白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2014/07/31(木)   CATEGORY: 未分類
学者が切られ、セクハラ部長が残る怪
 教育・研究は、経営とか効率とかとは次元の違う世界である。良い人間を育てる、良い研究することは、いくらかかるとか、いつまでにとかいう金や期限できったりすることも、その「成果」をどう判断するかも難しい部分がある (今は気がつかなくても後で気づいたり、研究もその小さな発見が大きなうねりになったり)。もちろん今の時代に生きる以上、教育や研究も一般にたいする成果の還元や金銭の明朗な管理などがある程度は必要なことは認める。しかし、行き過ぎはいけない。

 ボタン一つおして何千万もうかる投資の世界からみると、研究・教育は何の利潤も生み出さないように見えるかもしれない。しかし、研究・教育は金や規則が基準の世界にはおこりえない献金術をおこすこともある。そして、それがおきると世界が一変するいわばメタレベルの錬金術。

 教育だったら、ダメ人間が真人間になるというミラクル、研究だったら、地味な基礎研究から未来をかえる発見がうまれることもある。株や不動産の上下動でいくばくかの金が得られても、金は金。金は人の心をダメから聖者にかえる力もないし、教養や発見を生み出す環境は提供できても、それらをうみだす主体にはなりえない。金で買えないものは世の中にはたくさんあり、世の中はむしろ金で買えないものによって成り立っている。

 とある研究機関とか教育機関とかにおいて、銀行(=金)とか総務(=規則)の論理が力をもちすぎ、研究者を見下しはじめると、研究者のインセンティブが悪化し、有能な人が離れていき、結局は教育も研究も何の目的もなしとげられない結果におわる。飛べない飛行機、まわらない風車、みたいなものしかできなくなるのだ。世の中には金の論理だけで動かすとダメになるものもあるのである。
 功成り名無し遂げて財をなした人が教育や福祉や研究に熱心になるのは、実は金で買えないものがあることを一番知っているのが彼らだからかも知れない。

 で、前置きはここまでにして、徳川美術館である。 この美術館では六月、セクハラを行った管理部長(銀行出身)を、副館長(研究者)がただしたところ、なぜか副館長の方がクビを言い渡された。

 逆だろ。

 今の大学では、教授がパワハラ・セクハラやったら解雇だよ。なんで管理部長がやめさせられないのかを推測すれば、この部長銀行からの天下りなので、財団側としてはお・か・ねを握られているから? 

被害にあった職員によると、この部長「セクハラ我慢したら、ボーナスアップ」とか脅していたというので、この管理部長、ものすごくわかりやすくいえば、お金をちらつかせて、女の人も徳川美術館自体も思いのままにしようとしていたふしがある。

 この手の話は実は小さな財団や研究機関や大学ではよくある話であり、本当に腹立たしい。

 人間の尊厳や研究や教育という金銭に換算できないものを 金の力で何とかしようとする人を腹立たしいと思う方、もしいらっしゃいましたら、 こちらで現場の学芸員一同が署名活動しております。→ http://chn.ge/1rFTPxt
 
 龍谷ミュージアムの館長さんも怒っています。

以下は署名サイトにある、クビをきられた副館長さんお二人の美術館に対する貢献を述べたくだりです。

 徳川美術館 副館長 四辻秀紀氏、また管理部係長大田智恵氏が2014年5月29日に公益財団法人徳川黎明会(以下財団とする)より退職勧奨を受けました。退職勧奨の理由は、「内部情報の漏洩と、それにより財団の名誉と信用をおとしめたこと」であると口頭で伝えられました。しかし、現在に至るまで両名への十分な事情聴取、および説明はなされておらず、両名は退職に値するような重大な問題行動は身に覚えがないとしてこれを拒否しました。その後7月14日に、財団は本人に説明なく四辻氏の副館長職を解き、館の代表の座を取り上げ、両名への退職勧奨は取り下げず現在に至っています。

 四辻秀紀氏の勤続年数は30年を数え、企画情報部長・学芸部長を経て、2007年より副館長(学芸部長兼務)を務めています。高い評価を得た展覧会を数々担当し、論文も多数執筆するなど、研究者としての実績は美術史関係の学会でも大いに認められるところであり、後進の指導にも熱心にあたっています。

