白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2010/02/27(土)   CATEGORY: 未分類
分断を癒す
 三年ゼミ生のK山くんがツイッターで、「センセ、映画『インビクタス』いいですよ。見て感想きかせてください」と言うものだから
 私「おお、行ったろうやないか」
 というわけで、見に行きましたインビクタス。
 ちなみに、なぜこのような会話がなされたかというと、自分非暴力の歴史を講義していて、そこで南アフリカについても扱っていたから。

 自分の南アの講義には、デンゼル・ワシントン主演の「遠い夜明け」(Freedom Cry)、マンデラの九十才記念につくられたジョセフ・ファインズ主演の「マンデラの名もなき看守」のハイライトは解説されるわ、ピーター・ガブリエルのBekoが流れるわ、私の授業はホワイト・リベラルまるだしである。やーねー。

 なので、クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマン主演、マット・デイモンもでているとあれば、ホワイト・リベラル思想が満載と思われるため「インビクタス」を見に行くわけである。

 時代は1995年、マンデラが初の黒人大統領に就任した時点からはじまる。彼が大統領につく前の南アにおいては悪名高いアパルトヘイトが行われていた。

 アパルトヘイトとは、入植してきた白人が南アの政治・経済をにぎり、先住民の黒人たちは居留地に隔離し、その居留地を「外国」ということにして、彼らに移動の自由を与えず、白人と有色人種との混血も法的に禁止していた。

 なんでそんなことするかというと、民主主義で選挙やると圧倒的多数の黒人が政権とってしまうから。一割の白人が広大な敷地の豪邸にすみ、黒人はスラムの居留地から白人の世界に働きにでてメイドや庭師や単純労働について暮らしていくのである。ははは。

 で、結局欧米の経済制裁にたえられず、1991年だっけ? にデクラーク大統領が23年間監獄にほりこんでいた黒人の指導者マンデラを釈放して、アパルトヘイトを廃止して、黒人と手打ちして、1995年にマンデラが大統領についたわけである。

 余談であるが、アパルトヘイトの最中でも日本は「名誉白人」として南アと取引ばんばんしていました。今もビルマとしているし。日本人の多くはこういう時、理念よりも秩序が大事、無学な黒人の群が政権とるよりも、白人とおつきあいする方がらくだわ、と思うみたいね。でもね、それって時代劇で悪代官とか悪大名とつるんでいる御用商人、越後屋の役回りを国際社会でやっているということを忘れないでね。

 ビジネスがやりやすいか否かで政治をしゃべる人を見ると、「そういうことは人前でいっちゃいけないんだよおおおお。」といつも思う。よく考えて、あなたは倫理より金が大事って公言してるのと同じなんだよ。そういうことは威張っていうことじゃないんだよ。

 話を戻します。モーガン・フリーマン演じるマンデラは、とても知的な男。なんたってこの人23年の囚人生活で囚人仲間を知的に教育し、最後は無学な看守までファンにしたという経歴の持ち主。人の心をつかむのがうまい。

 まず、就任の日に、大統領府の白人の職員たちが荷物をまとめて去ろうとしているのをみて、「もし私があなたたちに報復しようとすると思っているのであれば、そのようなことはありません。新しい国を作るためにみなさんの力を貸して下さい」と頼む。

 あまつさえ、自分のSPに元公安の白人を指名する。公安はついこの間まで黒人をガチで殺しまくっていた白人支配の牙城である。今の中国と同じで南アでは投獄された黒人の死亡率が異常に高い。表向きは病死とされているが、本当の原因は拷問である。

 つまりマンデラは自分の身が白人と黒人のSPに守られていることを国民にみせることによって、新しい国は白人と黒人が協力して作るものであることを示そうとしたのである。普通だったら、元公安のSPなんて毒盛られそうで怖いところを、SPにしちゃうところが、マンデラのブレイク・スルーなのである。

 で、その年、南アはラグビーのワールドカップの主催国であった。南アのラクビーチーム、ボカは一人の黒人を除いてオール白人。応援するのも白人なので、黒人はボカを自分たちの国のチームと考えることができず、ボカの対戦相手を応援する。チームも弱くて士気は最低。

