白雪姫と七人の小坊主達
なまあたたかいフリチベ日記
DATE: 2006/08/14(月)   CATEGORY: 未分類
英作文に苦しむ一東洋学者のうめき
 刻々とせまる国際学会、いい加減発表原稿かかないとまずい。

 しかし、な~んかやる気がでない。こういう時には逃避に走ろうと、研究者仲間に電話をする。

 いろいろ話しているうちに「この電話逃避でしょ。いい加減英文書き出さないとネイティブ・チェックに間に合わないよ」と本質をついた発言をされる。

 ネイティブ・チェック、そんなもの現地についてから誰か知り合いみつけて、頼もうと思っていたわい(えーかげん)。

ああ、英語ヤダ。

 チベットは東洋なんだから、東洋史研究のレベルが世界的にも高い日本に敬意を表して、学会の発表言語には、当然日本語をいれるべきだと私は思う。

 でももしそれが許可されても、ほとんどの外人研究者が日本語を理解できないので、意味ないだろうな。そういえば、驚いたことに、アメリカとかヨーロッパでは、日本語のみならず漢語ができなくてもチベット近代史で大学で教鞭をとっているような人もいる。

 インド・ヨーロッパ言語を操る人々が、漢字やひらがなを習得するのにはものすごい努力が必要らしいからあまり、きついことはいえないが、言語獲得数の低さが、彼らの研究レベルに限界をもたらしていることは言うまでもない。

 私は仏教用語をちりばめた歴史文献を読むだけだったら、チベット語、漢語、モンゴル語、漢語、満洲語が一応できる(といっても現代語の会話や他ジャンルの文書はぜんぜんわからん)。

 清朝の最盛期の皇帝、乾隆帝もこれを全部できたので、これらの言語が全部できてはじめて清朝とチベット仏教の研究に着手するスタートラインにたてるのである。この一部の言語しかできないと、その一部の世界観にひきずられて大局的な研究ができないため、やはり全部できることがのぞましい。

 で、西欧人がチベット語、漢語、モンゴル語、漢語、満洲語を全部習得できるかといえば、無理にきまっている。彼らにとって、シナ・チベット語族(チベット語・漢語)、ウラル・アルタイ語族(モンゴル語・満洲語)は彼らのしゃべる言語とはまったく別の言語集団に属するため、その習得は困難を極めるからである。

 その点日本人はラク。小学校から漢字を覚えるから中国語おぼえるの比較的らくだし、満洲語やモンゴル語やチベット語の語順ほ日本語とほぼいっしょだし。
 だから、いい辞書とちょっとした根気があれば以上の言語は日本人なら誰でも気軽にマスターできるのである。

 というわけで、日本の東洋史研究のレベルは自ずと高くなるのである(おおいばり)。

 なので、そもそも、日本の研究者の書くものは、世界中の東洋史の研究者が読まねばならないのである。

 とはいっても、西欧人は漢語の習得ですらアップアップなので、ひらがな・カタカナ・漢字の乱舞する日本語を学ぶ余力などない。

 結果として、日本人の研究者は自分の研究を人にしってもらうために、自分で英訳して、のこのこ外国まででかけて宣伝にいかねばならないのである。

 本末転倒。

 もう一つ気が重いのは、時差。

 一時間以上時差のあるところにいくと体調がどっと悪化する体質を持つ者としては行くだけでもだるい。

 国際学会はヨーロッパかアメリカで開かれる。アメリカ人がヨーロッパにいったり、ヨーロッパの人間がヨーロッパ内で移動するのは国内感覚だろうが、こっちは中国大陸をこえ、中央アジアをこえ、紛争地帯の中東をこえてやっとヨーロッパにつくのである。飛行時間は十時間を超えるのである。もう行くだけでへろへろである。

 ここまできて、こんなことグチっている暇があったら、はやく発表原稿にとりかかれ、ともう一人の自分がツッコミをいれる。

 ので冒頭に戻る。
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COMMENT

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● 天罰を食らったオタクの一人です。
モモ@柏原 | URL | 2006/08/15(火) 08:43 [EDIT]
英吾といえば最終日に、宣伝用の縦1メートル、
横1メートル半ほどの胸の大きな女の子の
巨大なポスターを用意したのですが、さるアジア系の男性が、
英語で新刊の情報と、そのポスターを買いたいという
意味合いのことを言い出したので、全員
「英語はなせるやつ誰かいないか!」と騒然となり、
結局ボディランゲージ含めて私が
サインをして欲しい旨伝えたり、
ポスターはプレゼントするとか冷や汗かきながら対応しました。
喋れるんだけど聞き取れないんですよ。
だから曖昧に笑ってごまかしました。
それが通じるのがアジア圏の特徴ですよね。
● うーん
イシハマ | URL | 2006/08/15(火) 08:45 [EDIT]
フランスからもオタクが来ているとのことでしたが、アジアからもオタクが・・・・。
そいえばこの前清明神社いったら、
台湾人の学生の集団が五人くらいできていた。
きっと台湾の人だな。
モモさん、ソバボーロありがとう。

