白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2010/02/08(月)   CATEGORY: 未分類
ナショナリズムの陥穽
朝青龍が引退をしたことにモンゴル人が大怒り。その論調は限りなくナショナリスティック。
「日本は思い通りに朝青龍を使い捨てにした」
「日本人は伝統的なスポーツの頂点にガイコクジンがいるのが気に入らないのだ」。
日本にもひいきを引き倒す大衆が一定数いるが、モンゴルも同じだな。

 朝青龍が外国人だから問題になったのではありません。嘘をつく、酒癖が悪い、暴力的、そこが問題になっているのです。問題すりかえないで。

 朝青龍はモンゴルでは英雄なので引退後はモンゴルの大統領もねらえる、とのことだが、嘘ついて公務を休んだり、泥酔して人をなぐったり、他人の国の文化を踏みにじる人が、大統領になってそれがモンゴルにとっていいことなのか。

 隙だらけになってどことを言わないが隣の国に制圧されるよ。

 こういう騒動を見ていると私は昔を思い出す。昔といっても歴史家なので自分が専門とする18世紀である(笑)。

 18世紀初頭、ダライ・ラマ七世を御輿に奪い合って、青海ホシュート、清朝(満洲人)、ジュンガル三者が争った。ホシュートとジュンガルはチンギスの血筋ではないがモンゴル系の言葉をしゃべる部族である。結局1720年に、青海ホシュートと清朝が連合して、ダライ・ラマ七世を即位させて状況が落ち着いた。その時、清朝は伝統的にダライ・ラマの大施主の座にいたホシュートをたてて、青海ホシュートの誰がチベット王(王といってもチベットではダライ・ラマの下)の地位にふさわしいかを現地の官僚に観察させた。

 その報告書が残っているのだが、これが大笑い。リストにあがる人とにかくみな酒癖が悪い。乱暴で、その描写がいかにも細かいのなんのって。で結局清朝皇帝
「ホシュート王家の誰にまかせても不安」
ということで、地域の安定のためにホシュート排除することを決め、かくして1723年にホシュートは清朝に制圧されて清朝内部に組み込まれたのである。

 歴史に「もしも」はタブーだが、ホシュートに一人でもまともな人がいたら、清朝皇帝は伝統に則ってホシュートにチベット王の座を返したろう。

 モンゴル基準では酒飲んで豪快に暴れ回るのがアリだとしても、それで国際社会を乗り切れるかっつーと、はなはだ疑問。ちなみに、中国よ、アンタにも、なにもかも自己中心的に考えて他者を排除する中華思想があるが、これも国際社会で通用しないよ。

 つか、通用した瞬間に世界が終わるわ。

 国際的に通用する、人種も国境も宗教もなにもかもこえて通用するアジアのリーダーと言えばダライ・ラマ法王である。ダライ・ラマがいかに普遍的であるか、昨今のネタとしてはハイチ地震に対する法王の対処があげられる。

 ダライ・ラマ法王はハイチ地震の被災者に対して哀悼の意を表し死者のために祈りを捧げ、さらに、20万スイスフランを国際赤十字社および赤三日月社を通じて寄付した。

 赤十字とはご存じ1901年の最初のノーベル平和賞受賞者であるアンリ・デュナンによって創設された、敵味方、国籍関係なしに治療をする国際医療機関である。二つの大戦を通じてノーベル平和賞該当者ゼロの年がつづいた時も、国際赤十字は二度も受賞をしている。また、日本では皇后様が名誉総裁を務めていることからも分かるように赤十字は非常に毛並みのいい歴史ある人道団体である。

 で、十字マークはキリスト教のシンボルなので、イスラーム諸国で活動する医療団体はイスラームのシンボル三日月を赤くして、赤三日月社という。つまり、ダライ・ラマがこの二つの機関を通じて寄付するということは彼の宗教・文化に対する偏りのなさをよく示している。

 じつは、法王はこの地震に限らず、世界中のありとあらゆる災害の被災者に対してメッセージを発している。そればかりではない。独裁政治の被害者である劉暁波、アウンサン・スーチー氏らに対しても自分は味方であるとはっきり態度を表明し、宗教、国家、人種、体制の違いをこえて普遍的な愛を発信してきた。

 特定の国や民族の利益を声高に叫ぶナショナリズム、特定の宗教の立場から他者を攻撃する宗教原理主義、特定の境遇にある集団の権利を叫ぶ人々、これらの人々は自分の延長にあるものに対して権利を主張しているであって、他の人々の幸せはよくて無関心、悪くて敵対するようなスタンスをとる

