白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2011/08/10(水)   CATEGORY: 未分類
事実と論理の力を報道が否定してどうするの
まずは、多くの人がもう知っているであろうこのニュースをごらんください。

護摩木に被災地の松、京都の「送り火」中止<日テレNEWS24 2011年8月9日 20:03 >

 京都の「五山の送り火」で燃やすはずだった松の木が8日、岩手県内で「迎え火」として燃やされた。

 岩手・陸前高田市で燃やされた松の木は、津波で流された名勝「高田松原」の松で作られた約330本の護摩木。護摩木には、東日本大震災の犠牲者の名前などが書き込まれ、当初は、京都の「五山の送り火」で燃やし、犠牲者の冥福を祈る予定だった。しかし、京都市内での実施に対し、放射能汚染を心配する声が寄せられ、計画した大文字保存会が中止を決定し、8日夜、陸前高田市内で「迎え火」として燃やされた。

 一方、護摩木からは放射性物質が検出されておらず、過剰反応だなどとして、中止を批判する声が京都市役所に寄せられている。その数は約470件に上っている。

 京都市・門川大作市長は「この度の大文字保存会の決定は極めて残念であり、寂しい限りです。安心・安全が確認されている限り、京都で色んな被災地のものを受け入れていくのは当然のことだと思う」と述べている。

 京都の大文字焼はご存じお盆で戻ってきた死者の霊をあの世におくる送り火である。従って、震災でなくなった方をあの世に送るために、被災地の松の木を護摩木にしてこの送り火で焼くというのは非常に日本的でまっとうな美談になるはずであった。

 しかし、この話が公になると「この松を燃やすと放射能が飛散して子供に影響がでるのではないか」みたいな電話が40本ほど「送り火保存会」にかかってきた。どこの地域にもいろいろな精神状態の人がいるから、ここまではよくある話であろう。しかし、問題はこのあとである。この松からはまったく放射能が検出されていないにもかかわらず、あろうことか保存会はこの企画を中止したのである。

 この松には放射能は含まれていないのだから、実害は全くない。にもかかわらずこれを中止したことは、京都を代表する伝統的な風物詩の威力をもって、風評被害を大々的に肯定したことになる。

 この決定を行った「保存会」の人たちの気持ちを僭越ながら察するにたぶんこんとなところだろう。

「少しでも、一%でもこの火を不安な思いで見る人がいるのなら中止した方が無難だろう」

 しかし、これがいかに視野の狭いものであるかは、その後京都市役所その他にかかってきた中止の決定に対する批判の電話が2500件(9日夜時点)に達っしたことが示している。存在しない放射能を不安がる敏感すぎる人の数よりも、はるかに多くの被災地の人々の、また、論理と事実に力をもってほしいと思う人々(私はこの範疇に入ります 笑)を、この中止の決定は落胆させたのだ。

 今回五山の送り火を見る人は、九十何%くらいの確率で、不安どころか、不快の気持ちを持つことになるだろう。

 中止によってもたらされる巨大なデメリットと淡々と予定通り送り火を行った場合にもたらされたメリットを比べれば、誰でも後者を選ぶ。つまり、もうちょっと広い視野でものを見るという能力が「送り火保存会」のメンバーの中にあれば、企画は予定通り遂行されたはずなのだ。

 このダメすぎる決定を京都人の閉鎖性に帰する意見が内外に多々みられたが、私はこのような「事の軽重がまったく見えず」「目先のことしか考えられず」「広い視点からものが見られない」という特徴は、日本人の多くに広く見られる宿痾だと思う。

事実、この送り火騒動について、お昼のNHKニュース、夕方の日テレ、22時からの報道ステーションでの報道の仕方を比べて見たが、報道ステーションはしょうもなかったから。 NHKは事実をたんたんと伝え、日テレは特集のような形で大々的に扱い、京都市民の町の声として「放射能ないんですからやってもよかったんじゃないですか」を流し、また、被災地のけなげさを流し、「送り火保存会」決定がいかに多方面を落胆させたのか、と暗に中止の決定を批判する構成にした。おそらくはこの日テレの報道の後、さらに苦情電話の数は天文学的に増えただろう(ただし五時を過ぎているので市役所の電話は応答しないかもしれないが 笑)。

 しかし、報道ステーションの扱いはひと味違った(笑)。まずトップニュースでこのニュースが出てきたので、風評被害の愚かさについて報道するのかと思えば、話は送り火から、大船渡のがれき処理の話になった。そして、県内では処理能力がいっぱいいっぱいなので県外で処理してもらおうと思ったが、放射能汚染の不安のために引き取り手がない、みたいなニュースである。

 そしてこの二つのニュースに対して、誰だかしらん番組の解説員が「被災地で風評被害に苦しむ方も、放射能の不安に苦しむ方も同じ被害者だ、京都バッシングになってはいけない」とまとめたのである。

 あのねえ。被災地で苦しんでいる人は実際に肉親を失ったり、家を失ったり、今回のような風評被害とかで、根拠のある悲しみを抱え、それでもけなげにがんばっているのである。しかし、今回送り火を中止させた40本からの電話をかけた人々は、安全な所にいて何も失っていないにも関わらず、根拠のない不安にとりつかれていただけ。「送り火保存会」はこのような人の不安に感染して、判断を狂わせ、その不安を全国に拡散しただけ。

