白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2010/01/05(火)   CATEGORY: 未分類
NHKの五台山
 NHK(総合)の『世界遺産への招待状』という枠内で4日の22:00に五台山を放映した。五台山といえば中国仏教の聖地として名高いが、満洲人が中国を征服して清朝を建てた後は、彼らがチベット仏教を信仰していたため、チベット・モンゴルと中国との境界にあるこの五台山は、チベット仏教徒が多く居住していた。清朝末期の1908年にダライ・ラマ十三世にあうためにこの地を訪れた寺本婉雅が

「現在五台山中、青衣派(中国仏教)に属するもの二十三ヶ寺、喇嘛教(チベット仏教)に属するもの二十五六寺という。」といいまた、五台山の中心にある寺院、塔院寺ですら
「総て殿内の荘厳は喇嘛教式に化せり。供物香華悉く喇嘛教にして西藏と異なることなし。」(寺本婉雅『藏蒙旅日記』)
といわれるくらい、早い話は、ここ数百年五台山は中国仏教の勢力は微々たるもので、チベット仏教一色になっていたのである。

 ちなみに、1908年になぜダライ・ラマ十三世が五台山にいたのかというと、1904年のイギリス軍のラサ侵攻を受けて亡命中だったため。ダライ・ラマ十三世は五台山においては清朝皇帝が五台山に巡礼したときに滞在した行在所、菩薩院に居を構えていた。つまり、清朝皇帝と同じ格式でもてなされていたのである。

 今も五台山にはチベット仏教徒は数多く修業や巡礼目的で住んでおり、レコード・チャイナのお手盛り観光情報にのっとっても、チベット仏教の仮面舞踊などが行われているという。

 なので、当然チベット仏教の露出があるだろうなー、と思ってちゃんねるを合わせてみた。で、結果である。まあ期待していなかったが、チベット仏教の扱いは実にトホホなものであった。

 まず、客観的に番組の構成をおってみよう。

・五台山の概説。中国仏教四大聖地のうちの一つで一番栄えていて、日本や朝鮮かなどの僧侶もかつて巡礼に訪れたと説明。

・そうしてここで修業を行う中国仏教僧の話がえんえんと流れる。しかし、お堂にはチベット仏教の祈りの旗タルチョーがばたばたはためている。チベット人はいるはずである。いるはずなのに、フレームインしてくるのは中国僧ばかり。

・ナレーションは経済発展で居場所をなくした若者たちが、多く出家をするため、僧侶の数は増えている、と伝える。

・で、男女の中国僧と一人のチベット僧(民族的にはモンゴル人だけど)に焦点をあてる。

・中国僧(男)は三歳で父親が病死し母親は再婚して彼を捨て、世の中の汚さから逃れたくてここにきた。ここにいると家にいるようだ、という。彼は五台山で一番自然条件の厳しい西台の冬越しに今年はチャレンジするという。

・中国尼僧(女)はもと美容師で道を外れたことをしたことがあり、善い人間になるために出家したという。過去の過ちを仏様の前で悔いて戒律をまもった質素な生活を送るところはとても好感が持てる。

・とここまで中国僧の話がこれでもか、とでたところで、次に五台山には外から巡礼や修業にきた雲遊僧がいる、というつながりで、チベット僧(男)の紹介がなされる。彼は今は廃墟となったチベット寺天城寺(調べてみたらチベット名lha mkhar dgonだった)を再興するべく、どこのお寺にも属さず間借りをしながら、日夜住職にふさわしい器になるために修業をしながら、資金援助を申し出てくれる人がでてくるのを待っている。


・ナレーターによると彼の名はカクサンカイビ(格桑戒美)。あのね。これチベット名に漢字あてただけなんだから、それを日本語で訓読しても意味ないでしょ。チベット名でケルサンジクメは無理でも、せめて現代中国語で発音してやってくれ。で、このケルサンジクメさんは家族から還俗してくれ、体が心配だ、と頼み込まれていた。

 で、ここで、近代化の中で傷ついた人を五台山は広く受け入れている、で、番組は終わり。

 これを見た限りでは五台山は中国仏教の山で、チベット僧は外からやってきてたった一人で孤軍奮闘している遊行僧のみ、と見える。じゃあ、いろいろなところではためているタルチョーは誰がつけたのかしら? 仮面舞踊をやってるお坊さんはどこにいるの? 

