白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2011/04/27(水)   CATEGORY: 未分類
シンガポールで学会
 震災の衝撃によって脳内の知的活動領域が著しく損傷したのか、はたまた、ただの怠け病か、最近高度な思考ができない。文作もだるい。しかし、シンガポール学会旅行の記録くらいはあげとこう。

 羽田が国際化してくれたおかげでこの前の台湾旅行も、今回のシンガポールも羽田を使うことができた。シンガポールまでの飛行時間は約七時間、時差は一時間であるため、普通の海外旅行に比べれば体に負担はかからない。

 しかし、羽田発、シンガポール行きの飛行機が夜の23時50分発て遅くない?しかも帰りは向こうを22時くらいにでて、翌朝5時50分に羽田着。これ早くない?
 羽田の国際線出発ロビーはご時世ゆえに暗い。ついこの前学生とここを利用したが、今回は一人。しかも深夜。しかも暗い。何かもの悲しい。

 とりあえず、海外旅行保険にでも入るかと保険売りの機械の前にたつ。入力すると五千円になった。それはなぜかというと初日はたった10分しか日本にいないし、帰りは早朝羽田着であるにもかかわらず、初日と最終日がばっちり旅行日程にはいるため。釈然としないものを感じたので、機械の横についている電話でオペーレーターにつなぎ、二日間ひいて申請してもいいかと聞くと、「お客様の申請通りに保険金がおりないことがあります(直訳ダメ)」。

 そこで、熟慮の末、無保険で海外に行くこととする。ダンナにその旨を電話すると、私がいままで世界中至る所で忘れ物をしていることをしっているダンナは限りなく不安そう。しかし、日程の大半は学会に拘束されるわけだから、大丈夫!と説得する。

 出発時間が近づくとロビーがしんしんと冷えてくる。羽田空港、暖房きったな。ついたら赤道直下のシンガポールであるため限りなく薄着をしてきた自分はだんだん寒い気分になってくる。

 搭乗すると案の定ガラガラ。従って、三席を占領して気持ちよくねる。JALは昔はシートベルトしめろとかうるさかったのに、今は静か。一度つぶれたので体質が変わったのだろうか。そしてシンガポールついたけど、まっくら。そりゃそうだよ。七時間も西に飛んで時差一時間って少なすぎ。心配していた放射能スクリーニングもなく、たいした差別もなく市内に入る。

 到着日の夜はみなの投宿するホテルのカフェでジョイント夕食会。この学会は今回でもう六回目で、すでに三~四冊の本を出しているため、メンバー同士は顔なじみが多いよう。

 会場はナーランダ・シュリビジャヤ・センターで、好き放題放言できるように、会議自体はクローズド(聴講者なし)である。全員が平等に発言者ということで、円卓会議(round table)と銘打っているのだが、会場のテーブルは普通にロの字型に並べられている・・・・。「アーサー王と円卓の騎士」を妄想していたので、普通さにちょっとがっかり。

 いろいろな地域の歴史学や歴史学の研究者を集めて、それぞれの地域の世界観、歴史観を発表させて、それぞれの世界にそれぞれの世界観があることを互いが自覚することにより、ナショナリズム=被害者意識(笑) を超克し、自分の考え方を他者におしつける愚をおかさないようにさせ、さりとて、「それぞれの文化は独自の考え方があるんだから他人は口をだしちゃいけないんだよ」という文化相対主義は思考停止だからやめよう、みたいなことを発展的に話し合う場。主催者はチベット問題を中心的に扱ってきた人であるため、チベット史研究者が他の研究者に比して若干多い。

 学会はもう朝から晩までばっちり拘束されて、朝昼晩の食事は一緒だし、研究発表はまちろん円卓会議だから全員対面で一緒。その中間にある午前・午後の30分のコーヒーブレイクは、いろいろなところからきた参加者が、出発国との時差で眠くなるのを防ぐためにあるのだが、私は英語を聞いていると普通に眠くなるため、コーヒーのみまくっていたら胃が痛くなった。

 で、学会で知り合った参加者の中でもっとも興味深かったのは日中関係を専門にした某国の研究者。

 この人、日本語が堪能であるため、日本人の書いた日中関係の論文を西洋に紹介しているのだが、彼の発表はものの見事に「アジアの一等国」。あのデモをうけまくったNHKのジャパンデビューそのままである(笑)。西洋的な文明史観をふりかざした日本がアジアを野蛮視して植民地化していった歴史を語り、西洋の考え方を東洋におしつける愚をとく。

 彼の考えを聞いてみると、「今西洋が中国に対して行っていることは日本が昔アジアに対してやったことと同じである。今は人権のある国=善、人権のない国=悪とし、中国を必要以上に悪くいっている。」

