白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2012/06/24(日)   CATEGORY: 未分類
『チベットへのキックオフ』
 水曜日、チベット難民社会を舞台にしたドキュメンタリー、「チベットへのキックオフ」と「ミス・チベット」渋谷ユーロスペースで二本立てを見た。

 「チベットのキックオフ」(原題 The Forbidden Team / Det forbudte landshold 監督 Rasmus Dinesen and Arnold Krojgard)は、2000年の6月30日にコペンハーゲンで行われたチベット対グリーンランドのサッカーの国際試合が行われるまでのドキュメント。取材期間は、インドのデラドゥンでチベットのナショナル・チームがくまれ、ダラムサラでの一ヶ月間の強化訓練をへて、試合が行われるまで。

 普通に考えてもナショナル・チームつくって国際試合にでるにはたくさんの手続きが必要だが、チベット人には国がないので、さらに高いハードルがそびえ立つ。

1. 第一のハードル 対戦国と開催地を見つける

 この部分はドキュメンタリーでは描かれなかったが、一番難しいところ。チベットの対戦相手には、中国様の子供じみたいやがらせが炸裂するので、そのような状況に直面してもぶれない高潔な意志が必要となる。日本みたいな道徳観念が希薄で、意志も戦略もない国だと、どこの組織にもいる事なかれ主義者が試合を流してしまう。

 しかし、デンマークもグリーンランドも偉かった。グリーランドはデンマークの自治領で独立を求めているという点で、チベットと立場は似ている(ただし、チベットの場合は自治は名ばかりだが、グリーンランドは高度な自治を実現している)。だから、引き受けたのであろうし、試合会場を提供したデンマークも大人である。

 ちなみに、FIFAは試合をやめさせようとし、さらには「公式試合でない」と宣言するなど終始腰が引けていたが、その後、2003年におちゃめな事件の当事者になる。西ドイツでワールドカップが行われた際、参加国の紹介をするページで、中国の隣国に「チベット」と記載していた事件である(ぷぷぷ)。記事と写真をあげておく。

チベットを独立国と記述=中国で反発の声-FIFA公式サイト
 【北京8日時事】国際サッカー連盟(FIFA)の2006年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会に関するインターネット公式サイトでチベットが独立国と扱われていることが分かり、中国で反発を招いている。中国共産党の人民日報社が発行する日刊紙・京華時報が8日伝えたところによると、同サイトの英語版とフランス語版は中国を紹介するコーナーで、同国の自治区であるチベットを「隣国」の一つとして紹介。このため、中国のネット上で憤りの声が相次ぎ、同紙記者はFIFAに電子メールを送って、釈明を求めた。 (時事通信)[2003年12月8日15時2分更新]


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2. 第二のハードル 選手がそろわない 

 現在の国際社会のルールでは、チベット人は中国人になるか、難民として無国籍を通すか、亡命先の国の国籍をとるしかない。中国本土のチベット人はこの試合に参加したら逮捕されてしまうので、難民コミュニティから選手を選抜することになる。すると、難民は無国籍なので、パスポートにかわる身分証をインドから発行してもらわねばならない。つまり、身分証のでない選手は試合に連れて行けない。

 この結果、チベット人監督の努力もむなしく、ゴールキーパー(注 イケメン)の身分証が出ず、試合にでられなくなった。

 ゴールキーパーなし! という衝撃の現実にチベット・チームを鍛えるために雇われたデンマーク人監督は「あと5-6人いないとチームが編成できない」と悲鳴。

 そこで、チベット人監督はスイスの難民社会に電話をして「ゴールキーパーとディフェンスを送ってくれ」と頼み込む

 試合直前にゴールキーパー探している時点で、負けは決まった(笑)。

 しかし、これだけのハードルがあっても、選手も監督もサポーターも誰もネガティブにならないところが実にすごい。他でもないサッカーを愛するチベット人の気合いとチベットをサポートする人々の熱意が試合を実現させた原動力なのである

 一番に賞賛するべきは、チベット・チームを鍛えるために、チベット・サッカー協会に雇われたデンマーク人監督であろう。

 彼がダラムサラ唯一のグラウンドに連れてこられた日のことである。

 監督「ここは戦場だ。第一次世界大戦のフランダースだ。ここでは私の考えていた練習はできない。」

グラウンドはダラムサラ名物の夕方から毎日ふる雨で、ドロ沼と化していたのであった(笑)。

 さらに練習をはじめるとグラウンドの真ん中を悠然とインド人が歩行していく。

 デンマーク人監督「今、練習中なんだ。何歩いてるんだ。」

 通りすがりのインド人「・・・・」

デンマーク人監督「わかった。分かった。待つよ(失笑)」

 チベット人がデンマーク人監督に説明。
「このグラウンドの真ん中は地図の上では道になっているんですよ。」
 その後もグラウンドを牛がまったりとよぎって試合は中断(笑)。