 ダライ・ラマもチベット難民社会も我々が陥りがちなこのようなエゴの陥穽にまったくおちていない。チベットの文化がいかに愛すべきすばらしいものかこれ一つとっても明かであろう。

 聞くところによるとハイチは国はあるものの19世紀初頭の独立以来ずーっと紛争続きである上、今回の地震が首都を直撃したため、国家の体をなすことすら難しい状態だという。そいえば、前に北の将軍様のご長男、キムジョンナムが東京ディズニーランドに遊びに来た際に(笑)携帯していたパスポートがドミニカ共和国だった。このドミニカ共和国ってハイチの陸続きの隣。ドミニカもハイチもこんなカンジでほいほい偽造バスポートを出すので不法移民の中継国となっている。

 震災直後、老人や女子供をどつきとばしてハイチの男たちが支援物資を奪い合っている映像を見て、「うわっこの国だったら、チベット難民社会の方がはるかに秩序もあるし人間性も豊かだわい」と思ったが、法王がハイチに寄付するのを見てさらにその感を強くした。

 法王は難民である。

 ご自分の民も困っておられるのに、さらに弱いものがいると聞けば手をさしのべるのである。それを行う法王に対して難民社会も「人にやる金があるならオレたちにまわせ」とかエゲツナイことを言ったりしない。法王を心から敬愛しているし、法王のつくった学校で「自分より他人をまず思え」というモットーを子供の頃から教えこまれているからである。

 若い男が女子供をどつきとばしているところをみると、ハイチでは教会も学校も国民の教育に成功していない。ハイチには国民の手本となって善行を行うような人もいないのだろう。この事件で思い出すのが、2002年に北朝鮮の若い夫婦と幼い娘が日本総領事館に駆け込み亡命を図ろうとした事件。一部始終は領事館の監視カメラが記録していた。これによると、奥さんと小さな娘が中国の警察につかまって子供は火が付いたように泣いていたのに、父親は後も振り返らず自分一人だけ領事館にダッシュで駆け込んでいった。

 この場合、子供を抱いて走るのはダンナの役だろう。また、女房子供がつかまって泣き叫んでいたら戻って戦うのが父親のつとめだろう。よくほっとけるな。これみて「ああ、北朝鮮って本当にひどい国なんだなあ」と思った。

 でも日本だって程度の差こそあれ、自分のことしか考えない人はいるだろう。だから、それの陥穽に陥らないように、人がやっててみっともないと思うようなことを自分がしていないか、常に自己ツッコミをいれながらチェックする。そして、人がやっていてすばらしいと思うことは、いつかは自分もそうできたらと思えるようにする。

 そうすることの積み重ねが、諸方に通じる人格を作り上げ、その集合体としての日本が、世界から愛される国、尊敬される国になることにつながっていく。

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| | 2010/02/08(月) 18:07 [EDIT]
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● 赤十字について
宰相 | URL | 2010/02/08(月) 19:26 [EDIT]
赤十字の歴史は20世紀どころではなく、きっかけは、直接的にはイタリア統一戦争(1859)、さらに言えばクリミア戦争(1853、のナイチンゲールの活動)の悲惨さに衝撃を受け、アンリ・デュナンの手で作られたと聞いております。
 ちなみに、イタリア統一戦争で、同様に悲惨さにショックを受けたナポレオン三世は、それ以降、表立って戦争を起こすのを止め、裏から操るほうに廻ったとのことです。小沢みたいなオッサンですな。

| URL | 2010/02/09(火) 18:43 [EDIT]
>Sさん
夏みかんありがとうございました。マーマレードにします。

>宰相くん
なおしときました。1901年のノーベル賞がアンリ・デュナンだったんでなんとなーくああ書いたの。
● おひさしぶりです
茂一 | URL | 2010/02/12(金) 11:59 [EDIT]
節操があり、思いやりのある自分にまず
ならなくては、と思いました。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
先生とみなさんのご多幸とご健康をお祈りいたします~。(笑)



シラユキ | URL | 2010/02/13(土) 14:00 [EDIT]
>茂一さん

ありがとうございます。私はつねに元気ですが、学生はちょっと元気がないので、お祈り嬉しいです。茂一さんも今年一年いいことがありますように。
● グシ・ハン一家
てづか | URL | 2010/02/23(火) 00:40 [EDIT]
この人たちが、もっとしっかり一族なかよくしてたら、チベットの運命、ガラッとかわってたのに……とつくづく思います。

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