白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2011/06/18(土)   CATEGORY: 未分類
死後にもっていけるものは(前編)
 土曜日は午後から護国寺様でゲン・ロサン先生の御法話があるので、勉強会は午前に前倒しした。

 護国寺につくと会場の忠霊殿をしめすポスターの地図が間違っており、みな思い切り迷った。そしてプログラムはあっさりと変更され、最初に法王事務所の代表ラクパさんのお話があり、次にゲン・ロサン先生の法話になり、その法話が思い切り長引いたため、法要はなしになった。このアバウトさ、チベット的でいいわ。

 まず、代表事務所のラクパさんから、ダライラマ法王が政治のトップから退任された話について、わかりやすく説明がある(なんせベーシック・チベットでbTibeですから)。以下箇条書き。

 五年前の選挙でサムドン・リンポチェがチベット亡命社会の首相に再任された際、ダライラマ法王は「宗教のボスは私だが、政治のボスは彼だ」と述べ、半分引退していることを表明された。今回の選挙でロプサン・センゲという若い首相が誕生したことを境に、本格的に政治のトップから退任されることを表明し、このように、ダライラマ法王の政治の長からの引退は時間をかけて行われており、かつ、法王はいままでとおりチベット人のスポークスマンとしての立場は勤めるといっていることから、チベット人は法王の引退をあまり不安に思っていない。これをチベット人が、ダライラマに頼らずに自分たちの社会を運営する、自立するべき機会ととらえている(来るべきダライラマの不在期間に備えている)。

 また、政府の名称も「ダライラマ猊下の中央チベット管理組織」(Central Tibetan Administration of His Holiness the Dalai Lama) となったため、「政府」(goverment)という言葉を非難していた中国は、さらに非難の対象をなくす。

 中国政府は亡命政府の特使とまったく実質的な対話をすることはなかった。ただ、国際社会からの非難をそらすために対話のポーズをとっていただけである。中国はダライラマの私設特使とのみ交渉すると言い張ってきたため、ダライラマが政治の世界から引退するとこれまで言い続けてきた百万大言が無効になるため、非常に困るだろうとのこと。

 ダライラマが採用してきた「実質的な自治」を求める独立と同化政策の中間の「中道のアプローチ」を受け入れていれば中国にとってもよいことであったのに、彼らは自らそのチャンスをつぶしてきたのだ。

 2008年以後、中国政府のチベット人に対する締め付けはさらにひどくなっている。チベット仏教が存在する限りチベットは中国人に同化しないことに気づいた中国は、アムドの地方の小さな学校を合併して一つにし、中国語教育を行いはじめている。また、僧院に対する弾圧もひどくなっている。さらに、遊牧民は移動を禁じられて一つの地域に定住させられ、彼らが遊牧していた草原には、中国人がやってきて工場を建て、鉱山をほり、軍事基地を作っている。などのお話でした。

 そして、次にゲン・ロサン先生の御法話。

 実は午前中の勉強会で読んでいた、テクストで、18世紀前半、ダライラマ七世の時代に権勢をふるったチベット貴族ポラネーがなくなったくだりを読んでいたのだが、ゲン・ロサン先生の法話は見事にこれにシンクロしていた。私達が午前中読んでいたテクストにはこうあった。

 ヨーガ行者が「王子よ、どのようにあなたが富んでいても / 死んで、あの世に行く時は / 荒れ地で敵に殺されるように / 一人で子もなく妃もなく / 着物もなく、友もない / 王政もなく、家もない / 無量の力や軍隊をもっていたとしても / ご覧になることはない。お聞きになることもない。/ ひとりぼっちで来世への道に従うものもない / つまり、あなたの名前すらも / その時はなくなるなら / その他のものがあるはずもない」と仰ったことがそのまま現実になったのを見て、〔著者ツェリンワンゲルは〕心につきせぬ痛みを感じて、輪廻の中のことは重要でないと覚り、(ポラネーが死んだ)その日に、ワンドゥーカンサル館の傍らで死んだばかりの乞食をみて、経典などに「死の朝には転輪聖王の遷御と乞食の死の二つは何も区別がない」と説かれていることは、このことだったのか、と思い確かな智が生まれた。

 なんてところを読んでいたら、午後の護国寺様で行われたゲン・ロサン先生の法話がまさにそのようなお話であった。勉強会のメンバーをそのまま連れて行ったので、17世紀から21世紀にいたるまでチベット人のメンタリティが見事に変わっていないことを実感できたはずである。

 まず、ゲン・ロサン先生は『現観荘厳論』の最初の一節を唱え、次にテクストとなったシャーンティデーヴァの『入菩薩行論』について解説された。このシャーンティデーヴァは八世紀のインド人であるが、先生の説明法は14世紀のチベット人ツォンカパが大成した修道階梯に則って行われている。

