白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2014/02/11(火)   CATEGORY: 未分類
ワークショップ: 古代チベット王国の栄華
 15日(土)のチベット・ワークショップの題名は「古代チベット王国の栄華」となりました。そこで残念なお知らせがあります。院生Mが逐電し連絡がとれなくなりました。鬼のように着信を残し、メッセを送りましたが、まともな説明はなく、1回だけかかってきた電話は「バイト先には来ないでくださいね」と一方的にいって、切られたのであった。

 私はストーカーか(怒)

 しかし、ここで「昔の学生はなあ、師匠をかくかくしかじかに敬ったものだ」とか説教しても、BBA呼ばわりされるのがオチなので、ここは耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、責任をとって私が土曜日の講師をすることになりました

 ていうか、現実問題として無報酬・四日前じゃ、誰もやる人いない。

 あはははははは。

 ここ数日私の姿を見物していたダンナ様は「あなたが、なれないメッセージを一生懸命、ケータイで打っている姿には目頭があつくなったよ(院生Mはメールもあけないし、電話にもでないのでケータイのメッセしか連絡手段がない)」と笑い(注; 泣いてない)、もう愛想銀行の預金も尽きた。

 でもA型の私はどこかでこの事態を予測しており(ちなみに院生MはB型)、実は唐蕃会盟碑のテクストもパワーポイントも大体作ってあった。よく天才的なアーティストの初舞台って、主役が急病とかででられなくなったその代役を立派に務めたことだったりするけど、若いモンの尻ぬぐいでロートルが代役をつとめても何の未来もないわい。

 ああ、神様・仏様。チベット史を研究する優秀な若い学徒を我に授けたまえ。もう日本人でなくてもいい。どこの国の人でもいい。宇宙人でもいい(あ、院生Mは宇宙人て呼ばれてた 笑)。

というわけで、あらためて土曜日のワークショップのお知らせ

演題;「古代チベット王国の栄華 唐蕃会盟碑を読む」
場所; 新宿区若松地域センター 第一集会室(アクセスはここクリック)
時日; 2月15日(土曜日)18:30から
講師; 自分W (早稲田大学教育総合科学学術院教授)
参加費: 無料


 腹を立てていても建設的ではないので、2月15日のメインテクストである唐蕃会盟碑の和訳を以下にあげます。私の専門は17世紀以後のチベット史なので、古代チベットは専門から外れるので、不正確な部分もありますが、draft onlyてことで、よろしくお願いします。

 古代チベット最盛期の王レルパチェンが唐の皇帝穆宗との間で822年に戦争を終結するために結んだ盟約の西面和訳です。文面から対等の二国間で講話しているということは彰かですよね。


1 チベットの大王
2 神通力をもつ神ツェンポと
3 中国の大王・中国の君主・皇帝
4 甥舅二者は、国政を
5 一つにしようと話し合い、
6 大会盟をされて、盟約したことは
7 常に変わることなく、
8 神と人すべてが知り証人となっ
9 て、世々代々に、語り伝えていく
10ために、盟約の
11 文言を碑文に書いたのである。

12 神通力をもつ神ツェンポ=ティツク
13 デツェン御前と中国の君主
14 文武孝徳皇帝、神通力をもつ甥
15 と舅の二人は、深謀遠慮によって
16 長期的・短期的な善
17 悪をすべてご存じであり、大
18 悲によって、恩恵で覆うこと
19 に内外の区別なく、大衆すべてを安
20 楽にすべきことにおいて御心は一致した。
21 永続する善という偉大なる目的のために
22 議論はまとまり、かつての
23 親戚関係の栄誉を新たにし
24 隣国を喜ばせる方策を
25 話し合い、大会盟を
26なさった。〔その内容は、〕チベット・中国の二国は現在
27 支配している国土と境界を守
28 り、その東方の全ては
29 大中国の国土、西方の全ては
30 確かに大チベットの
31 国土である。これより以後は互いに敵として
32 争わず、軍隊を引かず、国土を
33 侵犯せず、疑わしいことがあれ
34 ば、人を捕らえて尋問し、
35 装備をつけて〔それぞれの本国に〕返す。
36 今、政を同じくし、大会
37 盟をこのようになさったので、
38 甥・舅の間で気持ちの良い親書を
39 交換し続けるべきである。すなわち、
40 相互の使者の往来も、古い道を
41 通って、昔のように、
42 チベット・中国二国の間の将軍
43 谷にて馬を換え、綏戎柵にある
44 中国と接する下流側(東)は中国が〔使者を〕もて
45 なし、清水県においてチベットと接する
46上流側(西)は、チベットが〔使者を〕もてなすべきである。
47 甥舅の二者は親戚関係の伝統に従い
48 尊重と尊敬の風が
49 あるようにして、二国
50 の間に、〔戦〕塵は起こらず、突発的な
51 憎しみや敵対の名を聞くこともなく、
52 国境を守る者に至るまで
53 疑い、恐れることなく、
54 それぞれの土地、寝床でのんびりと、安ら
55 かに暮らすので、幸せの恩恵は
56 万世にわたって得られる。〔和平を〕称える
57 声は日月の至るすべての地を
58 覆い、チベット人はチベット国にて幸せになり
59 中国人は中国にて幸せになるという偉大なる政事を
60 打ち立てて、盟約した。この〔盟約〕が
61 常に変わることなく、三
62 宝と、聖人達と、
63 日月と星宿をも証人として
64 召喚、盟約の内容をもって
65 説明し、生き物を殺して誓いを
66 立て(mna' bor)、盟約がなされたのである。
67 この盟約に従わず、あるいは
68 〔盟約を〕破ったならば、チベット・中国二国のいずれが先に
69 罪を犯し、〔その〕報復としてどのような策謀を行っても
70 盟約を破ったことにはならない。
71 このようにチベット・中国 二国の君臣が声に出して
72 懺悔し、盟約の
73 文言を詳細に記して、大王
74 二人が捺印した。
75 盟約に加わった大臣たち
76 は手づから署名して、盟約の
77 文章もそれぞれの〔国の〕蔵に所蔵されたのである。

