なジャンルの人々との対話を通じて、西洋社会へのあらゆる分野における知見を広め、同時に対談相手を敬服させ魅了していった。1992年には、これらの人脈の集大成ともいえるノーベル賞受賞者を始めとするそうそうたる名士たちが、チベット百人委員会 (committee of 100 for Tibet)を構成して、チベット人の行う非暴力闘争を支持し、チベット問題を啓発する活動を行っている。

 仏教という伝統的な思想の体現者でありながら、科学者や哲学者とも対等に語り合う先進的な知性を兼ね備えたダライ・ラマは、今も洗練された知性をもつ階層にファンを増やし続けている。

 こうして、ダライ・ラマは、工場で作られる大量生産品や、一瞬に消費されるチープな消費財とはまったく逆の、時間をかけて作り出される上質で洗練された文化のアイコンとなった

 これまでこのブログでも紹介してきたように、ダライ・ラマがヴォーグの特別編集長、アップルの広告、チャールズ皇太子の熱帯雨林プロジェクトといった、先進的で知的な層に向けての広告に登場し続けているのはそのせいである。

 もう一つ興味深い例を挙げよう。

 2008年、北京オリンピックで中国がチベット問題に神経をとがらせていた際、日産自動車はリチャード・ギアをCMに起用することを取りやめた。ギアがハリウッドでもっとも熱心にダライ・ラマのサポートを行っていたからである。

 しかし、イタリアのフィアット社はあえてギアを起用し、そのうえその映像の中でチベットを支援することをはっきり表明した。CMでは、ギアがハリウッドの中国人劇場(笑)の有名なセレブの手形広場前から自分の手形を踏んづけて、フィアットのランチアにのって走り出すと、いつのまにか車窓からポタラ宮が見えチベットについたことを知る。ギアはランチアからおりてチベットの少年僧とともに雪の上に手形を残す、というものである。

 フィアットは中国から得られる目先の利益よりも、チベットの高潔な理念を支援することによって得られるものを選ぶ、という姿勢を示して高級車ランチアのイメージを巧みにアップさせたのである。と同時に、この映像にはもっと深い意味が隠されている。ハリウッドからチベットへの移行は虚栄から深い精神性への移行、石の手形からはかなく消える雪の上の手形への移行は、なんでも石に刻んで後世に残したがるごり押し西洋文明から、なにごとも依存性の中にあるがゆえに実体はないとするチベット思想へのシフトを示している。どうだ、ここまで読み取れた人は、立派なフリー・チベット・ファイターだ!

 こう考えてみると、日本でフリー・チベットが先進各国でもっとも遅く現れはじめたのは、日本人の一部にようやく欧米並みの「自分に厳しい自立した自我をもちながら、かつ、世界に関わる」知性がようやっと生まれて始めてきたということかしら。

 まあ硬直化した思考で相変わらず、農奴だ封建領主だいうてはる人は今もいるけど、どこの国でもあのタイプの人は一定数いますから。合掌。



 このブログに来て下さる方はみな意識が高いので、できるだけチベットのことを何もしらない素人さんに来ていただこうと、朝日カルチャーさんに集客をお任せしたら、現時点で10人(笑)。なのでもう素人さん集めるのは諦めました(前置きながっ)。
  朝カルで上野のチベット展の解説します
  時 10/10, 10/24, 11/7(土) 15:30-17:00 全3回
  場所 朝日カルチャーセンター横浜(横浜駅ルミネ)
 
興味のある方、詳しくはここクリック!

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COMMENT

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● チベットに関する日本の知識人の認識レベル。
米太郎 | URL | 2009/09/24(木) 10:06 [EDIT]
しかし、すでにYouTubeの映像をご覧になっていると思いますが、上野の森美術館の関係者が「チベット人は存在しない」とチベット人女性に言い放った件を見ると、(日本の)知識人、特に「中国通」、「アジア通」を自負している(?)、自称知識人らのチベットに関する認識は、かえって市井の人々よりもレベルが低いのではないかと、今回の件を見て大いに危惧しています。

シラユキ | URL | 2009/09/24(木) 10:15 [EDIT]
>米太郎さん

あの人はビジネスマンであって、知識人じゃないすから。

米太郎 | URL | 2009/09/24(木) 13:27 [EDIT]
ま、「知識人」をどう定義するかによりますね。しかし、フィアットの広告を制作したのはビジネスマンたちでしょ。リチャード・ギアも俳優ながら問題意識を持っている。一方あの暴言を吐いた御仁も、ビジネスマンとはいえ、仕事で中国と関わりを持っているんでしょう。ひょっとすると実務的な知識は学者先生より豊富かもしれない。そんな人ですら、ああいう発言を平気でしてしまうレベルの低さを考えると、やはり日本の知識人全体のレベルを疑いたくなっちゃう。それに、そもそも展示の企画やマスコミ対応をああいう人に一任してしまう美術館の館長や学芸員らの「知識人」らは、もっと問題ありかな。

