白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2012/01/21(土)   CATEGORY: 未分類
学術論文(歴史)の書き方
卒論読んでいたらいろいろ考えることがあったので、歴史系の学術論文の書き方について講釈します。まず、質の良い学術論文の見分け方について四つの要素を確認しましょう。

●質の良い学術論文の見分け方

 (1) そのテーマについて過去になされてきた研究 (先行研究)にきちんと言及しており、著者がそれに対してどのようなスタンスをとるのかが明示されている(先行研究を別の視点からみるのか、批判して新しい知見を提示するのか、それが正しいことを別の資料で証明するのか etc.)。

 (2) 論をなすにあたって、一次史料に直接あたって吟味・考察をしている。質の悪い論文は他人の概説書を根拠として引いたりする。

 (3) 一次史料を丹念に探索し、その記述から見えてくるものを、結論にだしていること。その逆のダメ論文は「結論が先にあって、その結論に合致する資料を集める」。これはたとえばジャーナリストの報道、検察の立件などすべてに言えることで、自分の思い込みや予断で原資料を都合良く利用しないこと。

 (4) 著者の思考が論理的であること。根拠にならないものを根拠にして無理矢理結論をだそうとしたりしていないかどうかを確認。

 (5) 掲載されている雑誌が査読付きの学会誌である場合、その論文の質はある程度保証される。 


●卒業論文を書くための具体的なアドバイス

 レポートと論文は違うことを肝に銘じる。レポートは既存の研究を調べてまとめて「報告」することだが、論文は「これまで知られていなかった新しい知見を、根拠を示して論理的に提示する」こと。自分はどのパターンの論文が書けるのかを考えてみて。

1. 論文のパターン

  1. これまでだれも研究しなかった人・事・組織などの歴史的経緯を新たに一次史料に基づいて明らかにする。

  2. よく知られた歴史的な人・事・組織をいままでなされていない視点から検討する。

  3. これまでの研究を検討して、その中にある誤りをみつけて論理的にただす。

  4. 複数の説が対立している場合、それらを批判検討してどの説が正しいかを論じる。


2. 論文完成までの手順

  1. 自分が興味をもてそうな地域・時代・ジャンルをおおまかに決める

  2. それについて記した概説書 = 一般書をよむ。

  3. その記述の元となった史料・専門書・専門論文をnacsis plusの連想検索, cinii論文検索などによって探しだし、目を通す。→ 先行研究の確認

  4. 一次史料を読んでいるうちに明らかとなった問題点を整理して、テーマを決める。ここでいくつか自分で仮説をたててもいい。
    注意点 1.この場合、視点は絞れば絞るほど、良い結果のでる確率は高くなる。バクゼンとしたテーマを掲げると一般書のまるうつしに終わることが多い。人生と一緒。

    注意点 2.「やりたいこと」ではなく「できそうなこと」をやる。言い換えれば、そのテーマを明らかにするための資料が存在し、かつ、その資料がよめる言語で書かれており、適度に先行研究があることが必要条件。史料は原文で読むことが原則だが、アラビア語などの特殊言語の場合は英訳などを用いることも許可される。

  5. 自らのたてた仮説に根拠がみつけられるかどうかを、直接史料にあたって吟味する。もし途中で自らの仮説が成り立たないことが分かったら、すぐに方向を変えて別の仮説をたてる。これを繰り返す。

  6. 結論を出す。


3. 論文の形式

  1. 序論(はじめに) → 時代背景・問題提起・言葉の定義・あれば仮説の提示

  2. 論証部分(章・節・項 ~の順) → 結論をだすに至った根拠を述べる。
    注意点 3.その際に、原資料や他人の意見を引用する際には、本文から二文字分さげて自分の意見と他人の意見をはっきりわける。また、引用元の典拠を必ずページ数も含めて明示する。それをしないと剽窃=カンニングとなる。

    注意点 4.昨今ネットの情報(Wikipedia, 新聞記事、ブログ記事、広辞苑、ブリタニカ)を長文、論文にはりつける例があとをたたない。そもそも周知に属することは自分の言葉で述べればいいことであり、Wikipediaや広辞苑やブリタニカなどを引用することはない。特殊な定義で言葉を用いるのならなおさら自分の言葉で述べるべきである。また、ブログや新聞記事などの場合もそのまま長文をコピペするのではなく簡潔に自分の言葉でまとめてのせよ。そして、全文は論の末尾に資料として添付せよ。

  3. 結論(おわりに) である。→ 以上の証拠に基づき、わたしはかくかくしかじかの説を主張する。

  4. 注 → 本文の流れを乱すようなもの(出典・説明文・枝葉末節な議論)を注とする。

  5. 参考文献 → 史料・専門書・論文の順に挙げ、それぞれの中は著者のアイウエオ順。
    • 史料の場合は、著者・題名・編纂年・出版社・出版年
        例 于敏中編『日下舊聞考』乾隆39年, 北京古籍出版社, 1983

    • 専門書の場合は、著者・『題名』・出版社・出版年
        例 住友太郎『邪馬台国は南極にあった!』 ありえない出版、1978
    • 論文の場合は、著者・「題名」・『掲載紙名』・掲載紙ページ数・発行年
        例 三井みずほ「邪馬台国は東南アジアにあった」『月刊 古代』 4-3、pp.45-58, 2000

    • 参考文献の本文中での引用の仕方
        著者名・発行年・ページ数のみ。同じ人が同じ年に何冊も書いている場合は、1978a, 1978b, 1978cと区別する。例・住友太郎, 1978, pp.51-53

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COMMENT

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月夜野 | URL | 2012/01/22(日) 00:59 [EDIT]
今後の人生で論文を書く機会があるかアヤシイですが、勉強になりました。企画書作りの参考にします(~_~)

封筒の書き方 | URL | 2012/01/24(火) 13:12 [EDIT]
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

mimaco | URL | 2012/01/26(木) 12:36 [EDIT]
卒業論文に限らず、文章を書く、文書に整えるという作業をするときは全て同ですね。大変参考になります。
大切なのは段階を踏んだ論理的な思考の仕方と簡潔な文書の書き方。卒論はおろか演習のレポートすら課されない大学も多々あるようですが、論理的で明快な文書を作る基本は、学生のうちに身に付けておくと生涯役に立ちます。
更に言うと、きちんとした文書を作れない人は、読み手としても論理的に文脈を受け取る力も不足していたり…。
なーんて偉そうに言ってますが、自分の卒論はまさに
>バクゼンとしたテーマを掲げると一般書のまるうつしに終わることが多い
に近いものでした(一応、後悔はしましたけど~)。
>人生と一緒。
うーんん、未だにその通りかも?!至言です。

峰のシラユキ | URL | 2012/01/28(土) 23:54 [EDIT]
>月夜野さん
卒論の書き方は企画書には使えないと思うけど、結論が先にあって論を後付けすることがいかん、みたいなことは共通していると思うよ。

>封筒の書き方さん
ありがとうございます。

>mimacoさん
口で説明できても、いざ文章にすると文作ができないって人もいます。あと、口で説明できなくても、文章ができる人もいる。人間っとて思えば複雑なことができる生き物ですよねえ。

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