西面漢文

1. 大唐文武孝徳皇帝[與]□□□大蕃聖神贊[普]  舅甥二主商議社禝如一結立大和盟約永無淪替神人倶以證知世世代代使其稱賛是以盟文節目題之於碑也
2. 文武孝徳皇帝與□□□□□□□□[賛陛下二聖舅甥濬哲]鴻被暁今永之屯亨矜愍之情 恩覆其無内外商議叶同務令萬姓安泰所思如一成久遠大善再續慈親之情重申隣好之義爲此大和矣今
3. 蕃漢二國所[守現管]本界□□已東大唐國界已西盡是大蕃境土彼此不爲寇敵不舉兵革不相侵謀封境  或有猜阻捉生問事訖給以衣粮放歸  今社禝叶同如一爲此大和然  舅甥相好之義善□
4. 毎須通傳彼[此驛]騎一□□□□□[舊路]蕃漢並於将軍谷交馬其綏戎柵已東大唐祇應清水縣已西大蕃供應須合  舅甥親近之禮使其兩界煙塵不揚罔聞寇盜之名復無驚恐之患封人撒備郷土倶
5. 安如斯樂業之□□□□□□□[美之] □ [遍]於日月所照矣蕃於蕃國受安漢亦漢國受樂茲乃合其大業耳依此盟誓永久不得移易□三寶及諸賢聖日月星辰請爲知證如此盟約各自契陳刑牲爲盟設此大
6. 約儻不依此誓蕃漢□□□□□□[君臣]禍也仍須讎□及爲陰謀者不在破盟之限  蕃嘆君臣並稽告立誓周細爲文  二君之驗證以官印登壇之臣親署姓名手執如斯誓文蔵於王府焉



参考にした文献
Li, Fang Kuei 1956 "The Inscription of the Sino-Tibetan Treaty of 821-822", T'oung Pao, 44; 1-99.
Li, Fang Kuei and Coblin, Weldon South 1987 A Study of the Old Tibetan Inscriptions, Taipei: Institute of History and Philology, Academia Sinica.
佐藤長『古代チベット史研究』同朋舎1959
森安孝夫 1984「吐番の中央アジア進出」『金沢大学文学部論集史学科篇』4 :1-85.
Iwao Kazushi 2013 Reconsidering the Sino-Tibetan Treaty Inscription, Journal of Research Institute(『研究年報』Proceedings of the Workshop B of the 17th Himalayan Languages Symposium), Vol.49: 19-28
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● ダライラマ猊下、米国大統領と会談
マサムネ | URL | 2014/02/22(土) 09:54 [EDIT]
御苦労様でありました。
豪雪の影響が気に掛かるところ、後日報に委ねたく存じます。

下記の歴史的事件?にて貴姉御労苦も報われますことあれば、何よりかと存じます。
ダライ・ラマと会談 米大統領、中国に対話圧力 産経22日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140222/amr14022208590002-n1.htm
● オバマさん
シラユキ | URL | 2014/02/23(日) 00:20 [EDIT]
>マサムネさん
ダライラマ法王と国家元首が会見すると中国はその国に三年くらい経済制裁を行うので、小さな国の元首は結局びびって法王との交流を避けるんですよね。オバマさんが今回法王にあったのは腐ってもアメリカということなのでしょう。

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