 大田智恵氏は勤続25年で、2013年からは管理部係長として職務を全うしてきました。また、自身で茶道裏千家に入門し、2011年5月には専任講師(茶名)の免状をとり、徳川美術館で行う徳川茶会では茶道の知識に裏付けられた円滑な運営に尽力してきました。

 両名ともに、徳川美術館のみならず地域の文化活動に多大な貢献をしてきたことは美術館内外で認められるところであり、四辻氏は徳川美術館の学芸代表として余人をもって代え難く、大田氏もまた、徳川美術館にとって欠かすことのできない人材です。

 美術館の業務は多種多様であり、さまざまな職種のスタッフが全員一丸となって運営にあたってはじめて、貴重な美術品を適切に管理し、皆様に楽しんでいただける展覧会を開催することができます。この徳川美術館と美術品を守っていくためにも、一日も早く両名の退職勧奨の取り消しが叶うよう、一人でも多くの方のご署名を公益財団法人 徳川黎明会 会長 徳川義崇氏に提出したいと思います。

 この趣旨にご賛同いただき、ご署名いただければ幸甚に存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

                                    徳川美術館学芸員一同


 申し立てをしなかったのか、というコメントがついたので、参考までに以下の記事もあげておきます。セクハラについては被害者が申し立てをしています。


徳川美術館の管理部長がセクハラか 女性職員2人、労働審判申し立て
2014.6.12 15:49 [事件・トラブル]

 徳川家康の遺品などを収蔵、展示する徳川美術館(名古屋市東区)の女性職員2人が、男性管理部長(60)からセクハラやパワハラを受けたとして、美術館を運営する財団法人「徳川黎明会」に対し、計400万円の損害賠償を求める労働審判を名古屋地裁に申し立てていたことが12日、関係者への取材で分かった。

 関係者によると、女性職員2人は管理部長が2人の体に触ったり、デートに誘って断られると「業務命令だ」と威圧したりしたと主張。徳川黎明会が職場環境の改善に取り組まなかったと指摘している。

 徳川黎明会は「申立書が届いていないので詳細を把握できていない。今後、対応を検討していきたい」としている。管理部長は「やっていない」と否定している。2人がセクハラやパワハラを受けていたという内部通報はなかったという。

 徳川美術館は1935年開館。尾張徳川家に伝わる国宝9件、重要文化財59件などを収蔵している。


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後日談です。徳川美術館はセクハラの存在を認め「遺憾の意」を表明し、調停が成立しました。2015年には再高裁で海遊館のセクハラが認められたので、職員さんがもう少しがんばつたら美術館ははっきりとした謝罪をしていたかもしれません。

徳川美術館セクハラ認める 運営財団、職員と調停成立
『中日新聞』1914年10月29日

 尾張徳川家の至宝蚩辰示する名古屋市東区の徳川美術館で男性管理部長(六〇)からセクハラなどを受けたとして、女性職貝二人が週営する財団法人「徳川黎明会」(東京都豊島区。徳川義崇会長)に計四百万円の棡害賠償を求めて名古屋地裁に申し立てた労働審判は二十八日、調停が成立した。財団側はハラスメント(嫌がらせ)と受け取られる行為があったことを事実上認め、女性職員側は損害賠償の請求を放棄した。

 管理部畏はハラスメント行為を全否定していた。職轜側の代理人弁護士によると調停では①財団は管理部長の言動が職員との融和目的であったもののハラスメント行為と受け止められたことを真摯に受け止めて遺憾の意を表明する②申立人は財団に損害賠償義務がないことを確認し謫求を放棄する--ことでまとまった。財団がハラスメント行為防止の研修と人員の再配置を行うことも盛り込まれた。
 女性職員らは取材に「賠償よりセクハラ行為を認めてもらうことが目的だったので、その意味ではよかった。ただ「遺憾の意」でなく、きちんと謝罪してほしかった」と話した。
 財団側は「若干の誤解はあったかもしれないが、損害賠償は発生しないとのことなので、不法行為はなかったものだと理解している」とコメントした。
 申立杳によると、四十代と五十代の女性職員二人は昨年一月~今年五月、食事や旅行に誘われ、運転する車に強引に同乗されたという。誘いを断ると「業務命令だ」「セクハラに付き合えばボーナス十万円アップ」などと言われたと主張。財団には使用者責任があるのに、職場環境を改善しなかったと訴えていた。

