白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2014/12/29(月)   CATEGORY: 未分類
チベット・オタクから見た2014年の世界
△無理が通れば道理ひっこむ

 例年、この時期チベット関連五大ニュースを発表しているのだが、今年はチベットをとりまく世界情勢をまず概観したい。

 1959年にチベットが中国に占領されて国として消滅して以来、チベット人は非暴力と許しをもって中国の心を変えようと努力しつづけきた。非暴力運動による独裁政府の転覆自体は世界の趨勢となり、1989年のポーランドの普通選挙実現、ベルリンの壁崩壊、ハンガリーの民主化、ビロード革命など東ヨーロッパの北部では無血の体制転換が実現した。いずれも市民の体をはった非暴力デモがきっかけである。一方、ルーマニア、旧ユーゴスラビアでは血が流れ、中国に至っては天安門事件で大流血したあげく、一党独裁体制すら変わらないまま今年で25年である(笑)。

 あの魔法がかかったような1989年、ノーベル平和賞の受賞者はダライラマ14世であった。

 天安門事件に激怒した国際社会は、非暴力をもって中国と気高く闘ってきたダライラマ14世を顕彰することによって、国民を虐げないように警告したのである。この年を境にダライラマ14世の認知度は世界レベルとなり、ダライラマは世界中で尊ばれるようになった。しかし、そのような時代は長くは続かなかった。1997年に中国はWTOに加盟し、世界市場に参入した経済力を武器に、自らの体制に批判的な言動を封じ始めたからである。

 2008年に中国の民主化をとなえる劉暁波氏が08憲章をリリースすると、投獄され、氏がノーベル平和賞を受賞すると、中国はノルウェーサーモンを禁輸し、倉庫で腐らせるままにした。2年前中国がフィリピンと領海を争った時はフィリピンバナナが大量に倉庫で腐った。ゲッティンゲン大学は「ダライラマ効果」という報告書で「ある国の国家元首がダライラマと会見すると、その国の対中輸出は必ず減少し平均二年続く」という研究を行っている。

 このような中国による地道なイヤガラセが功を奏して、近年はダライラマ法王との面会を避ける国家元首が増えてきた。現実を前にして理想が敗北しているのである。

 つい最近では、ノーベル平和賞サミットでローマを訪れたダライラマ14世は、ローマ教皇に面会を断られた。フランシスコ法王は国交のない中国政府に対話を呼び掛けているからだと解釈する向きがあるが、これまで中国政府は対話するするといいつつ、対話の席では自己の主張を述べるだけということを繰り返してきたので、ローマ法王がそれを知らないはずはない。おそらくフランシスコ法王は対話よりも中国国内のカトリック教徒がイヤガラセで弾圧されるのを恐れたのだろう。

 まあ早い話、中国は経済力と軍事力と国際法無視の不条理さによって、〔事なかれで〕穏健な国際社会を黙らせつつあったのである。

 今年、キッシンジャーが世にだした『世界秩序』(world order)の中で「東アジアはナショナリズムで頭に血が上っていて、民主主義とか西側の理想を根付かせるのはムリ。もう東アジアはほっとけ」というようなことをいったのは象徴的である (この本は中国の方々に大変評判がよいとのことである)。

 中国とは関係ないが、ロシアがクリミアとウクライナ東部を力で編入したのも同じ流れである。思えばロシアのこのような行動は、2008年の北京オリンピックの開会式に行われたグルジア侵攻から始まっている(今もグルジアは国土の一部をロシアに占領されたまま)。我々が異常と思ってきたことが、常態化しそうなイヤな気配が漂う今日この頃である。

△隣国のリアクション

 中国のこのような行動は直接間接に隣接する国々に脅威を感じさせ、香港、ベトナム、日本、台湾では以下のようなリアクションが始まった。日付順に並べる。
 
(1)台湾のひまわり学生運動 
  3月18日~4月10日 馬英九政権が中国政府との間に「サービス貿易協定」を結ぼうとしたため、これに反対する学生が、立法院議場を占拠。その時差し入れられたヒマワリの花(太陽花)が運動の象徴に。政権は学生に譲歩し、馬英九率いる国民党は統一選挙で大敗。

(2) ベトナムで反中デモ
   5月13日~15日 南シナ海で中国の石油会社が違法な掘削リグを設置し、それを阻止しようとするベトナムの巡視船と衝突。ベトナムは国際社会に法に則って中国の不法を訴えつつも、このデモは暴徒化し中国人を中心に16人が死亡。

(3)香港雨傘革命  
7月~12月12日 7月1日に香港返還20周年を記念して返還以来最大の50万人デモがおきた。その後、民主的な選挙の導入を求める学生たちが、香港の金融街など数カ所を占拠して行政機能を麻痺させた。当局の催涙弾や唐辛子スプレーに雨傘で防戦したため雨傘が運動(中国政府にとっては取り締まり)の象徴に。香港政府は一切譲歩せず、12月、金鐘にあった最大拠点が強制排除されたのを受け、学生2団体は撤退を決定。これは暗いニュース。