 また「中国が入る前のチベットが桃源郷だったみたいにいうのはばかげている。中国の土地改革のおかげでチベットはよくなった」みたいなことを真顔でいう。

 そこで、チベットについてどのくらいしっているのか聞いてみるとチベットの歴史に関する知識はゼロ。チベット人の友達もいない。チベットハウスもダライラマも難民社会もなーにんもしらない。

 日本にはこの手の中国学者一杯いるけど、外国で見たのははじめてだったのですごく新鮮だった。たぶん彼も私みたいな〔彼からみたら西洋的なものの考え方をする〕日本人を見たのははじめてだろう。互いに貴重生物を見るような目でみるのであった。

 彼がチベットのことを何も知らないのに、チベットについてなぜかくも断定的に語れるのか永遠の謎であったため、聞いてみると、冗談めかして「チベットは中国の一部だから」と応えた。つまり、中国について自分はよくしっているから、チベットのことも分かっている、と思っていたらしい。

 彼は日本の学者とまったく同じく「中国はいまによくなるから、頭ごなしに責めてはいけない。見守っていかねばならない。ぼくたちは飢えたことがないんだから、飢えた経験のある人たちの文化にあれこれいってはいけない」とかいう。

 私が「中国人もう飢えていないでしょう。それに今中国がチベットに対して行っていることはあなたが批判しているかつての日本が植民地に対してやったことと同じでしょう。チベットでは今日もお坊さんが抗議の焼身自殺したりとか、坊さんをかばったチベット人の老人が殴り殺されたりしているんですが、今目の前でこうしてい死んでいく人を見ても、貧しい人を救った共産党は多めにみるべきとか、いえますかねー」と聞いたら

彼曰く「自分がナチス政権下のドイツにあって、知り合いのユダヤ人をかくまうか否かで迷った時は、匿ったら家族ともども政治犯で収容所に送られますから、匿いません。極限状態にある人のとった行動は誰も責めることはできません」とな。

私曰く「もう一度いいますが、中国人はもう飢えていません。今彼らがやっていることはまったく正当化できないと思うのですが」

応えなし。 いや、でも彼はいい人だと思うよ。うん。

 彼の教えてくれた小話は面白かったし。それはね、1989年の天安門事件の前夜、小平は学生たちを武力鎮圧することを決意して、それを先輩たちに報告すべく、天国の周恩来と地獄の毛沢東に電話を入れた。そして、月末、遠距離電話かけたからずいぶん料金がかかっているだろうな、と料金通知を見たら、周恩来にかけた通話は高額であったにもかかわらず、毛沢東にかけた地獄への電話はタダであった。そこで不思議に思った小平が、なぜこんなに安いのかと聞いてみると、

「市内通話ですから」

どははははは。

 話変わって、この学会、震災前に出張届けを出していて、チケットも買っていたので仕方なく参加したけれど、本当は日本を離れたくなかった。理由はもちろん、いつ最大余震がくるか分からない状態で愛鳥の側を離れるのが不安だったからである。日本にいれば自分の足の下が揺れればすぐに家に飛んで帰ればいいが、シンガポールだと日本の地震は体感できないし、すぐに家に帰れない。

 というわけで、朝晩はかならずダンナのスカイプでiPhoneに電話をかけ、暇さえあれば、会場のパソコンで日本の地震情報と、ヤフーニュースと今日の天気とメールチェックをした。とにかく落ち着かなかった。

 東京は余震続きで毎日揺れていたので、シンガポールにきて何日も揺れない状態が続くと、それはそれでおかしいと思い、日本に帰って震度三の地震があった時には「ああ、これこれ」とかえって安心した。不思議な話だ。中国人は日本を嫌って雪崩を打って自国に戻っていったけど、私はやはり日本がいい。英語しゃべらなくても生きていけるし、私の愛するものの多くはこの国の上にある。

 シンガポールがなんぼ綺麗でも南国の楽園でも、朝鮮人民共和国と同様、共和国という名の一党独裁国家である。例の彼によると、居酒屋で日本語で元首相の悪口をいった日本人が、国外退去処分になったそうな。つまり、秘密警察がバリバリそのあたりにいるのだ。同じ独裁国家でも北朝鮮があれこれ言われて、シンガポールがあまり非難されないのは、経済が成功しているから。先ほどの日中関係の彼も中国共産党を暖かく見守っている理由は経済が成功しているからである。

 でも、私は歴史学者なので、研究の自由がない、言論の自由がないような国ではやはり暮らせない。特定の政権なり思考法を維持するために歴史を書いたり、教えたりするのは無理。道徳的、倫理的以前に生理的に受け付けない。

 ま、話せば長くなる。最後にシンガポールのリトルインディアの写真何枚かあげときます。クリックすると写真大きくなります。
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COMMENT

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● 龍山寺
まっこり | URL | 2011/04/28(木) 06:57 [EDIT]
シンガポールの龍山寺ってまさに南海補陀落ですよね!

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