 まず、多くの人が聞き取れなかったであろう、最初のこの一節の解説をまんま披露。

 この有暇具足は極めて得難い 人の目的(解脱と一切智者の境地)を達成可能なものである。
 このチャンスを活用できないとするなら、後で全うすることができようか。

 
 この一文の中の「有暇具足」とは仏教を学ぶことのできる八つの機縁と十種の条件である。

 まず、「仏教を学ぶための八つの機縁」(有暇)とは、「仏教を学ぶ機縁のない八つの状況」(八難)から離れることである。その八つとは以下のようなものである。

(1) 四部僧(比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷)がいない辺境の地に生を受けること
(2) 障害をもって生まれたため(知能が低かったり、四肢に障害があったり、耳などの感覚器官に問題があるなど)、仏の教えに接することが難しいこと。
(3) 仏教の基礎的な概念である前世・来世、業果、三宝などをないと考える間違った哲学を持っていること。
(4) 仏が出現しないため、仏の教えのない世界に生を受けること。
(5) 地獄に生をうけること。(以下5、6、7は三悪趣)
(6) 餓鬼に生を受けること。
(7) 畜生に生を受けること。
(8) 天に生をうけること。

 さらに、人に生まれたとしても、五つの条件が自分に備わってなければ仏教を学ぶことはできない。

 すなわち「人として生を受けること。中央に生まれること。障害がないこと。無間業をおかしていないこと。聖典を信じていることの五つである。」

 「人として生を受けること」とは、仏教を理解し修行できる能力があるのは人間だけであるため、人間に生まれることである。
 「中央に生を受ける」とは、四種僧のいる地に生まれることである。
 「障害がない」とは、知能が低かったりせず、四肢や目や耳などの器官に問題がないことである。
 「無間業をおかしてない」とは、極悪な罪(五無間罪=殺母・殺父・殺阿羅漢・出仏身血・破和合僧)を自らおかしてなく、また他者におかさせていないことである。
 「聖典を信じること」とは、世俗的な意味での良いことと本質的な意味で良いこと、などすべての意味でよいことの生じるもとである聖典(三蔵)のことを言う。

 以上の五つによって自分の精神を整えて仏教に接する機縁があることを、「自分が備えているべき五つの良い条件」という。

 人に生まれ、上述した五つの条件が備わっていたとしても、さらに以下の五つの条件が環境に備わっていなければならない。

 すなわち、「仏が出現すること。仏が教えを説くこと。その教えがこの世にとどまっていること。教えに従うものがいること。その者たちの生活を支えるものがいること」という。

 このうち、「仏が出現すること」とは、三阿僧祇劫もの長大な時間をかけて良い行いを重ねてきたものが覚りを開き仏となることである。
 「仏が教えを説くこと」とは、仏やその弟子である声聞がその覚りの内容を説いてくれること。
 「仏の教えがこの世にとどまっていること」とは、仏が覚りを開いて、教えを説いて、涅槃に入る(死ぬ)までの間に、意識の上で直接に体験した覚りが、衰えずに残っていること。
 「そのとどまっている教えを伝えるものがいること。」とは、仏には人々に真実(勝法)を覚らせる力があると知って、その教えに従うものがいること。
 「教えに従うものの生活を支えるものがいること」とは法衣などを作ってくれ生活を支えるパトロン(施主)が社会内にいることである。この五つが環境にあって仏教を学ぶ機縁が生まれるので「環境が備えるべきもの」という。

以下次のエントリに続きます。
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COMMENT

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● おお。
セン | URL | 2011/06/19(日) 16:54 [EDIT]
先生、お疲れでしたか。
でも先生、昨日はとても明るくて清々しい印象でした。
ますます先生が好きになりました。
先生の本で、自分がまだ持ってなかった分、先日まとめて買いました。

Hisano | URL | 2011/06/19(日) 21:36 [EDIT]
先生、早速アップして下さってありがとうございます。
丁度、今、入菩薩行論を勉強していて、ゲン・ロサン師からお聞き出来るとは、何てラッキーなんでしょう!と思ってお話をお伺いしていました。
そして、先生のブログでもアップして頂けて、更にラッキー!です。
どうもありがとうございます。

シラユキ | URL | 2011/06/20(月) 01:25 [EDIT]
>センくん
昨日は朝から勉強会やってそのメンバーとタクシーで護国寺様にいったんですよ。もうへとへと。みんなもテツヤで予習しているからつらかったんじゃないかな

>Hisanoさん
ようやっと後半もあげました。読んでくださると嬉しいです。

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