(4) 日本は集団的自衛権を閣議決定
  7月1日安倍内閣は集団的自衛権を閣議決定。12月の衆院選挙で自民党圧勝。しかし、共産党が躍進し、極右の次世代の党が壊滅したので、右傾化したとは言えない。

 つまり、今年は中国とロシアの「力による現状変更」が一線を越えたため、周辺の国々で具体的なカウンターアクションが始まった年ともいえる。

 一つ明るい話しをすれば、香港の学生を制圧するために、一応中国は銃はうたなかったので、天安門に多少は学んでいるのだろう。あと、ロシアもクリミア東部を編入する際、覆面の男たちを使い、彼らがロシア軍属であることをかくしていたので、少なくとも威張ってやっていいこととは思っていないところに、わずかながらの良心を感じた。わずかだけど。

  そして、忘れてはならないのは『朝日新聞』の凋落。朝日新聞といえば、かの文化大革命の際に中国政府の言うことをそのまま日本に流し、唯一北京から支局が追放にならなかった外国メディアである。1989年のダライラマのノーベル平和賞受賞の際に社説で「中国を怒らせるなら平和賞の名にふさわしくない」と水を差したのも朝日である。つまり、朝日はずっと中国に配慮した記事に終始していたが、最近は2010年に劉 暁波さんがノーベル平和賞とった際には、劉さんの側に全面的に立ち中国政府を批判するなど 随分中国政府に辛口になっていた (ダライラマの場合と状況は同じなのに社説の内容が変わった。ちなみに中国政府のコメントは25年たってもまったく同じ 笑)。
   
私は朝日新聞をたたく気は毛頭ない。もう社会的な制裁は受けているし、権力は監視した方がいいし、水に落ちた犬を叩くみたいなこともしたくないから。でも一言言いたい。

  文化大革命の時、市民がリンチで次々殺されていた時、あなたたちはそれを報道せずに、エドガー・スノーの毛沢東会見記とかを詳細にのせて彼の偶像化に貢献していましたよね。あの時、あなたたちは中国という権力を監視していましたか? チベットにいってチベット人達のナマの声を取材していましたか?

 チベット報道は吉田証言を裏を取らずに使った誤報問題と同根なのである。『朝日新聞』の偉い人たちは自らの主張を読者にすりこむことを優先し、都合の悪い事実は見ないようにした。 今からでもいいから、チベット問題をとりあげてください、心からお願いします。
 
  △年末におきた変調

 とこのように、中国とロシアのゴリおし振りが際立つここ数年であるが、この年末にきて少し情勢が変わりつつある。シェールガスなどにより原油がだぶついて、原油価格がさがったため、12月16日、資源輸出国のロシア通貨が二割暴落。最安値を記録。

 また、フランシスコ教皇が仲介して、12月18日、アメリカ、キューバが国交回復。これはロシアにとって寝耳に水であった。ヨハネ・パウロ二世が1991年のソ連の崩壊に力があったことは有名だが、フランシスコ教皇は先々代のようなイニシアチブを発揮するのか? 中国との実質的な対話を行えるのか? などなど来年どうなるのか世界情勢は予断を許さない。

 ちなみに、中国の経済成長は鈍化を続けており、ナショナリズムを利用して国内をまとめる手法も頭のいい人たちからそろそろ見抜かれはじめている。中国もロシアも25年前とは違う。「未来を考えて体を張った」香港や台湾の若い中国人たちは従来の中国人のイメージ「自分の利益につながることにしか興味ない」を打ち破った。

 来年は、どんなことが起きるのだろう。私は歴史家なので未来は予言しないが、いろいろな未来を思い描いている。願わくば、圧政や紛争で苦しむ人が一人でも少なくなる明日がきてほしい。

 最期に、日本のチベット関連のニュースを日付順に

 4月 ギュメ元管長ガワン先生の生まれ変わりテンジン・ロプサンが正式に即位
 4月 高野山でダライラマ法王胎蔵界灌頂
 5月 ゴマン・ハウス、オープン
 6月 法王代表事務所の代表がラクパさんからルントクさんへ
 10月 ゴマン学堂のゲン・ロサン先生がギュメ大僧院の副館長(ラマ・ウムゼ)に就任。いずれ管長になることが確定。

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COMMENT

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n.s | URL | 2015/01/02(金) 12:33 [EDIT]
あけましておめでとうございます。
オタク話しから推測するに頭が忙しく働いているのでしょうかと、法界讃22番目を考えました。
昨年はマットレスが下まで汗でビッショリになり、はじめて万年床を体験してしがない学者になった気分になり、思い切って新しいマットレスを購入しました。
先生もお身体に気をつけてお仕事頑張ってください。

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