白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2011/08/21(日)   CATEGORY: 未分類
自らを灯明と化す
 ブログの更新が滞っていて、すみません。去年のちょうど今頃内容を固めていた専門書がめでたく学内審査に通り、出版の運びとなり、いま再校原稿を見ている最中でこれが大変。

 過去の原稿と今回の書き下ろしを一緒に出版するのだが通読してみると、誤記、表記・表現の不統一、考え方の深まりによる訂正箇所などは象のふんのように多量にでてくるし(他に表現はないのか)、さらに、専門書というものは、とにかく山のようにチェックせねばならない点があり、見直しても見直しても気になる点がでてくる。

 原典にあたり、満洲語・モンゴル語・サンスクリット語・チベット語の綴りのチェックあり、もういつ果てるともしれない作業がてんこもり。でももうそれも明日再校提出して終わるのだが、もうがまんできないので書く。

今年三月十日のチベット蜂起記念日のあと、ガバの御坊さんプンツォさんが中国政府に対して抗議の焼身自殺をされました。この時もみな憤激したのですが、さらにこの八月十五日、今度は東チベットのタウのお坊さんツェワン・ノルブ師がやはり抗議の焼身自殺をされました(ここにニュースが)。そして、在日チベット人が故ツェワン・ノルブ師に対する追悼法要を新宿常圓寺にて行います。詳しくはここくりっく

北京オリンピックの開幕式に世界中でキャンドル・ヴィジルを呼びかけたあのフランスのお金持ちが主宰するCandle4Tibet(チベットのためキャンドルをともそうという意味)もここ数日精力的に世界中に追悼法要を呼びかけています。
 チベサポがみなきれてます。

 キリスト教において自殺は御法度。自殺した人はたとえ洗礼をうけた人であっても教会でお葬式をあげてもらえない。なぜなら命は神様に戴いたもので、自分でかってに始末していいようなものでないため(同じ理由から中絶も御法度)である。

 ドラキュラ伯爵がバケモノ化したのは、自殺した妻ミナの葬式を教会があげてくれなかったことにきれてのこと。これくらい自殺はキリスト教徒にとって重い罪である。


 一方、仏教では、他者のために自己を犠牲にする自殺は究極の布施としてお釈迦様のような聖者の行動として褒め称えられる。お釈迦様の前世譚ジャータカにおいてお釈迦様は動物だった時も、王だった時も、王子だった時も、地獄に落ちた時も、何度も何度も他者のために身を捨てた。

 なので、仏教では他者のため、という自殺は理論的にはありということになるしかし、今回のツェワン・ノルブ師の自殺は、本当に悲しい話しである。

 知らない人のために言うと、チベットは1951年から中国の実効支配がはじまり、以後、チベット仏教の神髄であった仏教については、初期は完全なる破壊をうけ、そのあと、僧院の形だけの復興は許されたものの、それは観光産業のためであり、実際に自由な仏教の研究・修行がままならない状態にある。

 一党独裁の中国においては、一般の中国人にだって自分たちの意見を通すために、指導者も政策も選ぶ権利はない。それどころか、政府を批判する言論の自由すらない。デモの自由もない。ましてもっとも弱い立場にいる植民地チベットの御坊さんたちが、彼らの希望を上にあげる手段なんてなんもない。

 で、このような八方ふさがりの状況の中で今回のような焼身自殺が生まれるのである。
50才より上の方は、僧侶の焼身自殺と言えば、1963年、ベトナムのアメリカ大使館前で、ゴ・ジンジェム政権の仏教弾圧に抗議して、ティック・クアン・ドック師が焼身自殺した件を思い出すのではないか。

 彼は弟子をひきつれてしずしずとアメリカ大使館にきて、弟子たちが読経に囲まれながら、結跏趺坐をくんだ姿勢のまま炎上した。それは逐一それは録画されたのでYoutubeで見られるはずである。この映像はアメリカ人に衝撃をもたらし「我々は果たして正しい側にたっているのか」との思いをみなが抱いた。

 しかも、これについてゴ・ディンジェムの弟の嫁が「僧侶がバーベキューになったってだけじゃない。大体矛盾しているわよ。彼らがつかったガソリンはアメリカ製じゃない」という空気の読めない発言をしたため、さらに世界中の若者たちが、南ベトナムの政権ってこれないんじゃない?という空気が漂った。