シラユキ | URL | 2009/09/24(木) 13:46 [EDIT]
>米さん
おっしゃることはいちいちごもっとも。でも、個人攻撃はあまりしない方がチベット・イメージにいいかも。日本人の無知無関心、自称知識人のだめさ、とかもっとバクゼンとした表現にした方が品がよろしいかも。
● 録画しておいた音楽寅さんを観ていたら
モモ@八尾 | URL | 2009/09/25(金) 02:17 [EDIT]
あの桑田圭佑さんが
「紅の旗がひらめく巨大帝国のシンボルが
かの国の統制の下涙溢れる民族」と唄っていました。
良かった、この国の芸能にはまだ自由が残っているし、
低脳芸能人ばかりでなくて意識改革を出来る人も
いるんだなーとちょっと感動。

やまだ | URL | 2009/09/25(金) 17:31 [EDIT]
お久しぶりです。(って、覚えていらっしゃらないと思いますが・・w)
コメントは久方ぶりですが、blogは目を通しております。
自分が知識人がどうかは別として、今回のblog、特に「若き日ダライ・ラマは西洋の文化、とくに科学に強い興味を示し、仏教思想が長い伝統の中で得てきた意識や存在に関する哲学が、物理学や生化学、心理学などの説明とどこまでかみ合うのか、また、どこまで検証できるのかについて知りたがった。」の件は興味深かったです。
昨年、トンレンを知り、そこから個人的に調べていくと、「チベット仏教と神経科学の融合」についてのサイトに辿り着き、その研究者である大学教授とダライ・ラマとの間に親交があることを知りました。
ダライ・ラマの柔軟な知性と合理性に深く感銘し、科学とチベット仏教の深い地での接点と融合性においても(表現が間違いかもしれませんが)ワクワクしたことを思い出します。

改めてこの思いを認識したblogでした。
(長文失礼しました)

「チベット仏教と神経科学の融合」についてのURLを貼っておきます。
http://wiredvision.jp/archives/200207/2002072507.html
● フィアットのCM
dorje | URL | 2009/09/27(日) 15:57 [EDIT]
ご紹介のCM、40秒ほどの短い時間にもかかわらず濃い内容で、niceと思ったのですが、後にフィアット社は中国に対して謝罪しているのですね。(以下のリンクで記事を紹介しています)

http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20080621-374547.html


少しがっかりしました、、、

シラユキ | URL | 2009/09/28(月) 20:47 [EDIT]
>モモさん
そいうえばクワタって一番最初に中国でコンサートやった人だったよね。故宮でやったんだっけ。

>ヤマダさん
そのサイト面白いですね。またきがむいたらカキコしてください。

>dorjeさん
そうですか。フィアットあやまってるんですか。考えようによっちゃ、あやまっておわりなら、やっちゃったもん勝ちですね。
● 私は決して知的な人間ではありませんが,
jiro.siwaku | URL | 2009/09/30(水) 20:14 [EDIT]
ダライ・ラマ法王さまは大好きですし,

チベット人とチベット仏教は凄いと思います。

<High Noon - The Original Train Sequence>
http://www.youtube.com/watch?v=IKx6MUH6sEM

<HIGH NOON 1952 ! MOVIE !>
http://www.youtube.com/watch?v=GMu0Wd5-wM4

<HIGH TECH NOON>
http://www.youtube.com/watch?v=w1m44VNw3O0

jiro.siwaku

シラユキ | URL | 2009/09/30(水) 23:40 [EDIT]
>jiro siwakuさん
法王様が好きなら、十分知的で、魂がきれいですよ。
そして心が健康!
● 桑田圭佑
モモ@八尾 | URL | 2009/10/01(木) 03:26 [EDIT]
多分彼は彼なりに勉強されて
こうういう歌詞を作ったんだと思います。
北京での時はまた、自由と民主主義を
ロックの形で表す意思表示だったのではないでしょうか。
「ヨイトマケの唄」なんかをライブの途中で歌ったり
していますからねぇ。
ワタシが桑田氏のファンから贔屓目になっちゃうのかな?

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