白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2010/11/25(木)   CATEGORY: 未分類
ミスター『入中論』
 ゲン・ロサン先生のジャパン・ツアーが終わると、ミスター『入中論』のツァーが始まる。

 ミスター『入中論』、本名ロサン・テレ先生は、今はなきガワン先生の葬儀を主宰された方である。これがチベット的に何を意味するかというと、ガワン先生のやり残されたお仕事はミスター『入中論』が継ぐことを意味する。

 というわけで、生前、ガワン先生が大阪の平岡センセに『グヒヤサマージャ・タントラ』の伝授を行っていたように、今、ミスター『入中論』も来阪されて平岡センセに、同タントラの灌頂の注釈書の伝授を行われている。

 『入中論』という聖典の名前があだなになっていることから分かるように、ロサン・テレ先生は中観思想の名著『入中論』のプロである。

 ロサン・テレ先生は1957年にラサ三大僧院の一つセラ大僧院で出家し(この僧院河口慧海のいたことで日本人にはわりと有名)、その二年後にダライ・ラマの後を追ってインドへと亡命した。難民生活の中でも研鑽を続け、1987年には、博士の最高学位ゲシェー・ララムパ号を獲得した。

 ミスターがいかに有名な学僧であったかについてはこんなエピソードがある。

 ダラムサラにあるダライ・ラマおつきのナムゲル僧院が、南インドのセラ大僧院に対して、指導僧をだすようにとの要請を行った。本来ならミスター『入中論』が右代表でナムゲル僧院に出向すべきところを、ミスター『入中論』をとられるとセラの教育が手薄になるとのことで、次点のお坊さんがナムゲル僧院に出向した。

 ある日ダライラマ法王がナムゲル僧院にこられて「セラからきた僧侶は誰か」と聞くので、「私です」と件の次点僧が答えると、法王「じゃあオマエがミスター『入中論』か」とおっしゃられたので、「いえ違います」というしかなく、結局ミスター『入中論』はナムゲル僧院に出向したという。つまり、ミスター『入中論』の名は法王の耳に届くほど有名だったのである。

 ミスター『入中論』は顕教の哲学を一通り終えたあと、1988年には密教の学堂ギュメにも入り、ここでも位人臣を極め2005年にはギュメの管長にまで上りつめた。つまり顕教を極めただけでなく密教の実践をも極めたのである。ガンデン大僧院の出で、ゲシェ・ララムパ号を獲得し、さらにギュメの管長にまでなったというガワン先生と、キャリア的にはほぼ互角である。

 チベットと言えば、ラマ語りである。ダライ・ラマ法王も自分のラマの話しをする時は、必ず涙ぐむ。幼い頃に出家するチベットでは子供の頃から自分の精神と肉体の成長をみまもってくれるラマは親でもあり、教師でもあり、仏でもあるという超重い存在なのだ。

 なのでここで秀才ミスター『入中論』のラマ、ロサン・ワンチュク師についてエピソードを一つ。

 ロサン・ワンチュク師は1975年くらいにいろいろな僧院に供養を行いだした。このことを聞きつけたダライ・ラマ法王はロサン・ワンチュク師にこういった。

 「お前もうすぐ死ぬ気だろう。今チベットがどういう状態か分かっているのか。お前のような高僧に死なれては仏教界にとって痛手である。もう少しこの世にとどまれ。」とおっしゃった。

 ロサン・ワンチュク先生は「自分の意志で寿命を伸ばせるほどの力がありません」と答えた。しかし、ダライ・ラマは「できるかできないかは聞いてない。もうしばらくこの世にとどまれ」とおっしゃった。するとロサン・ワンチュク先生はその時は死ななかった。

 しかし、1979年にダライ・ラマ法王がヨーロッパ訪問中にロサン・ワンチュク先生は突然、遷化された。それに先立つこと少し前、いやな予感のしたダライ・ラマ法王はヨーロッパから国際電話をかけてロサン・ワンチュク先生の様子を聞かれた。しかし周りが、「説法会をやっているから大丈夫です」と答えたので、安心した。しかし、ワンチュク先生は説法会が終わると同時に急逝された。

 それを聞いたダライ・ラマ法王は「しまった、油断した。あの時、この世にとどまれといったら、あと一年くらいはこの世にいたのに」と悔やまれたという。

 このラマ語りの背後にはむろん仏伝の有名な釈尊とアーナンダの会話が存在している。80才になった釈尊は、ヴァイシャーリーにいる際に「私はそろそろこの世を去ろうと思う」とおっしゃられた。しかし、アーナンダは沈黙して、これに答えなかったため、釈尊は生命力を大地に放って、三ヶ月後の入寂を予言した。

