白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2013/09/11(水)   CATEGORY: 未分類
日本の夏を駆け抜けたチベット人
 ここのところ論文書きに集中していたり、ゼミ合宿にいったりしたので、リンポヤクさんのその後について後編をあげるのがすっかり遅くなってしまった。
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 フリチベのみなさま方は大体の経緯をご存知かと思うが、後に何も知らない人がこのブログをたどって彼の足跡をしろうとするかもしれないので、落とし前、いや記録という意味でも、前エントリーの続きの日本編後半をあげておきたい。

 あと、8月31日のウィメンズプラザに遠くから近くからお越しいただいたみなさま、本当にありがとうございました。

 以下完結編です。

8月27日 リンポ・ヤク氏はこの日、名古屋から再び関東に向けて出発した。じつは名古屋の復路については、まったく日本側のサポートがつけられなかった。そのため、みなは彼がフェイスブックにあげる写真をみながら、事故にあっていないか、事故を起こしていないか、面倒に巻き込まれていないか、どこまでいったのか、とハラハラすることとなる。

 この夜彼は一気に浜松に着いた。この間写真があまりないのは、よほど彼の心を動かすものがなかったのだろう(笑)。そして翌8月28日 リンポ氏は富士宮に着く。当初日本側がたてた予定ではここから富士山の新五合目を目指して、そのまま登山はせずに神奈川入りするはずであった。

 しかし、彼は新五合目につくと、いきなり富士登山を宣言した。FBで道行きを見守っていたサポーターは仰天。その理由をあげるとまず、富士山はその数日前から近づいてきている台風によって天候が荒れていた。そのため登山口では山頂への登山者は基本的に断っており、無理に登ろうとする人は「自己責任で」というお達しがでていたのであった。
 
 チベット仙台さんによると、富士山は毎年かなりの数の死人をだしている。事故だから新聞記事にならないだけで、火口一周の登山道からも毎年何人も転がり落ちて死んでいるという。

そんなところに、リンポ氏は登山の装備も何ももたずに登ろうというのだ。チベット人がなんぼDNAレベルで高地に適合しているといっても、彼はアメリカに移住して十数年。高山病免疫もそろそろきれるころなのに登ろうというのだ。

 さらに、日程の問題もある。走りだした後から、いろいろな予定が入ったため、当初たてていた行程は遅れ気味であった。しかし、ラストランと帰京報告会を8月31日に設定して告知しているため、帰京日は動かせない。予定にない富士登山をおこなえば、この報告会当日までに帰って来られなくなる可能性がある。もし帰ってこれなかったら、来日時のあの会議報告会よりも、すごいことになってしまう。

 客観的に言えば、絶対登山をやめさせるべきシーンである。

 しかし、前にも述べたように名古屋、東京間はサポートがいない。

 そこで、見かねたDさんとUさんが一日の仕事をひーひー終えたあと、午前二時に車で、彼のいる富士山のキャンプ場に向かった。東京をでるとき、彼を止めようとしていたのか、それともサポートしようとしていたのかはわからない。

  Uさんの証言。
 「彼はストイックで、お酒も飲まないし、喜怒哀楽もほとんど示さない。自分のことを理解してくれないなら、それはそれでいい、みたいな感じ。輪行に出ても修行僧みたいにしかめっつらで自転車こぐ画像ばっかりあげている。
 なんでも「みなさんのおっしゃる通りに」って言っていたそんな彼が、富士山登るって言い始めたら、楽しそうなんだもん。とめられないよ。」

Dさんの証言
「想像以上にタフでスピードがあるので、登頂しても予定通り東京に戻れると思った。
 彼は自転車の前輪だけをもって、登山路を登り始めた。
 世界をともに走り、苦楽を共にした愛車を一部でも、山頂にもっていきたかったのだろう。」


 あなたたち止めにいったんじゃないのぉぉぉぉ。

 彼らによると、リンポ氏は登頂のためのリュックももっておらず、いきなりカター(チベットで人と合うときに相手に礼としてささげる、白い長い布)を風呂敷代わりにして登山しようとしたという。

 再びUさん談

 「(彼らが貸した)リュックの中は、雨具、ウインドブレーカー、(貸りた)ダウン、パンとおにぎりとチョコレート、水筒、アイパッド、充電池、をぽんぽんと放りこんだ程度。
自分の荷づくりはそんなにも超適当なのに比べて、小袋から取り出したチベット国旗(法王の祝福を受けたもの)で丁寧に包み、カタで二重に縛り、首から背中にかけて いるのは、2冊の手すき紙のノート。