社会人学生 | URL | 2006/08/15(火) 11:34 [EDIT]
先生、こんにちは。毎日暑いですね。
私は今年から社会人学生にして、大学で主に清朝と仏教に関して学ぼうとしています。
そこで、質問がいくつかあるのですが宜しいですか??
まず、日本の東洋史研究者はおしなべて漢語はもちろんですが満州語、モンゴル語、チベット語、これらの言語を全てマスターしているのでしょうか?これらの言語は当然、話し言葉とは違うわけですよね?先生はどのようにこれらの言語を学ばれたのですか?独学でも学習可能でしょうか?
また、東洋史の研究というのは日本が一番進んでいるのでしょうか?チベット仏教の普及および認知度は西洋のほうが圧倒的に高いですよね。
東洋史の国際学会が東洋の国で開催される事はないのでしょうか??
以上、まとまりがない文章ですみません。お暇があればよろしくお願いします。
(私自身、お盆休みで人のいないヒマな会社で書いています)
● 東洋が含む地域の多様性・広大さをよく考えて
イシハマ | URL | 2006/08/15(火) 13:44 [EDIT]
わたしはチベット史の、しかも清朝史だからこのような語学のラインナップになるのであり、
トルコ史、ウズベキスタン史、ミャンマー史などとジャンルが違えば習得すべき語学の内容は変わります。
そして、日本が東洋史すすんでいるか、との質問ですが、地域によって、あるいはジャンルによっては研究者が全然いない場合もあり、そうなると進むも後れるもありません。
もっと地域・ジャンルをかぎって質問されないと答えることはそもそもできないのです。
さらに地域・ジャンルをしぼって質問されても、自分の研究から遠い部分に関しては、わたしも素人なのでよくわかりません。
なので、興味を持たれた方がご自分で調べる方がてってり早いと思いますよ。
● で17世紀以後のチベット史に限るなら
イシハマ | URL | 2006/08/15(火) 13:58 [EDIT]
語学習得は、辞書を買いそろえて、基本的な文法は独学したあとは、
同じ地域を学ぶひとたちが構成する大学横断の読書会とかで身につけていきます。
ただ、私はチベット語の読書会とか申し訳ないのですが、やっておりませんので、清朝チベット関係文書の読み方をみにつけるのは結構大変かも。
あと、国際学会はもちろんたまーに、日本で行われることもありますが、やはり圧倒的に西欧の方で行われますね。
あと、チベット仏教の思想内容については西欧でも盛んに研究されてます。これは、チベット語のみでできますからね。
ただ、仏教学の伝統は日本にも長い歴史があるので、日本にはチベット仏教のいい研究は多いです。

社会人学生 | URL | 2006/08/16(水) 11:45 [EDIT]
先生、お忙しい中、ありがとうございます。
私の質問が曖昧ですみませんでした。自分の興味が主に清朝と仏教、対外政策にあるので先生がおっしゃる語学は必須ですね。ただ、今からそれらを学ぶ根気と体力が残っているかは難しいところですが。チベット語の学習も学べる所は非常に少ないようですし学術書を読めるレベルに到着できるにはそれ相当の努力が必要ですよね。
先はとてもとても長そうですが地道に努力していきたいと思います。また機会が在りましたら色々ご指導ご鞭撻下さい。


名前はありません | URL | 2006/08/18(金) 01:43 [EDIT]
皆さん、こんにちは。
社会人学生さんは、清朝と仏教、対外政策に関心があるそうて゛すが、平野聡さんの「清帝国とチベット問題」は読まれましたか?
また、石濱さんにも伺いたいのですが、先生はこの本をあまり評価しないときいてますが本当ですか?
● 書評を書いているので見てみてください
イシハマ | URL | 2006/08/18(金) 17:36 [EDIT]
>名無しのかた

東洋史関連の雑誌で書評を書いてますので
「石濱裕美子のお仕事」でネット検索すると私のつくった業績表がありますので、それを参考にしてください。

最近つくづく思うのが、史料をきちんとよんで実証していく歴史や哲学などの伝統的な学問に人がこなくなり、
てっとりばやく習得できる、現場の学問、実学にひきつけられる人が多いですね。

時間をかけて何かを実証的につみあげていく努力を怠れば、実学も空虚になるのではないでしょうか。

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