 なんでこれを一緒くたに論じられるのかさっぱりわかりません。人々の祈りのつまったスピリチュアルな護摩木と、処理をまつがれき(これも元をただせば思いがつまっているけど祈りはこめられていない)を一緒にするという無神経もすごいと思った。これは一般論であるが、サヨク的な人には、道徳的なもの、精神的なものに対する感度が鈍いという共通点がある。

 それと、報道ステーションの解説員が「このような放射能に対する不安を抱えている人には放射能が検出されない、と論理でおしても解決しないんですよね」と言っているが、根拠のない不安を抱えている人に、「あなたの不安は根拠がないんですよ」と事実を提示する以外にどんな不安の解決法があるのか。報道ステーションの解説員のいったことは、事実と論理の無力を公言したことになり、報道機関として言ってはならないことである。


 で、唖然としているとニュースは次に進み、ロンドンで続いている暴動の話題になった。画面には炎上するエンフィールドのソニーの倉庫がうつしだされ、火が出る前倉庫からは盗品を抱えた暴徒がたくさんでてきて、そのあと火が出た、と暴徒が盗難の結果を隠すために放火をしたことを報道していた。

 さらに、暴動の中核にいるカリブ系移民の街頭インタビューが流れる。うろ覚えだけどこの人こんなこといってました。

 「でかいことやってやろうと思っていたが、チャンスがきた。この暴動は決して終わらない。チャンスがあれば何度でも起きるだろう」

 で、画面がきりかわって、バカンス先から急遽帰国したキャメロン首相が私にでもききとれるキレーな英語で「これは純粋な犯罪だ。犯罪者にはその結果がつきつけられるであろう。正義は実行されねばならない」みたいなことを言った。

これに対する報道ステーションの字幕には「正義」の二文字も翻訳されず、解説もまた、失業問題とか、貧困問題とかが原因であるとして、暴徒の犯した犯罪に対するコメントはまったくなし。

 文化大革命の最中、紅衛兵が暴力的に暴れまわっていたとき、日本の知識人の方々の多くは「革命にゆきすぎはつきもの」とかいって温かく見守っていたことを思い出す。

 貧困とか失業が大きな社会的な問題であるのは事実である。しかし、それが、他人の生命財産を奪うことによって解決するのかといったら、解決しないでしょう。民主的な法治国家に生きる以上、法に基づいて自分たちの主張を代弁する政治家を選ぶなりして社会は変革さるべきであり、報道はまず彼らの犯罪性について一言あってしかるべきではないか。

 報道ステーションの論理に則ると、根拠のない不安にさいなまれているナーバスすぎる人たちも、商店を略奪する悪のりギャングたちも、加害者ではなく、すべて、犠牲者ということになる。でも前者は不安によって、後者は暴力的な衝動によつて我を忘れている煩悩の人である。まちがっても、犠牲者ではない。

 社会には常に一定数、教育の不備や精神の病によって、自分の心や体をコントロールできない人たちがいる。しかし、こういう人が力を持つ世の中には、破壊と混乱が生まれるだけ。破壊と混乱を心の底から望む人がいない以上、やはり彼らのことはどんな形であれ肯定してはいけない。送り火騒動の一件にしたって、もし40本の不安な人々からの電話があるなら、面倒臭くても一人一人説得して予定通り実行すべきだったのだ。報ステも過敏すぎる人の反応なんかに同情の念をよせ、風評被害のさらなる拡大に手をかすべきではないのだ。

 何かを決定する、あるいは、中止することができる立場にある人は、その決定・中止に際して、誰が本当の被害者なのか、それを決定・中止する際のメリット・デメリットの査定、何を護るべきで、何を捨てるべきなのかを、より広い視点から判断する能力がないといけない。その基準はもちろん、事なかれ主義でもなければ、ラクしたいとかではない。多くの人にメリットをもたらすことのできる普遍的な価値観だ。

 日本人はこの普遍的なものの考え方がとにかく苦手。しかし、今回の送り火保存会の人々の轍を踏まないためにも、やはり、下は市井の民から、上は政治家・高級官僚にいたるまでもう少し広い視野で、こう普遍的な立場から行動した方がいい。悪いこたいわんから。

※追記 このあとご存じの通り、京都府は一転して薪を受け入れるといって、そのあと新しくとりよせた薪にセシウムがでたらさらに一転して、中止になりました。すると、「放射能でたじゃないか」というコメントがついたのですが、まったく本文章の趣旨も理解していないため、削除しました(笑)。
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COMMENT

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takahasi | URL | 2011/08/10(水) 19:08 [EDIT]
福島県中通り地方に住む者です。ほんと、最初にこの報道を聞いたときはポカーンとした感じでした。福島のじゃなく岩手の?放射能値は東京よりすくないんじゃないかな?なんで問題になったんだろう。そんな思いでした。実害にあっってる私たちは放射能にDNA傷つこうが今を生きるのに精いっぱいです。こんどのことも他の世界のことのように甘いニュースネタぐらいにしか思えないような感想をもつほどここ福島では疲れてきているのかもしれません。

嶺のシラユキ | URL | 2011/08/10(水) 23:27 [EDIT]
>takahashiさん
いやほんと、東京もんの私の目からみても今回の京都のこのニュースはびとい温度差を感じるので、福島の方ならなおいっそう呆れられたことと思います。放射能だけをタイムマシンにぶちこんで半減期を進めるというような方法があればいいんですが。

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