1990年にデビューした、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの1stアルバムのジャケが、この炎上するティック・クアン・ドック師の写真であることはよく知られている。そうあのマトリックスのエンディングWake UP!の入っているアルバムである。

 今回自殺したチベットの僧侶はは火につつまれながら絶命するまで、

「チベットに自由を!ダライ・ラマ法王に長寿を!法王の帰還を!」と叫び続けたという。

本土のチベット人にとってこの心の言葉を公の場で口にできるのは死の間際だけなのだ。

 この焼身自殺が利他(自分の死によってチベット文化の危機を世界にしってもらいチ中国政府に改心をせまらせ、チベット人を救うというような)を動機としているかどうかは私は生前のこの人を知らないので何ともいえない。


 しかし、私は基本的に僧侶は、僧院内でしっかり修行と学問に励んで、仏教の伝統をみにつけ人格者になることを通じて、道徳感の欠如した共産党とたたかってほしいと思っているので、今回の件は本当に悲しい。

表題の「自らを灯明と化す」とは、N氏によるとチベット人がこの焼身自殺にたいしてとる表現だそうである。
灯明とは暗闇の中の一点の明かりであり、古今東西キリスト教であっても、仏教であっても、ニンゲンの意識はそのままだと暗黒状態であり、世界は闇であるが、そこに、他者を思う愛が(仏教だと慈悲)、一点の灯火となって周りをてらすという思想がある。

 我々の心の中にある善なるものは本当に小さな光であるが、神や仏の意識は太陽のように絶対的な光輝である。

つまり、チベット人はツェワン・ノルブ師の死を共産党支配下の暗黒のチベットに自らを犠牲にして小さな光をともしたものとして捉えているのだ。こんな言い方をしないと、彼の死が悲しすぎるからであろう。

 丹羽大使が今、日本大使としてははじめてチベットに足を踏みいれて直接チベット人と対話しようとしているが、私服警察間がばつちりまわりにいるので、チベット人はもちろん本音なんて言えません。もちろん丹羽さんもそのあたりは分かっていることでしょう。

 中国政府が自らの行いを恥じる日が一日でも早くくることを祈ります。

フリチベキャンドルの作り方は簡単ですよ。チベット国旗をダウンロードして紙コップかって、それにはりつけて、百円ショップでかったあろまてらひー用のろうそくいれたらはいできあり。
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COMMENT

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セン | URL | 2011/08/21(日) 12:01 [EDIT]
先生ありがとうございます。このことが気になってしょうがなかったです。ありがとうございます。
● 一切衆生喜見菩薩様の化身による焼身供養に最敬礼
川口英俊 | URL | 2011/08/21(日) 16:38 [EDIT]
石濱 裕美子 様

コメント、失礼致します。

究極の深遠なる慈悲行としての「焼身供養」には当然に賛否も含めて色々と考えさせられるところがありますが、とにかく、一切衆生喜見菩薩様の化身による焼身供養に最敬礼申し上げます。

そして、どうか再び人間として転生なされて、菩薩様の化身として、輪廻の大海に深く沈んでいる私たち一切衆生を到涅槃へとお導き賜りますように心から祈念申し上げます。

川口英俊 合掌九拝

嶺のシラユキ | URL | 2011/08/26(金) 11:45 [EDIT]
>センくん
たいしたことしてませんって。

>川口英俊さま
チベットの僧院の修業と学問は、人格者をつくっていくので、自分以外の権威者がいると困る中国政府は、お坊さん、とくに高僧にひどいです。まさに法難としかいいようがありません。

eri | URL | 2011/08/28(日) 22:41 [EDIT]
『(法)王の帰還』ロードオブザリングと重なって、美しい映像となって脳裏に浮かんできました。
多くの犠牲者の願いが一刻も早く実現しますように、そしてその実現をこの目で見る事が出来ますように。

| URL | 2011/08/29(月) 00:50 [EDIT]
>eriさん
みなが犠牲者のことを忘れずに追悼することによって、本土のチベット人も見捨てられていない、忘れられていない、とがんばれるのです。キャンドルを点すことは希望を忘れないことだと思います。

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