続く混乱、企画展めど立たず

 徳川美術館を揺るがしたセクハラ問題で調停が成立した。一連の騒ぎで財団内が割れ、来年の開館八十周年に向けた企画展の準備や運営が懸念されている。
 関係者によると、二人の女性職員は当初、副館長職を兼務する学芸部長に相談した。同部長は管理部長に荏意し、財団本部に調査を求めた。だが、財団執行部は銀行出身の管理部長の主張に沿いセクハラを否定。学芸部長と申立人の一人に職務規定違反があったとして退職勧奨し、学芸部長は副館長職を解かれた。
 反発した美術館の職員有志は退職勧奨の取り消しを求めて九月、約二万筆に上る署名を徳川会長に提出。財団側はホームページで反論を掲載して対抗するなど、お家騒助が続いた。職蝿の有志は九月末、労働組合を鞳成した。
 騒動で、来年が開館八十周年にもかかわらず企画展のめどが立っていない。名古屋大の栗田秀法教授(博物館学)は「運営上のトラブルで美術館の本来の活動が停滞することがあれば美術界の損失だ。日本では美術館が果たすべき便命などをめぐり、時として運営側と現場の思いが行き壥つ。伝統ある徳川英術館は他館の模範であり続けてほしい」と早期正常化を期待する。


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COMMENT

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● ?
ラン | URL | 2014/07/31(木) 21:16 [EDIT]
セクハラおよびパワハラ被害にあわれた方は、訴訟を起こされているのですか?
労働基準監督署に不当解雇勧奨とセクハラおよびパワハラで相談されて、改善命令を出して貰って、それでもダメなら係争ではないでしょうか?
裁判に持ち込めなくて、署名集めなのですか?


シラユキ | URL | 2014/07/31(木) 21:46 [EDIT]
ランさん、労働審判には持ち込んでいます。
以下の記事をご覧ください。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140612/crm14061215490012-n1.htm
● 徳川美術館側の説明
| URL | 2014/08/05(火) 09:46 [EDIT]
http://www.tokugawa.or.jp/taishoku-setsumei.pdf
なんか話が微妙に違ってますね

シラユキ | URL | 2014/08/05(火) 10:35 [EDIT]
みましたが、当該の管理部長のセクハラ問題を、全然別の問題にすりかえており、世の中の付託に応えているとはいえない文章です。
会長はプログラムで会社をおこした経歴をお持ちのようですがお手製のHP↓
http://www.tokugawa.org/~toku/profile.html
をみて脱力しました。文系の素人が作ったようなページです。
改革をするなら結構ですが、合法的に世の中の誰からも指弾されない形ですればいいことです。
 この内容の文章では世間の理解は得られないですね。
● 徳川家の危機?
マサムネ | URL | 2014/08/05(火) 20:24 [EDIT]
副館長殿の不当解雇に関する件は、連携あるのでせうか?
副館長殿が面倒に巻き込まれるを避けるが如き想念で、協力関係が築けない、とすれば残念であります。
もしも協力が得られれば、少なくとも圧力を以て正当な調査を行わなかった件について、当局のお達しあるものと思われるのですが。

付言ながら、小学生の得度の記事

夏はくりくり頭で 東本願寺で臨時得度式 産経新聞 8月5日

日本仏教に対する今枝氏の高論を想起いたします。

徳川家も奮起して、経営による存続ではなく、家風も踏まえた伝統の継承という観点で、威儀を正して下さるを願うばかりです。

シラユキ | URL | 2014/08/06(水) 09:10 [EDIT]
>徳川家も奮起して、経営による存続ではなく、家風も踏まえた伝統の継承という観点で、威儀を正して下さるを願うばかりです。

全面的に同意します。今回の件は本当に徳川家の体面を保つなら、今回の件は管理部長を所断するのが正当でしょう。

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