白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2013/04/28(日)   CATEGORY: 未分類
噴水口中国に帰る
昨日、中国を訪問中のフランス・オランド大統領、「円明園の噴水口を中国に寄付する」と表明した。この噴水口については、2009年2月27日の拙ブログで扱った。

 経緯を簡単に整理するとこう。

 2008年にかのイブ・サンローランがなくなった。共同経営者のピエールベルジェ氏がサンローラン氏の遺品を競売にかけ、その中には1860年にフランス軍によって略奪された円明園の噴水口もあった(サンローラン氏は合法的にこの骨董品を買った)。

 噴水口は匿名の参加者によって競り落とされたが、この落札者は中国政府の関係者で、「略奪品だからタダで中国に返還さるべき」と主張し料金を支払わなかった。そして、例によって中国人によるナショナリスティックな大騒ぎがはじまった。その時、業を煮やしたピエール・ベルジェ氏はこういった(以下当時のロイター)。

わたしはこれを正当な対価をはらって手に入れていますし、完璧に法律によって護られています。ですから、中国人たちの言うことはちょっとおかしいですね。でも、中国人たちにこのブロンズ像をすぐにでも返す準備がありますよ。彼らが人権を守ることを宣言し、チベット人に自由を返し、チベット領にダライラマが帰ることを受け入れさえすればね。

 ふいた。
 たしかに、かつて中国は自国の文化のみならず、チベットの文化を破壊し、その国を所有しているわけだから、「自分を棚に上げるな」いいたくなる気持ちは分かる。多くのチベット人はこのピエール氏の啖呵に喝采したことだろう。

 しかし、昨晩このニュースである。

■略奪の十二支像、中国に返還=ウサギとネズミ、仏企業が表明

時事通信 4月26日(金)20時0分配信

 【北京時事】1860年のアロー戦争で英仏連合軍によって北京市郊外の清朝離宮「円明園」が破壊された際に略奪された十二支のウサギとネズミの首銅像が中国に返還されることになった。高級品ブランド「グッチ」や「イブ・サンローラン」などを傘下に置くフランス小売り大手「PPR」首脳が26日、北京で中国政府幹部に表明した。
 中国メディアによると、同社のフランソワ・アンリ・ピノー会長兼最高経営責任者(CEO)が同日、国家文物局の宋新潮副局長らと会談し、ピノー家を代表して「寄贈」すると述べた。
 十二支のウサギとネズミ像をめぐっては2009年2月、パリで開催された仏デザイナー、故イブ・サンローラン氏の遺品オークションで、計3149万ユーロ(約40億円)の高値で落札。戦争の混乱で略奪された文化財の返還を求める中国政府は強く反発した。
 25日に訪中したオランド仏大統領が習近平国家主席と会談し、中国側はエアバスの航空機60機の購入で合意するなどする中、円明園から流出した文化財の象徴である十二支像の返還が決まった。
 十二支像のうち12年までに牛、虎、馬、猿、イノシシの像は中国に返還。竜は台湾にあり、ヘビ、羊、鶏、犬は行方不明となっている。 

 
 で、関連するフランス語の記事(以下にURLをはる)を検索してgoogle翻訳で英訳してみた。

http://www.rue89.com/2013/04/26/mystere-cadeau-bronzes-pierre-berge-a-chine-241845

http://www.francetv.fr/culturebox/deux-bronzes-rares-de-pierre-berge-bientot-restitues-a-la-chine-135363

 これら記事によると、ピエール・ベルジェ氏はそれが何のために用いられるか知らないまま、億万長者のピノー氏に噴水口を売ったという。記事は、「ピエール氏がチベットをめぐる問題について行った発言は正しいが、19世紀にフランス軍が円明園から噴水口を略奪したことは威張れたことではない。」といい、ピエール氏は「彼が返還するというならいいんじゃない」と皮肉ったことを伝える。

 この記事を読んで、連休の初めから実に複雑な気持ちになった。

 韓国の窃盗団が対馬から盗み出した仏像の場合とは異なり(この仏像はおそらく略奪でわたってきたのではないと言われている。窃盗団の方がむしろ略奪W)、この噴水口はアロー号戦争の時にフランス軍が略奪したのははっきりしている。なので、150年前であれば、フランスは道徳的に正しい行いをした言えないこともない。しかし、現代はその略奪から150年たっており、当時の政府とは体制も内容もかわっている。また過去の話を現代にもちこんで自分の都合のいい主張を述べだしたら、領土紛争と同じく、そこには無限の争いが始まるという問題もある。

 ピノー氏は中国から利益をあげている人で、オランド大統領は今回、このサプライズの噴水口と交換に、60機のエアバスを中国にうる商談をまとめた。無私の行動なら返還は美談といえないこともないが、この二人の立場をみると、客観的にいって今回の出来事は、自分の利益のために、チベット(今の時点ではこの噴水口はチベット問題のイメージがついている)を見捨てたことになり、これは別の道徳的な罪をおかしたことになる。

 チベット人は難民であるため、肩身の狭い思いをして生きている。それでも、ダライラマは海外にでていくチベット人に「どの国に住んでもその国に貢献する人間になりなさい。その国のよき市民になりなさい」といって送り出す。そのようなチベット人たちが、「あなたの国の利益を犠牲にして、チベットのために何かしてください」とは言うはずもない。だから今回のフランス政府の行動に表だって反対するチベット人はいないだろう。でも、逆にいえばフランス政府は「世界とは金さえあれば、道徳だろうが事実であろうが、まげることができる」と中国政府に思わせる今回の決定に問題は感じないのだろうか。腐ってもヨーロッパの大国だろう?

 フランス大統領は記者会見で、習近平との会談の中で、「チベット問題と人権問題について、あらゆるテーマについて、率直かつ丁寧な形で議論されるように」と述べたというが、これだって、「チベット問題を忘れたわけでないよ」というアリバイ作りをしたようにしか見えない。イタい。

 今回のフランスのこの行動に、中国人が「さすがはフランス人。自分のもっているものを自分から手放すなんて。自分たちにはできないわあ」と思い、自らのチベットに対する態度を道徳的に反省して、チベットを手放そうと思うだろうか。私は仏教徒なのでレッテルをはりたくない。また、中国人が自らの行動を自ら正すことができる日が来ることも信じたい。しかし、今の中国を見ているとその道は遼遠であると思わざるを得ない。
[ TB*0 | CO*1 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2013/05/06(月) 19:56 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © 白雪姫と七人の小坊主達. all rights reserved. ページの先頭へ