 このような状況を見たマンデラは、このよっわいチームをなんとかすることにより国民に元気をつけさせようとする。

 勝ちに乗じた黒人たちは、このラグビー・チームのユニフォームやシンボルをアパルトヘイトを象徴しているとして、新しい国のものに改めさせようとするが、マンデラはその決議の席にのりこんで、白人と黒人の対立をあおるようなことはやめるように説き伏せ、結果、僅差で変更は取り消しになる。

 ちなみに、こうやってマンデラがラグビーのために奔走するといくつかの公務は欠席するはめになる。こんな時、すっぽかされるのが日本と台湾なのには笑った。これは欧米がアパルトヘイト時代に経済制裁に加わらなかったアジアの国々にイヤミをいっているに違いない。水戸黄門がでてくると越後屋はお仕置きされるのである。

 で、大統領の女性秘書官に「今は黒人が多数派です。白人に気を遣うことはないのでは」と問われると、マンデラは「今もなおこの国を動かしているのは白人だ。彼らの助けなくしては、国は動かない。」と答える

 で秘書官が「じゃあそれは政治的な計算(political calculation)ですか?」と聞くと、マンデラふふっと笑って
 「いや人間的な計算さ(human calculation)」と答える。この言葉の持つ意味は徐々に見えてくる。

 そいでマンデラはラグビーの主将のマット・デイモンを大統領府に招いて、自分が牢獄で勇気をもらったというヴィクトリア朝期の詩をたくす。

 それが、「インビクタス」。内容がこれまた泣ける。


 私は今ぼろぼろである。状況も絶望的である。だけど、神は私に「負けない魂」をくれた。それを神に感謝したい。私の頭は血だらけだけど、まだはいつくばッてはいない。私は自分の運命の主人である。私は自分の魂の船長である


 ええわあ。マンデラはこの詩によって、牢獄にあっても、自分は獄につながれていようとも、魂は自由であること、自分の主人は自分であることを再確認していたのである。

 ちょっと断っておきますが、これロードショーなので全部記憶で書いてます。つまり、いい加減なので、正確に知りたい人はちゃんと見に行ってください。

 で、マット・デイモンはマンデラの知的な人柄にふれて、いままでの自分がもっていた、黒人に対する偏見を改める。そして、マンデラの意をくんで、貧しい黒人の子供たちにラグビーを教えにいったりする内に、ボカは徐々に南アの白人だけではなく、黒人にも愛されるチームになっていく。

 選手たちも、最初はやる気ナッシングだったのだが、だんだん変わってくる。そしてチームの士気が上がり、なぜかワールドカップで勝ち進んでいき(開催国で時差がないからかな 笑)、強いと自然と国中の声援をあびるようになってくる。
 
で、とうとう優勝しちゃうのである。
その瞬間、黒人も白人も一緒になってだきあってその勝利を喜ぶ 。
 マンデラの「人間的な計算」が正確に機能したのである。
 長年にわたるアパルトヘイトによって生まれた白人と黒人との間の分断をマンデラはラグビーを通じて癒し、一つの国にしようとしたのだ。
 まさに「分断を癒す」(Healing divide)。同名の財団をリチャギが運営していたわね。
 分断した互いが罵り合うのをやめて、互いを排除しあうのをやめて、互いの独自性を認めて平和に共存すること、黒人と白人に一つに国に属しているという感覚を持たせること。そうすることによって、黒人には白人に対する報復をやめさせ、白人には新しい国家の運営に協力させ、混乱が起きないようにマンデラははかったのである。

 で、エンディングもやってくれます。

 ここでは、ワールドカップの主題歌、「世界は一つ」が流れる。メロディーはあのジュピター。この名曲をポップスにしたのは平原綾香が最初かと思ったら、ぜんぜんこっちの方が早いし、内容もええ。

