白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2016/12/21(水)   CATEGORY: 未分類
2016年のチベット三大ニュース
 来年もチベットをあなたのお側に。そうです2017年のチベット・カレンダーのサムネイルならびに購入サイトはこちらです。このたびは写真家の野田雅也さん、ルンタ・プロジェクトの中原一博さん撮影の写真、並びに、フォトコンテストの応募作品により、構成されています。もちろん、チベットの祝祭日もはいってます。 

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 来年は「チベット大僧院のトイレ・シリーズ」というテーマ・カレンダーを作ってはどうかと一部で盛り上がっているが、「トイレ」はともかく、チベット高原の花鳥風月(特に、鳥、鳥、鳥!)」「チベットのシャーマン」みたいなおとなしい統一テーマであったら意外といけるかもしれまん。

 今年はヨーロッパのイスラムテロで幕を開けたかと思うと、あれよあれよという間に、理想を語る言葉が他者をののしる言葉にとってかわられ、人々が融和から排除へと向いはじめた。イギリスはEU離脱を決議し、アメリカに移民排斥を唱えるアレな大統領が誕生し、ロシアと欧米はシリアで代理戦争を行い結果アサドが勝ち、世界中でガハハな指導者が「他人のことなんてどうだっていい、自分の利益だけ考えるぜ」「死ね」とか醜いホンネを主張したのであった。みなが自分のことだけ考えれば、万人の万人に対する闘争がはじまり、結果、全体としては破滅に向かう。もう人類全体が滅びの道を自主的に選択しはじめたかのようである。間違いなく歴史に残る一年であった。

 しかし、オーストリアの大統領選だけはかろうじて踏みとどまった。これはおそらくはオーストリアが敗戦国であることと無縁ではあるまい。先の大戦で、敗戦国は国土を焼かれ、70年間戦争責任についてののしられ続けてきた。戦のむなしさを骨身にしみてわかっている敗戦国は、軽々にパワーゲームにのめり込まない。

 また、任期最終年のオバマ大統領も駆け込みレガシー作りでアメリカが戦場とした国、対立していた国々をまわり和解を演出した。ベトナム戦の跡地をまわり、原爆投下地点で献花し、キューバと国交を回復し、安倍総理大臣をパール・ハーバーへ招いた。そして、ダライ・ラマである。これまでオバマ大統領は中国に対する配慮から、ダライ・ラマと会見してもそのツーショット写真をメディアに公開しなかったが、本年6月15日に行われた4回目のダライ・ラマとの会見はその禁を破り、ツーショット写真を披露した。
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 ちなみに、12日後の6月27日にはレディー・ガガがダライラマ14世のツーショットをインスタグラムに投稿すると、中国のネット民はガガに「中国人はあなたがビン・ラディンと握手しているように見える」と罵詈雑言をとばした。あの温厚な平和主義者のダライ・ラマをテロリストと国民に教えこまなければもたないのだから、中国も哀れな国である。そういえば、アパルトヘイトまっさかりの南アフリカでは、無学な白人たちは、非暴力路線で人種の平等を訴えていたANCをテロリストと呼ばわっていた。

 そして、長年軍事政権に軟禁されていたアウンサン・スーチー氏は、今年したたかにミャンマーの政治の中枢にくいこむことに成功した。これによって、非暴力をもって戦う人々は、ダライ・ラマをのぞきすべて政敵を倒すことに成功したことになる。複雑である・・・。

 今年の訃報としては4月29日にサキャ派のトップであるダクチェン・リンポチェ=ガワン・クンガー・ソナムがシアトルにおいて88才でなくなった(ソースはここ)

 また、5月7日には日本に何度も来日されていたゲン・ロサン先生が肝炎によって逝去された。ゲン・ロサンはインドのチベット文化圏ラダックに生まれ、ダライ・ラマの摂政をだす四転生僧のうちの一つクンデリン・リンポチェの師をつとめ、かつ、次期ギュメ管長である副管長に就任中であった(詳しくはここ)。

●以下、チベット社会全体にかかわる三大ニュースを選んでみた。

(1) ラチェン・ガロの弾圧が再開する

アムド(東チベット)のニンマ派の僧院、ラチェンガロ(Larung Gar) は、チベット人ばかりか漢人の修行者を集めて巨大化した結果、江沢民政権の終了時に迫害にあい、大きな海外ニュースとなった。その後、胡錦涛政権においては宗教のもつ道徳的な側面を社会秩序の維持に利用しため、ラチェンガロも再び巨大化が加速していたが(『東チベットの宗教空間』参照)、本年7月21日、定員までに僧の人数を減らすとの名目で、中国当局は再びラチェンガロの僧坊破壊に着手している(ニュースはここ http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=37843
)。
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 BBC などの欧米のマスコミはこれを宗教弾圧として奉じてきたが、日本の某テレビの人は欧米の逆張りをしなければならないと思ったのか、「お坊さん達が特段の抵抗をしていないのは、僧坊が壊されて更地になれば、地上げができて坊さんが儲かるからではないか。」「北京の高級ホテルはチベット僧の衣をまとった偽坊主でいっぱいだ。あなたはこれについてどう思いますか」と私に聞いてきた。

