白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2015/03/03(火)   CATEGORY: 未分類
『チベット伝統医学の薬材研究』ついに完成!
ついに『チベット伝統医学の薬材研究』がでた。
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 赤い外箱から本書をだすと、表紙は青色、すなわち薬師如来のシンボルカラーである。表紙裏のそでの写真はプロの写真家がとったかのような美しいチベットの風景写真。いやー、私がとったとはとても思えない。

 写本の印刷は美術出版でならした藝華書院なので申し分ない。訳註は別冊になっているので本体と参照しやすい。お値段は一冊15000円とちょっと高いが、この出版社さんが前にだした本は一冊12万円なのでそれと比べりゃ安い(笑)。
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 本書の内容を簡単に述べよう。
 チベット医学は、インド(ラダック、ザンスカール、ヒマーチャルプラデーシュ州のヒマラヤ地域、シッキム)、モンゴル、中国(西蔵自治区、青海省、四川省、甘粛省、雲南省内の蔵族自治州・自治県)、ロシアのブリヤート共和国・カルムキア共和国・トバ自治県、ブータンなどのチベット文化の影響を受けた人々の住む地域において、現在も臨床で用いられ、かつ研究されている伝統医学であり、一部のチベット薬は世界市場に進出して一定の評価を得ている。

 チベット医学はインドのアーユルヴェーダ医学や中国の伝統医学の影響を強く受けている。とは言え、その根本に仏教思想を据えていること、チベット高原の豊かな動・植物相は他の医学にない豊富な薬材をチベット医学に提供していることなどから、それら近隣の伝統医学と一線を画していることは明らかである。それにもかかわらず、現在チベットという国が存在しないことから、チベット医学は中国国内においては中国医学の一部として扱われ、また、インドにおいてはアーユルヴェーダの影響を過大視しつつ説かれる傾向がある。そこで本書ではチベット医学のオリジナル性がはっきりとでている薬材に焦点をあて、その味や効能の解釈もチベット医学の古典的な注釈書に基づいて行う事に留意した。

 本書の著者たちは90年代から細々と続いている「チベット医学研究会」という小さなサークルのメンバーである。このサークルでの購読したテクストの歴史と言えば、アーユルヴェーダの古典『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』のサンスクリット・チベット語対照テクスト、ジェ・ミパムの水銀薬の製造法のテクスト「宝のごとき水銀を調合する物語」(成果は『史滴』35、2013年、81-199頁に発表)、ついでダライラマ五世の摂政サンゲギャムツォの著した医学史(sde srid sangs rgyas rgya mtsho. gso rig sman gyi khog 'bugs. 甘粛民族出版社、1982年)、そして『四部医典』の薬材の章(第2部第19章-21章)などである。

 この最後のテクストの成果が本書第1章と2章に反映している。
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 次に、第3章においては、東本願寺の僧、寺本婉雅が1898年に北京のチベット僧院雍和宮において入手したチベット医学の本草図譜の訳註を行った。寺本婉雅は20世紀初頭の日本の大陸政策に仏教界から深く関わった人物である。

 第4章 第2節の「チベットの薬材名と属名の対応表」は『四部医典』第19から第21章に現れる薬材の名の下で、従来どのような動植物が用いられてきたのかを総覧したデータ集であり、これを作るのに血の涙を流したことは作夏のエントリーにも書いた

 学名対照表の作成にあたっては、まず14冊の先行研究を著者四人で分担し、そこに記された学名をExcelの表に入力したこの時点でいろいろな事情から四等分できず西脇さんに一番の負担がかかった)。そのExcelの基礎データからデータベースを構築し、オンラインで参照・編集のできるWebアプリケーションを福田が作成した。このアプリケーションによって、アクセス権のある各人が遠隔地からでも同一のデータベースにアクセスし、追加・修正が可能となった。本書第4章の対応表は、2014年8月時点のデータベースから、薬材名の和訳名、チベット語、出現箇所、『番漢藥名』の漢語、属名情報のみを抽出して整理したものである。詳細な情報についてはオンラインのデータベースを参照していただきたい。

 本データベース作成にあたっては昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学教室の鳥居塚和生教授に平成23年度の科研で分担金を配分してくださったが、鳥居塚先生は2014年5月24日に永眠された。本書の完成をご報告できなかったことがとても悲しい。

 チベット医学は中国医学・インド医学にも比肩する豊かな伝統をもつものであり、本書が扱ったのは、そのほんの一端にすぎず、それですら理解の至らない点が多いかと思われる。願わくば後に続く方たちがより広く深くチベット医学を究明していって頂きたい。私はもう疲れたので、お若い方たちに頑張ってもらいたいです。

本書の購入を希望される方は出版元の藝下書院さんへ電話かFaxでお申し込みください。
電話番号は 03-5842-3815
FAXは    03-5842-3816 です。
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COMMENT

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● おめでとうございます!
Dechen | URL | 2015/03/05(木) 15:14 [EDIT]
チベット医学のご本の出版おめでとうございます!四部医典のタンカが大好きで毎日眺めていました。日本語で学べるなんてすばらしいです!先ほどFAXで注文させていただきました。
● >Dechenさん
ブログ主です | URL | 2015/03/07(土) 01:10 [EDIT]
ありがとうございます。『四部医典』の全訳でなくて薬材に関する部分だけなので申し訳ないです。全訳は漢語とロシア語とモンゴル語でしか今のところでていないのですよね。英語訳は現在進行形でダラムサラで発刊しています。

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