 この曲は、異なった信条、異なった肌の色があろうとも、それぞれを尊重しながら連帯する世界、「一つの世界、一つの心」を歌ったものである。

 ここでいう「一つの世界」は二年前のクサレ●京オリンピックの漢人スローガン「一つの世界」とはまったく似て非なるものなので、頭の煮えやすい方は気をつけてね。マンデラの一つの世界と、胡錦涛の一つの世界の違いがよく分からない人は、もっと教養をつんで自分の心を見つめてください。



 World in Union 連帯する世界

There's a dream 夢がある
I feel so rare, so real めったにないことだし、でも現実になると思う。
All the world in union  それは、全世界が連帯すること
The world as one 一つになること。
 
Gathering together みなで集まって
One mind, one heart心を一つにし、ハートを一つにする。
Every creed, every color あらゆる信条も あらゆる肌の色も
Once joined, never apart いったん連帯したら、もう離れることはない。

Searching for the best in me 私の中にあるもっともいいものを探しながら
I will find what I can be 私は自分がそうなれることに気づく。
If I win, lose or draw そうしたら、勝っても、負けても、引き分けになっても
There's a winner in us all みんなが勝者。

It's the world in union 連帯する世界
The world as one 一つの世界
As we climb to reach our destiny われわれは運命に向かってのぼっていこう
A new age has begun 新しい時代が始まる。

We face high mountains 高い山をこえねばならない。
Must cross rough seas 荒れた海をわたらねばならない。
We must take our place in history われわれは歴史を考えねばならない。
And live with dignity そして尊厳をもって生きねばならない。

Just to be the best I can 可能な限りいい人間になること。
Sets the goal for every man それはすべての人にとってのゴール。
If I win, lose or draw そうしたら、勝っても、負けても、引き分けになっても
It's a victory for all すべての人は勝利する。

It's the world in union 連帯する世界
The world as one 一つの世界
As we climb to reach our destiny 我々は運命へと昇っていく。
A new age has begun 新しい時代が始まる。


 ちなみに、南アの現実は厳しく、失業率、犯罪率が高止まりなままのは周知のとおり。今の大統領なんて本当にトホホで、南アが今後どうなるのかは微妙である。南アはその悲惨な歴史のツケを今払っている。しかし、歌詞にもあるように、「勝っても、負けても、善い人間になろうとする努力をやめない限り、みなは勝つ」のである。諦めた時が本当の敗北なのである。善い人間になることを諦めて、犯罪に走っているような愚民を教育して、南アよ、善い国になってくれい。
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| | 2010/03/02(火) 17:37 [EDIT]
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カルマ・フォーチュン(♪♪) | URL | 2010/03/03(水) 10:25 [EDIT]
話し飛びます。すみません。
名古屋ビルヂングとその周辺のビルが、建て直されるそうです。
(なくなるの、はやいなぁ。もう、築50ねんかぁ。)
http://news.1730.jp/2009/12/16/1009/
第名古屋ビルヂング・詳細↑

http://www.asahi.com/business/update/0224/NGY201002230028.html
松坂屋名古屋駅店のニュース記事↑

シラユキ | URL | 2010/03/04(木) 17:56 [EDIT]
>sovaさん
ごろうちゃんページならびに『ツォンカパ伝』読んで下さってありがとうございます。「未知踏進」という展覧会は大阪なのですね。ドルポは私は行ったことないのですが、古いチベット文化が残るいい場所です。

>カルマさん
大名古屋ビルヂングがとうとうなくなるのですか。名古屋駅前の名所だっのに・・・

カルマ・フォーチュン(♪♪) | URL | 2010/03/05(金) 08:30 [EDIT]
同感です。が、老朽化には、耐えられなかったようです。
でも、東京や大阪からの出張組の中には、あの、派手な丸いネオンサインと、観覧車、大名古屋ビルヂングと書かれた看板を見て、言われたそうです。
「どえりゃぁ、田舎にきてもうた。どなんしょう。」
見栄っ張りが多いから、それを聞いて、
「早よ立替えな、あかん。」
と、言いだすひとが、居てましたで。
震度6弱で倒壊はしないけど、危ないとか遠巻きに聞いたし。
しょうが無いと思います。
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2010/03/06(土) 01:15 [EDIT]
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