 私はこう答えた。「お坊さんが抵抗しないといいますが、デモの自由のある日本じゃないんですから簡単に言わないでください。ダライ・ラマはチベット人に『中国人がダライ・ラマを批判しろ、と命令してきたら、その通りにしなさい。彼らに逆らって投獄されたり、僧侶をやめさせられたりするよりはいいです。私は全然気にしませんから、中国人の言う通りにして身を保ちなさい」と常々いっています。

 偽坊主については、そもそも人々が信服するような徳のあるお坊さん、その多くはインドの僧院で育った人々ですが、彼らは入国禁止です。それに当局は僧院の教育課程や修行を妨害し徳のあるお坊さんが育つのを阻止する一方、偽坊主は大勢に影響がないので放置しているんですよ。チベット仏教の評判が下がっても当局にとっては痛くもかゆくないですから。

 それに、偽坊主にチベット人が含まれていたとしても、漢人に支配され二級市民の扱いを受けているチベット人が文化を捨てずに生きていく道がすくない以上、坊さんのコスプレをその一つとして選んだとしても、安全圏にいる我々が、それを非難する権利があるでしょうか。正確にチベット仏教を報道したいのであれば、中国支配下のチベットの偽坊主ではなく、南インドに再建されたゲルク派の僧侶をみてからにしてください
」。

といいつつ気づいたのは、この記者は、長い中国駐在の間に、漢人知識人視点に同化してチベット人をみていたこと(仏教に向かう漢人は彼らから見るとちょっとおかしい人なのかもしれない)。この漢人知識人の視点はかつての日本の知識人の視線とも似ている。彼らはチベット仏教を自分たちの先入観でみており、その哲学の真髄については無知であり、無知であることすら自覚がない。

(2) 11月、ダライラマ14世はモンゴルのジェブツンダンパ9世の生まれ変わり、すなわちジェブツンダンパ10世を認定。

 その歴史的意義については直前のエントリーで解説しました。

(3) メンツィーカン(医学暦学堂)が創立100周年(3月23日)
 チベット医学はチベット高原の多様な動植物を薬材とインドのアーユル・ヴェーダ医学の理論を特色とする非常にユニークなものであり、メンツィーカンでは薬の製造、医療行為とならんで、暦の出版も行っている。ラサにはすでにダライ・ラマ5世やその摂政サンゲギャムツォによってチャクポリ山の上に医学堂があったが、なぜ、1916年にメンツィーカンが創設されるにいたった背景については、日本で最初のチベット医小川康さんがここで考察している。

●個人的な三大ニュース

(1) 9月『ダライ・ラマと転生』(扶桑社新書)の出版。
(2) 11月清風学園でダライ・ラマ14世が導師となったチッタマニ尊の灌頂を受けたこと。
(3) 全体ニュースとかぶるが、ジェブツンダンパ10世がダライラマ14世によって認定されたこと。
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n. | URL | 2017/01/02(月) 15:00 [EDIT]
三大ニュースを読みながら、いったい何故石濱さまはホテル代出してるのかなと、私の十大ニュースになりました。
交通費は自腹でも、私はソウカガッカイの方に中国に招待された時は、みんな無料で接待されたし、中国旧家の方も全部出して
くれて次の仕事は給与と別に三千万のマンションが貰えるとか、椅子が一脚百万の調度品の部屋での商談とか、西洋銀座イタリアン貸し切りとかだったけど、なんだか違うのかな。お腹の虫達けちなのかな。ホテルは株主割引とか飛行機チケットとかなかったのかな。
祖母は誰にでもおこづかいを同じ額、私の友達にもあげたし、母は私が我慢しなさいと他人の子に多くあげた神道だったから、仏教徒は違うのかな。ならば、私は同じにしないと皆と違うんだな。私の考え方がけちだったかな。
階層が分けられる時代がきたのかな。
日本にも神童を育てるシステムがあればいいですね。一億総平民は終わった、、、私はもう嫌だなと自分の不幸をしり、真宗の人と結婚するかなとそれはラマのみぞ知る、タシルンポ寺施主になった!が三大ニュースでした。
今年もよろしくお願いします。

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