 焼身者120余人の名前と、チベットへのメッセージを世界各国の人に寄せ書きしてもらっているノートです。
 あと、寝る前に必ず読んでいるというペチャ(お経)も包んでリュックに入れるのを目撃しました。

彼は“巡礼者”なのだな、と改めて感じました


 仕事一日した後で、チベット人のために夜通し運転して、富士山の麓までついて、また、また翌朝は仕事にもどるなんて状況なのに、どんだけこの人たちロマンチストなんだ。

 現実的な自分は彼らの決断にひたすら呆れていた。

 その後、彼は愛車の前輪を片手に、サクサクと富士山を登り、登頂を成功させた。折しも自然遺産に登録されたばかりの富士山の知名度は世界的で、彼のフジ写真には世界中からいいね!が集まった。

 そして彼は約束通り、再び富士山をかけおり、予定通り、8月30日には横浜入した。

 マネジメント的にいえば、これはやめさせるのが正解だったと思う。結果オーライという言葉もあるが、それは、自分一人の責任の範囲内で行うときに美しいもので、命にかかわる問題や他人への影響が可能性としてある場合には、この言葉を使うべきではない。やはり無謀。

 DさんもUさんも大人だから、当然上記のように考えてもいたであろう。それでも二人が彼の登山を応援したのは、きっと、かれらの不安を超える何かがリンポ氏にあったから。

 最初、日本語もできず、日本の事情も知らず、単身走りだした時には、見守る日本人たちはひやひやしながら、彼を守り保護しようという気持ちが強かった。しかし、彼が走り続けていくうちに、そして富士山に登ろうと宣言した時点で、主導権は彼にうつった。リンポ氏がやることを見届けたいという尊敬に近い視線が生まれ始めていた。

 精神論といってしまえばそれまでだが、彼自身は寡黙で何も語らないにもかかわらず、人並みはずれた体力と運によって、見守る人をしだいに引きつけていく、その力はやはり言葉をこえた精神の力であると思う。

 最終日。8月31日。前日深夜に(笑)彼が走るルートが公開された。新横浜駅(横浜銀行前)から、在日チベット人有志ととともに、ゴールの渋谷を目指して、ラストランをするという。地図をみると、東京に入る瞬間は丸子橋である。

 気がつくと私は暑い中、フリチベTをきてフリチベ旗をもってなぜか丸子橋で彼を迎えていた(爆笑)。

 後部にチベット旗をとりつけたかれらの自転車が丸子橋をわたる光景は実にまあさわやかというか、派手というか、印象に残る光景だった。リンポ氏の旅自体は民族の悲劇とか彼個人のいろいろな思いとかがあって重いものなんだけど、私にとってもわけわかんないうちに巻き込まれた話であり、いろいろ言いたいこともあったんだけど(そのほとんどはこのエントリーで垂れ流していたが 笑)。あの光景は爽快だった。
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 そして、夕方の報告会。遠くから近くから、多くのフリチベさんが集まってくれた。質問されたことだけをとつとつと答える、プレゼン下手の、寡黙なチベット人が、いつのまにか、チベット・ファンの中に一体感をもたらしていた。

 チベット仙台さん
「彼にはluck(運)がある。彼の輪行はいままでのどんなアクションよりも新聞にとりあげられて、効果的にチベット問題を周知させた」
 
 帰京後、彼はRFAのインタビューなどをうけ、議員会館めぐりなどをした後、9月6日に台北に向けて旅だっていった。

 その後日本は急速に秋めいた。

 次エントリーは高野山ゼミ旅行です。
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COMMENT

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mimaco | URL | 2013/09/12(木) 12:40 [EDIT]
>彼は自転車の前輪だけをもって、登山路を登り始めた。

wwwスゴイ、この感覚www。
途中まで(職場の昼休み中)笑いを堪え肩を震わせて読んでいましたが、

>焼身者120余人の名前と、チベットへのメッセージを世界各国の人に寄せ書きしてもらっているノートです。

ここで急に涙目に。新喜劇でもみているのか?って状態です。周囲に情緒不安定の烙印を押されそうです。

報告会に行くことができず、残念ながらご本人にお会いすること叶いませんでした。
日本での行程が無事達成できたことを祝福し、この先の旅路もこれまでのように「luck(運)」に満ちたものとなりますように!

サポートされた皆様にも、陰ながらおつかれさまでした!!
● ありがとうございました
K.ランジ | URL | 2013/09/17(火) 08:23 [EDIT]
ヤクさんの報告会参加出来て楽しくお話しを聞く事が出来ました!
同じ年に生まれた人がこんな人生を歩んでいると知ると、私も頑張ろうと勇気が出ました。
次回日本に来たら、伊勢神宮に是非参拝してみてください。
綺麗なところですよ(^-^)

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