 でも、デンマーク人監督はこういう。

 「彼らの内幾人かはマイナーリーグにも及ばない実力だ。彼らの大半は中途半端だ。しかし、小さな国だからヘタでいいということはない。やるからには本気でやらねば。試合にいけるかどうか分からない選手もいるのに、みなひたむきだ。」

 そして、強化練習に疲れ果てたチベット人選手は、日に日に暗くなっていく。チベット人は本来ゆるい民族なんだよ。それを見た監督「彼らはプロじゃない。アマチュアだ。休ませよう」と、四日間の休暇を与える。監督もやさしい。

 今回この試合をもっとも実現させたかったのはチベット人監督カルマ・ゴードゥプであろう。彼は

「今度の試合は単なるサッカーの試合ではない。チベットは夢の中の国ではなく、文明国であることを国際社会に示すのだ。われわれの言動・マナーそのすべてがチベットをみせるものでなくてはならない。」と選手たちにぶちあげ、選手たちの身分証をとるためにデリーで奮闘した。

 しかし、何人かについて身分証が発行されないことになると

 「私はパスポートの件についてはベストを尽くすといった。しかし、最善を尽くしても結果がでなかった時はどうすればいいのか」と本当につらそうだった。そして試合に負けた時もこの人だけはよよと泣き崩れていた。 この人は本当に一生懸命だった。

 そして、印象的だったのは、選手たちを見守るTCVの子供たちとサッカー好きのお坊さんたち。お坊さんがなかなかイカしたことを言っていた。

 「仏教では心がネガティブにならないように、ポジティブになるように変えていく修行をする。しかし、それは簡単なことではない。心を統御するシステムを心の中につくってはじめて、人は心をポジティブにコントロールすることができる。それはサッカーがただボールを蹴っていても敵に玉を奪われるが、システムをつくって防御し司令塔がボールをコントロールすると、試合に勝てるのと同じだ。仏教とサッカーは似ているんだよ

 そしてコペンハーゲンへ。中国の妨害は続々入り続けるし、FIFAはヘタレだし、「試合にはチベット国旗はもってくるな」などのネガティブな情報が入り続けるが、選手たちは「天国みたいだ」と緑のフィールドに大喜び。チベット難民は生まれた頃から何度もこういう経験しているので、逆に免疫できているのである。ついでにいうと、フリチベもなれっこである 笑。どの局面でも選手たちは基本的に明るい。

 そして主将の一言。「明日はスタジアムに人がいるといいな」

 確かに。グリーンランドはデンマークの自治領。チベットにとっては絶賛アウェーだ。 試合当日。カメラは選手たちとともにフィールドに入り、観客席を写しだした。すると、

そこにはチベット国旗を手にした白人観客のむれががががが。

泣けた。とあるフリチベさんも同じツボで泣けたらしい。

 なぜ泣けるのか考えてみた。

 フリチベる(今思いついた言葉 笑)ということは、どういうことかそれは、困難は当然のこととして(だって国がないんだもん。大変に決まっているじゃん)、困難にとらわれることなく、ポジティブにチベットの存在感を演出し続け、その文化を維持すること。

 不平不満が満ちあふれたこの世界で、図体ばかり大きなだだっ子を相手にしながら、ポジティブでありつづけるのは、普通の神経ではできない。しかし、なぜか真正フリチベはそれができてしまう。

 おそらくは「自分たちは護るべきものを護っている。正しい側にいる」という静かな確信が、どのような状況をもブレずに乗り切り、ハードルを平地に変える力を与えてくれるのだ。でなきゃフリチベは世代をこえて半世紀も続かない。

 あのスタジアムの光景は、様々な困難が平地になった瞬間であった。それであるが故に、泣けたのであろう。

 試合自体は1-4で負けてしまう。しかし「インビクタス」ではないけど、「勝っても・負けても・引き分けになっても」チベットの存在感は示せたとしう意味で、勝ったと言える。

*:。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜*:。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜*:。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜
 続いて「ミス・チベット」

これはインドで制作された30分の短いドキュメンタリー。見る前は、国際舞台にチベットの代表を送ってチベットの存在を国際社会に示そうとしたものの、伝統と合わないため参加者が集まらず、主宰者は苦労するという、どちらかというと主宰者よりの話かと思っていた。しかし、事実は逆であった。やっぱ見ないとダメね。

 チベット難民社会にも、あまり優秀でないため、学校をでた後も行き場がなくて、街でふらふらしている若者がいる。彼らはアメリカのストリート文化をそのまま体現してズボンずりおろしたファッションで、汚い言葉をまき散らすラップを歌って、プールバーでドラッグすって、ダラムサラにくる外国人女性をガールハントすることに命をかけている。