 この場所にたったのが八大仏塔の一つ尊勝塔である。

この時、アーナンダが釈尊に対して「お師匠様、この世にとどまってください」といえば、釈尊はもう少しこの世にいた。そのためアーナンダは血の巡りの悪い弟子の例として後世に語り継がれることになる。

 この仏伝の記事を踏まえてチベットでは、ラマがごふ例ともなると、弟子一同でこの世にとどまってくださいという儀礼、テンシュクを行うこととなったのである。

 このロサン・ワンチュク先生はミスター『入中論』に「〔早く覚りをひらくために〕洞窟にこもって自分だけの修業(密教)をするでない。我々の生きたかは仏になるまで三阿僧祇かかる生き方でいい(顕教による修行で覚りにいたるには天文学的な時間がかかる)。〔仏法存亡の折ゆえ〕たくさんの僧を指導しなければならない。」とおっしゃっていたという。
 このような師匠のお言葉によって、ミスター『入中論』は日本にまできてくれているのである。そこでミスター『入中論』の公開灌頂のお知らせ。

 一つは前のエントリーでもご紹介させていただいた、週末土曜日に行われる大覚寺のヤマーンタカ尊の灌頂、十二月は私立の名門清風学園を会場に行われるチッタマニ・ターラー尊の灌頂、三つ目は出雲の峯寺を舞台に行われるヤマーンタカ尊の灌頂である。

 チベットでは正統な阿闍梨から、準備のできた弟子が、正しく密教の灌頂を授かると、今まで積んできた悪行がとりあえず浄化されるという。しかし、ガワン先生が最後に灌頂されてよりすでにほぼ二年近い日々が過ぎ、自分の意識には何か煩悩がたまりまくっている。今回は最低でもチッタマニの灌頂にはちゃんと参列して、この二年の煩悩障を雪がなきゃ。

●チッタマニターラー灌頂
日時 平成22年12月12日(日)午後一時から午後五時(予定)※途中入場は不可
場所 清風学園(大阪市天王寺区石ヶ辻町12-16)南館七階大ホール
問い合わせ先 06-6771-5757(担当 山本・梅野)

●ヤマーンタカ灌頂
日時 12月18日(土)午後5時半~午後8時~19日(日)正午~午後4時まで。
 途中入場は不可。19日のみの参加はできません。途中退出は可。18日のみはOK。
場所 出雲峯寺(島根県雲南市三刀屋町給下1381)
問い合わせ先 0854-45-2245
詳しくは → http://mineji.jp/blog/?page_id=363

施主平岡先生からメッセージ(コメント欄にあったのをそのままあげただけ 笑)

 ダライ・ラマ法王様と奈良で謁見させて頂いた時、「最近、海外ではチベット僧侶というだけの偽物が跋扈していることは嘆かわしい」と仰いましたが、そのあと、ミスター入中論を指して、「彼は、本物だから」と付け加えられました。
 ミスター入中論は、セラ・ガンデン・デプンの三大寺に名声をとどろかせた、ラサの気質を今も残す本物の僧侶です。
 密教は灌頂を受けなければ、学ぶことが出来ません。
 私はガンワン先生に師事して以来20数年、密教を学んで参りましたが、自分の学んできたものの集大成のつもりで、出来るだけわかりやすく通訳を務める所存ですので、密教を学んでみたいと志す方は是非ご参加ください。

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COMMENT

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● ミスター入中論の灌頂へのお誘い
koichi | URL | 2010/11/25(木) 18:34 [EDIT]
先生、ご紹介、ありがとうございます。
法王様と奈良で謁見させて頂いた時、「最近、海外ではチベット僧侶というだけの偽物が跋扈していることは嘆かわしい」と仰いましたが、そのあと、ミスター入中論を指して、「彼は、本物だから」と付け加えられました。
 ミスター入中論は、セラ・ガンデン・デプンの三大寺に名声をとどろかせた、ラサの気質を今も残す本物の僧侶です。
 密教は灌頂を受けなければ、学ぶことが出来ません。
 私はガンワン先生に師事して以来20数年、密教を学んで参りましたが、自分の学んできたものの集大成のつもりで、出来るだけわかりやすく通訳を務める所存ですので、密教を学んでみたいと志す方は是非ご参加ください。
 