 かつて、戦中に五台山を訪れた日々野丈夫センセは『五台山』の中で、五台山はチベット仏教の山になってしまった、と書いているけど、NHKさんによると、今は近代化に傷ついた若者を癒す中国仏教の聖地になっているらしいですね。

 で、これは聞いた話ですが、とある日本人が2007年に五台山を訪れた所、チベットの僧侶がたくさんいました。で、その翌年2008年にオリンピックイヤーのチベット人蜂起がありました。そしたら、同年6月に五台山を訪れたら、チベット人の姿が見えなくなっていた、ということです。何でもお寺に属していないチベット人はみな帰れとかいう当局命令がでたとか。

 で、NHKが取材したの去年(2009年)は当局によるチベット仏教徒に対する締め付けが健在であったため、チベット人がまったくフレームインしていなんじゃないの? で、このケルサンジクメ氏も外からきて、いつ追い出されても仕方ない雲遊僧ということを明記してやっと、放映が許されたんじゃないの?

 この番組は世界遺産の招待状と銘打っている。五台山の建物の多くは清朝皇帝の寄進によって建てられたもの。清朝時代の話ぜんぜんでてこないのも、チベット仏教の話がでてこないのもおかしいんじゃないですか。
 それから、ここは仏教の聖地なのに文殊信仰もほとんど説明なし。典拠となった華厳経も紹介されず、日本人留学僧の話も円仁くらいしかでてこず。
 つまり、教養レベルは非常に低い番組といえる。
 世界遺産の現在性を伝えるという意味では一定の役割を果たしているが、チベット仏教徒から信仰の自由を奪っているという、一番の問題点を報道できいないので、これもかなり空気が抜けている。

 ので、結局はただの観光案内番組ということで、これでは皆様のNHKのカンバンが泣くのではないか。
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COMMENT

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● やはり・・・。
まぶー@護国寺火消し | URL | 2010/01/07(木) 01:10 [EDIT]
あのタルチョの数はすごかったのでもしや!っと思いましたが
そう言うことだったんですね。。。

かくさんかいびさんはちょっと笑っちゃいました。
ケルサンジクメさんなんですねぇ。。
● やはり、やはり・・・。
けい@Free Tibet(火消し見習い) | URL | 2010/01/07(木) 01:42 [EDIT]
この番組、たまたま見てたんですが、最初の方で「なんか違う…」と思ってチャンネル変えちゃいました。そういうことだったんですね。。。
● NHKも中国には勝てない
モモ@八尾 | URL | 2010/01/07(木) 16:08 [EDIT]
泣く子と中国には勝てない日本。
あまりにもマスコミは弱腰すぎるのでは。
新年早々喘息とインフルエンザを併発し、
救急車で運ばれ今まで隔離されていた私です。
この際、お酒に続いてタバコもやめようと思います。

シラユキ | URL | 2010/01/10(日) 01:00 [EDIT]
>まぶーさん
五台山は日本仏教の様々な宗派の故郷でもあり、ちゃんと紹介すればいい番組になるのに、チベットも、伝統仏教もすっぽぬけた半端な内容でした。

>けいさん
 23才の綺麗な尼さんが、仏様の前で自分がいかに間違った生き方をしていたかをザンゲするのはなかなか見応えありましたよ。チベット仏教紹介はまったく不完全燃焼でしたが・・。

>ももさん
ゼンソクとインフルって確かアブナイ組み合わせであったような・・・。新年早早、難儀でしたね。ゼンソクを抱えていらっしゃるなら、確かにタバコはやめた方がいいですよ。オカメインコのモモちゃんにも悪いし。

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