 当然のことながらそのような落ちこぼれた若者たちへの世間の視線は絶対零度。

 それがこのフィルムのテーマであった。いわば、ミス・チベットの主催者が、チベットの社会の四方八方から十字砲火を浴びて炎上するお話(笑)。

 ミス・チベットの主催者ロプサン・ワンゲルは長身のイケメン。ライダーブーツはいて巨大なバイクのってダラムサラの街を疾駆している。女の子にもてるためであろう(この人『チベットの祈り 中国の揺らぎ』のダラムサラの章に、ダラムサラきっての「好色家」って書いてあった 笑)。

 冒頭、彼が狭いダラムサラの細い道をオートバイで疾駆するシーンから始まる。人並みをかきわけながら、進むバイクは最後に緋の衣をきたお坊さんにぶつかりそうになって静止する。

 つまり、この最初のシーンは、彼は軽薄な欧化の象徴であり、伝統=僧侶とぶつかっていることを示している。

 難民社会の首相をつとめていたサムドンリンポチェ

 「変化には二種類あります。良くなることと、悪くなることです。我々はミス・チベットを最初から支援していません。百パーセント西洋文化の悪趣味な猿まねです。女性は社会の縁の下の力もちです。若い娘は人前で脚光をあびるべきではありません」

のっけからキター!!!!


彼の活動はチベット人の活動家なら理解しているでしょうか。

活動家「難民社会には外国の文化がどんどん入りこんでいます。彼らは近代化と西洋化を区別していません。チベット人は肉体の美しさよりも、心の美しさの方を評価します。思いやりの心をもっとも評価します。ミスチベットの舞台で、女の子が私は〔ノーベル平和賞をとった〕マンデラやマザー・テレサを尊敬しています、なんていっても、それはコンテストのためにそう言うように教育されただけでしょう? それは本人の個性じゃない。」

さんざんです。でも、主催者ロプサン・ワンゲル「ボクはチベットの社会にために何かしたいんだ。ミスの舞台にあがることで、チベットの女性も自分を表現して自信をつけ、人前で堂々と振る舞えるようになる」

これに対して、チベット女性協会の担当者「この主催者は社会に信頼されていません。ミス・チベットに選ばれれば名声もお金も手に入ります。でも参加者がいないのはなぜでしょう。保守的な両親はむすめが舞台の上にたってさらしものになるのをいやがるからです。」

で、このような人々の冷たい証言が続く中、合間合間に、たった一人のミス・チベットの参加者は、集まったカメラ小僧の前で、インド風の踊りをくねくね踊り続ける。もの悲しい。

 そして、ピンクのスーツをきて司会をつとめるロプサン・ワンゲルにも生卵?がとんでくる。この時点で、絶対零度を記録

 じゃあ、ロックをやっているチベット青年なら理解してもらえるかしら? ということで「エグザイル・ブラザーズ」(ロックバンド)登場。いっておくが、こっちのエグザイルの方が正真正銘のエグザイル(亡命者)である。

はい、彼らが作った曲です。

オレはあんたたちはどーでもいい
あんたたちもオレをどーでもいい

オレがコーヒー(西洋)を飲めば
あんたたちはバター茶(伝統)をのむ。

オレはこの街の王様だ。

これがエンディングでした(笑)。

というわけで、このドキュメンタリーは、チベット難民社会のために働きたいと思いつつも、僧侶になるような高潔さもなし、欧米にでて活躍するような才能もないため、やらかしてしまった若者たちのドキュメントでした。
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COMMENT

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● 主催者ロプサン・ワンゲル
ヌーhiron | URL | 2012/06/24(日) 11:49 [EDIT]
この春、チベタンを囲んでの大阪城公園お花見会で
"ミスチベット"の話が出ました。
「いろいろ批判はあるけど、ロプサンは彼なりの方法で
チベットを世界にアピールしてる。
僕は彼のやってること立派だと思う!」と
あるチベタンが言ってました。

それと、我がチベ友がチベット人好みの雰囲気を持ってるらしく
数年前「ロプサンも彼女のファンの一人だよ」と聞き、
その点でもロプサン氏の行動にちょっと興味持ってます。
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2012/06/24(日) 11:52 [EDIT]
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ヌーさん | URL | 2012/06/24(日) 12:54 [EDIT]
コメントありがとうございます。
ロプサン・ワンゲルはたしかにがんばっていると思いますが、女の子に手が早いという話しをいたるところで聞きました。そういう噂のある人のもとにむすめさんをさしだす両親はなかなかいませんから、やはり彼も行状を改めた方がいいと思います。彼が女好きでミス・チベットをやっていると思われれば、イベントも続きませんし。
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2012/06/25(月) 10:17 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2012/06/25(月) 10:27 [EDIT]
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