mineji | URL | 2010/11/26(金) 13:50 [EDIT]
先生、ご紹介いただきありがとうございます。
今回行われる4か所(大覚寺様、清風学園様、当麻寺様、峯寺)の中では一番不便な場所ですが、ガンワン先生に代わってまた著名な高僧をお迎えできることを、とても嬉しく思っております。2年前のガンワン先生最後の灌頂を再び思い起こし、皆さんに功徳があるように聖なる道場を設え、準備を進めてまいります。
● 5年後にうかがわせてください
広島のおばさん | URL | 2010/11/26(金) 15:38 [EDIT]
大学院とチベット寺の勉強だけで、今、手いっぱいです。
ほんとうにうかがいたいです。
5年ぐらいしたら、今やっていることを少し決着させて、是非うかがわせてください。
広島会場を設定するぐらいになれたらいいのにと、勝手に夢みています。(すみません)

シラユキ | URL | 2010/11/28(日) 09:18 [EDIT]
大覚寺てのミスター『入中論』の灌頂についてtealeafさんのレポートです。

http://ameblo.jp/tealeaf-reading/entry-10720283978.html

シラユキ | URL | 2010/11/29(月) 17:55 [EDIT]
>minejiさん
投稿ありがとうございます。生起法はじめて私も密教の奥深さがすこーしだけ分かってきたような気がします。人格は相変わらずです(笑)。

>広島のおばさま
元来密教は顕教をおさめてからはじめるのが理想と言われていますから、納得いくまでまずは顕教のお勉強をつづけてください。

Hisano | URL | 2010/12/01(水) 12:52 [EDIT]
参加させて頂きたいと思いつつも、日程がちょっと厳しくて、とても残念に思っていました。
ですが、東京でも法話会と灌頂を行なって下さるという事で、ご縁が頂けて大変有りがたく思っています。

PenbaYakdu | URL | 2010/12/07(火) 19:48 [EDIT]
念願の峯寺でのヤマーンタカ灌頂に参加させていただきます。
海外出張の狭間での大調整奮闘中でなんとか今度こそ大丈夫そうです。
マウスパッドもヤマーンタカ・デザインにしましたし(笑)。

シラユキ | URL | 2010/12/07(火) 21:34 [EDIT]
>HIsanoさん
東京は新宿駅近くの常圓寺というお寺が会場です。常日頃チベット関係のイベントに協力をしてくださっているお寺さまです。広大なお墓の真ん中にあるややひく立地にあることはナイショです(笑)。

>Penbaさん
前回ガワン先生の最後の灌頂が実現しなかったことは本当に残念でした。峯寺とお若い頃からご縁のあるPenbaさんですから、きっといい灌頂体験になると思います。
● 顕教の重要さ
དུས | URL | 2010/12/10(金) 22:35 [EDIT]
チベット仏教では、最初「論理学」「認識論」を勉強します。これに何年もかけてやっと「般若学」を学ぶことが出来ます。
密教(སྔག)は、すべての学習が修了した「エリート」のみが学習できるもので、ほんとは、一般の方向きでないはずです。
チベット仏教の本質は、顕教の方にあると私は考えます。
しかし、「視覚的」「感覚的」に強く訴える密教の方が有名になり、法王のおっしゃるような「ニセモノ」が、多く現れるようになったのは、本当に悲しいことです。

「砂曼荼羅」に象徴されるように、「形(གཟུག)」は、最初から存在しないもの。

形あるものは、いずれは壊れてしまうのです。

そういうことを、しっかりと理解するために
長い間かけて「空」の勉強をする。

そしてそれをはっきり悟った上で「密教」の勉強をする。

「形」に惑わされる人は、密教を実修してはいけません。

「形」に惑わされやすいのが、普通の人です。

チベット仏教がほんとうにすばらしいと思うところは、
最初に人間が持っている「ありのままの認識」をしっかり学習させるところ。

これは、禅宗で最初に「庭のそうじをさせる」のと、同じことです。

神秘の世界は量り知れないけど、まずは、「自分にもともと備わっている、正しいものの見方」を再認識する方向でよいのでは?

当たり前に、生活する。
普通の生活を取り戻す。

それこそが、どんな神秘的な密教よりもよっぽど優れた密教でしょう。

今の「当たり前さ」をありがたく思う気持ち。
今の自分を感謝するところから始める。

それは、どんな仏教でも共通する、出発点でもあり、ゴールでもあると思います。

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