白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2014/10/10(金)   CATEGORY: 未分類
映画『オールド・ドッグ』とチベットの今
早稲田祭でチベット人ペマツェテン監督がとった『オールド・ドッグ』を上映します。
「チベットの今」という演題で私も解説します。詳細はこんなカンジです。

映画『オールド・ドッグ』とチベットの今
*日時:11月1日
*場所: 早稲田大学本部キャンパス15号館101
*料金: 学生: 無料 一般: 500円
*プログラム
14:00 開場  14:15 開演: 司会挨拶
14:30〜16:00 『オールド・ドッグ』上映開始
16:00〜17:00 石濱裕美子解説「チベットの今」

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※主催: オールド・ドッグ上映委員会 
  共催: 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
言語の動態と多様性に関する国際研究ネットワークの新展開(LingDy2) プロジェクト

 チベットをテーマにした映画は、マーティンスコセッシ監督『クンドゥン』(1997) ジャンジャック・アノー監督『セブンイヤーズ・インチベット』(1997)など数多く作られてきたが、ハリウッドのメジャーで公開されたため、若き日のダライラマが直面する亡国の悲劇の描写には素晴らしいものがあったものの、ダライラマ14世をはじめとするチベット人がみな英語をしゃべる違和感と闘わねばならなかった(笑)。

 しかし、この『オールド・ドッグ』は主人公はチベットの庶民であり、使用言語はむろんチベット語で、監督も本土チベット人。そこで描かれるテーマは、漢人の支配下において、急速に失われていくチベットの民族性である。本土チベットで映画制作を行うという制約がある中で、監督はよくここまで踏み込んだ描写を行ったものと思う。
 
 そこでは二種類のチベット人が描かれている。一方は、民族衣装をまとい、昔ながらの遊牧生活を営むチベット人、もう一方は漢人の社会に溶け込んで漢人と同化して生きるチベット人である。前者の代表は主人公の老人である。彼は遊牧生活を営んでおり、一人息子のゴンポとその嫁ルンツォが同居している。息子のゴンポは二種類のチベット人の境界に存在しており、馬ではなくバイクにのるがその胸中は父に共感する部分もある。

 一方のチベット人は町にすむチベット人で、老人の甥で町で公安の職についているドルジや小学校教師をやっているルンツォの姉である。中国政府は漢人の数の力でチベット人の同化を勧めているので、後者は生きるためにもっとも適した職業選択をおこなったにすぎない。彼らはもちろん普通にいい人たちで、牧地にすむ老人一家のためにいろいろと力になってやっている。
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 主人公の老人はチベッタン・マスチフの老犬を飼っている。チベットの遊牧民は狼や盗賊から家や家畜をまもるため、昔から巨大な犬を飼う習慣があった。チベタン・マスチフは世界最大の犬であり、チベットでもドム(熊)と呼ばれている。この世界一というフレーズが経済力をつけた漢人の富裕層の虚栄心にマッチし、多額の現金をもつ彼らは、「国産」(漢人からみるとチベットは中国)の世界最大の犬を手にすることに奔走した。そのためチベッタン・マスチフの市場価格はつり上がり、チベットの遊牧民の家庭からチベット犬が盗まれ続けた。その泥棒の中には中国人もいれば、金に目のくらんだ若い世代のチベット人たちもいた。

 そんな悲しい状況の中で老人は孤高である。どうせ盗まれるくらいならお金に換えようと息子のゴンポが中国人の王(ワン)に犬を売りに行くと、それを取り返しにいく。

 なぜなら、その純潔種の老犬こそ、伝統的な遊牧民の生活スタイルと価値観の象徴だからだ。この犬を金に換えるということは、老人にとってチベット人の魂を捨てて漢化(=金)を受け入れることにほかならない。

 漢人と漢化したチベット人はお金以外の尺度がないので、老人が犬を売らないのは、もっと値をつり上げようとしているのだと邪推し、さらに犬の値段はつりあがっていく。もちろん、老人は決して売ろうとしない。
 犬泥棒は常時そのあたりをウロウロしている。

 さあ、老人が最後に下した決断は・・・・。

 て、もちろんめちゃめちゃに暗い話にしかなりません。

 学生はこういう。「センセー、早稲田祭っていうのはね。AKBとかアイドルの公演がとっても安く身近なキャンパスで見られることで皆もりあがるんですよ。こんな渋い映画に誰もきませんよ」という。

 私「でも学生無料にしたし、ミニシアターや文芸ファンには共感してもらえると思うし。香港国際映画祭や東京フィルメックス映画祭で金賞もとっているよ。学園祭でこういう硬派の企画するのは王道だよ」

 学生「でも友達誘っても誰一人応じてくれないんですよ」

 え、学園祭っていつからアイドルの公演と屋台の集まりになったわけ?  私いつのまにか主人公の老人状態?

 というわけで、このページをご覧になっている方にお願い。
 みなさんの周りでミニシアターとか、マイノリティとか、民族問題とかに興味のある方に、この企画の詳細をお伝え頂けないでしょうか。
 映画は暗いです。ラストは見るにたえません。
 しかし、これは今現在進行している一つの現実で、深奥の部分ではじつは私たちともかかわっている問題なのです。

 私たちも、グローバリゼーションに巻き込まれていく中で、合理性・経済性の名の下にいろいろなものを失ってきました。
 一方でマジョリティの一員として異なる他者に自分の考え方を押しつけることもあります。
 この孤高の老人と老犬(オールド・ドッグ)は私たちの認めたくないこの状況を思い起こさせてくれます。

 みなさま、ぜひぜひ早稲田祭の見学もかねておこしください。ゼミのOB の方、私が空気にしゃべることにならないようにご協力お願いいたします。
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